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2007年9月 2日 (日)

「お客さまは 神様で」はない

今、介護の現場が荒れているようだ。金さえ払っていれば神様気分になれるのがいいらしい。給食費に保育費など(合わせて112億円になるが)払わなくても傍若無人な保護者のいる世の中だ、あちこちに似たような話が転がっていても可笑しくないのかも知れない。

ところが話は老齢や行動が不自由なため他人(ひと)さまに介護の世話を受けている連中の“神様ぶり”に老人ホームやホームヘルパーの人たち介護の現場が手を焼いているということだ。暴言やセクハラなどの内容のようだが、同情を寄せられる好意の行為を踏みにじるような行いが横行しているようだ。(厚生労働省所管の財団法人「介護労働安定センター」2007年7月)

それでなくても高齢化の進展に伴い、成長が期待されていた介護ビジネスが苦しい岐路に立たされている。介護報酬の引き下げで企業の業績が悪化し、昨年から東京都内を中心に会社を買ってくれないか、という企業売却の話が持ち込まれるケースが目立っているという。コムスンの不正発覚は介護業界への信頼を大きく傷つけたが、コムスン以外でも介護報酬の不正受給は後を立たない様相だ。「06年4月の制度改正に伴う介護報酬の引き下げで、特に訪問会議はビジネスとしては全く成り立たない状況だ」と指摘している。(野村証券金融経済研究所・繁村京一郎)

介護の現場では給与の低水準、長時間労働、福利・厚生が不十分などの指摘があるが、事業所側では「今の介護報酬では十分な賃金が払えない」など悲痛な訴えが上がっている。離職するものも多く、年間で5人に1人、その4割以上が就業から1年未満であったことが介護労働安定センターの実態調査で分かった。1事業所当たりの平均従業員数は30・5人(全国比32%の1万1627事業所)、正社員と非正社員がほぼ半々。中でも非正社員のホームヘルパーは無給の拘束時間が多いとされるが、調査では、待機、書類作成時間にも賃金を支払っていない事業所がそれぞれ3〜4割あった。このような厳しい業務中に、怪我をしたり事故にあったことがある者も全体の12%にも上ることも分かった。

神様気分の利用者から、暴言・暴力・セクハラを受けた人も30%に上っているが、相談できる窓口があるのは63%に止どまっていることも分かった。女性ヘルパーにヌード写真を見せつけたり、胸やお尻を触ったりがあり、下着の色を聞いてきたり、胸が大きいな、やブスなど何でもありのようだ。中には「何もしないからベッドに横になって寝てもらえないか」などと迫られたヘルパーもいたと言う。「介護の現場は密室になることが多く、例えば男女2人きりなら高齢者でも変な気分になることもあります。また、病気などで抑圧されている利用者が、優しくしてくれる職員やヘルパーに対し、ストレスを発散させている面があるようです」とは「日本クラフトユニオン」会長の河原四良氏の弁だ。

セクハラばかりではない、暴言や暴力を働くこともあるが、高齢者の場合、かなりの比率で認知症にかかっていることもあって問題を難しくしている。しかし、同センターの2006年9〜10月の実態調査でも、介護サービス利用者のモラル低下は浮き彫りになっている。それによると、過去1年間の仕事中のセクハラ・暴力などの経験があると答えた介護労働者は45・8%のも上っていた(利用者・家族の誤解。無理解20・1%、暴言16・1%、誹謗・中傷11・5%、セクハラ7・3%、暴力6・5%)。他には盗難の嫌疑をかけられるケースも2・9%の介護労働者が挙げている。

その上でのことだが、「ヘルパーはお手伝いさん」という意識が利用者にあるようだ。そのために地位が低く見られ、気に入らないとお襁褓を投げられたりすることもあるという。昨年のブログでヘルパーというカタカナのことを書いた。《カタカナを改めよ》主に65歳以上の人たちにとってややこしいカタカナは理解しにくい。事実英語のヘルパー(helper)には「お手伝いさん」という意味がある。間違ってはいないのだ。こんな紛らわしい名を付けること自体間違っている。何を血迷ったか極めて親しまれていた看護婦さんの名称を変えてみたり、スチュワーデスをホテルの客室担当のような名にしてみたり、言ったり書いたりした後で、或いはその前に男か女かの字を添える。考えることが可笑しい。このことに関しては地位が低く見られても利用者ばかりを責めるのは間違っているように思う。

だがしかし、金さえ払っていれば何をしても許されるものでもない。権利だけを主張するのではなく、客には客の分限がある。その分限を弁え、己を律することで客たりうるのだ。決してお客様は神様ではないのだから。

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