東京のタクシー値上げ再燃
6月1日のブログで東京(23区など)のタクシー値上げが先送りになったことを取り上げた。
国土交通省が21日、名古屋地区のタクシー運賃の平均約9%の10月値上げ認可を発表したことで、今年に入って値上げが認可される地区は8地区*となる。今回の値上げ申請で、名古屋の認可は大都市では初めてとなる。地方の先行値上げを受けて、参院選前から棚上げとなっている東京都(23区・武蔵野市・三鷹市)の認可が焦点となってきた。値上げを渋る官邸・内閣府の壁を崩せなかった国交省は、首相交代を機に、10月中旬にも他地区並みの8%程度の値上げ認可を探ることになる。ただ、内閣府は5%程度を主張している模様で、首相交代後に協議が本格化する。
*長野県2地区、大分県(4月)、長崎県(離島除く)(9月)、秋田県2地区、沖縄県(9月)、名古屋地区(10月)
タクシー運賃の値上げは、運転手の待遇改善が目的だ。値上げ認可は3種類あり、国交省だけの判断で可能な地方都市、国交省と内閣府の協議が必要な大都市のほか、物価動向に影響の大きい東京都心は、内閣府の物価安定政策会議と物価に関する関係閣僚会議の了承が必要となる。
東京都の先送りの経過については6月のブログで詳しく書いた。4月の物価安定会議で大田弘子・経済財政担当相らは「デフレ**経済が続いているのに値上げを認めるのはおかしい」と反対した。同じく5月の会議でも、反対意見は強く、参院選後に先送りされたものだ。
**デフレ(デフレーション)バブル崩壊後の日本のように、物の値段が下がり続けること。
当時の塩崎官房長官が値上げを受け入れなかったとされているが、8月の内閣改造で同長官の退任後も内閣府は、デフレ下の値上げには批判的だ。水面下で、8%程度の値上げを探る国交省と、5%前後としたい内閣府の溝は埋まっていないようだ。
ただ、国交省はこの1カ月だけで、4地区の値上げを認可している。それらいずれの地区も国交省の判断だけで値上げ可能な地方都市で、経営環境の悪化や、都市と違い電話でタクシーを呼ぶため利用者に選択肢があるとの理由だった。これら4地区はいずれも東京都の後に認可申請したとことで、東京都に向けた地ならしとも考えられる。が、国交省の思惑が実現するかどうかは、なお不透明だ。
対照的に、昨年11月に値上げを申請しながら、今年9月になって業者の大半が申請を撤回し、値下げ申請に変更した金沢地区のようなところもある。金沢市では01年から05年にかけ、タクシー台数が約30%も増加した。全国平均の6・5%増をはるかに上回る激しい競争が値上げを許さない状況を生んでいる。他には激戦区の大阪市でも2年前に値上げの動きがあったが、業者内で反対も強く、申請にいたらなかった。このように運転手の待遇改善の前に、市場の競争が混迷を深めているようだ。
利用するために電話でタクシーを呼ぶ選択肢があるから値上げ申請を認める、などとはお笑いぐさだ。電話でなくても乗り場まで行って行列をつくる。道行くタクシーを手を上げて呼止めて利用する。電車でもない、バスでもない、地下鉄でもない。タクシーを利用するという選択肢に違いはあるのか。最も大きな違いは他の交通機関と違ってタクシーは公共の乗り物ではないことだ。初乗り1000円だろうが、1500円だろうが、利用可能なものが利用すればよい。タクシー台数を増やすことは事業主自身が、競争原理の中で、自分の首を絞める結果になることは理の当然でもあろう。現時点、運転手の労働条件改善のための値上げは必要なことと考えるが、何時でも値上げだけが打つ手の経営のやり方では、遠からず行き詰まることを覚悟して置かねばならないだろう。
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