男の魅力 昔と今
石田衣良の白黒つけます!『昔の男と今の男 どっちが魅力的?』から
設問内容で「今昔」を比べる時、何時も違和感があるのは昔を語るのに10代以下の世代が含まれるのに似つかわしくないテーマが取り上げられた時だ。今回もその一つ。10代以下の女にとって、昔の比較対象は恐らく幼稚園か小学生時代の異性のことになる。そうでなければ、他人の価値観や人生観で造り上げられた小説や、漫画、映画で見聞きする昔の話の中の男を思い浮かべるのが精一杯の所ではないだろうか。
とはいっても、その後の20代から上の世代でも、大なり小なり昔のことは第三者の価値観が多分に混じることは避けられないだろう。そうでなければ今回の回答にあるような昔の恋人やつき合っていた異性と、或いは昔と今の知人の比較になるだろうことが理解できる。そして、それが自然な比較というものだろう。それこそ歴史上の人物や、自分が産まれていない時代の異性のことは、第三者の目を通した文献や、本人のオブラートに包まれた人生論でしかその人物像は分らない。それでは本質的な比較にはなり得ない。はたまた比較を行なう人間が、学者もどきであらゆる面から比較する対象の人物を、徹底的に調べ上げるしかないだろう。そしてまた、当の本人も、いくつもの色眼鏡を掛けていることも考慮しなければならないだろう。
先ず、石田衣良の意見を聞いてみよう。(《》内は私見)
「ぼくの意図では、過去と現代の男性の魅力だったのですが、多くの女性はぜんぜん別の角度から考えていたのだ。現在進行形のパートナーと過去の人の(不毛な)競争である。なるほど、そういうパーソナルな選択というのもありふぁったな」《上に書いたように、他人の知識をベースに比較するよりも遥かに素直で真っ当な受け止め方だと思うのだが、石田には意外だったらしい。しかし、このような見方は女性だけで、男性はゼロであった、と書いている。》
それでは「昔の男の方が魅力的」の意見から。
「洋の東西を問わず昔の白黒映画に出て来る男優の魅力的でカッコいいこと! ゲーリー・クーパー、三船敏郎などなど。今の映画界に魅力あふれる男優はいるでしょうか? 親父の若い頃の写真も信じられないくらいカッコいいです」(大津市・たる)。「昔の男がどういうものかわからないけど、今の男が弱過ぎる。女のわたしより女々しいってどういうこと?」(大阪市都島区・モン)《これを回答した女性は18歳という。若い女性は現在の弱々しいオカマ風の男の方が好みかと思っていたが、このような真っ当で元気なお嬢さんもいることを知った。》
いつものように世代別に意見を聞いてみよう。
<有効票数>2422(男991、女1431)
昔 今
全 体 65・3% 34・7%
男 78・7% 21・3%
女 56・0% 44・0%
10代以下 男 54・2% 45・8%
10代以下 女 55・0% 45・0%
20代 男 68・3% 31・7%
20代 女 52・4% 47・6%
30代 男 79・4% 20・6%
30代 女 56・6% 43・4%
40代 男 82・1% 17・9%
40代 女 83・9% 46・1%
50代 男 85・8% 14・2%
50代 女 66・4% 33・6%
60代 男 82・4% 17・6%
60代 女 66・7% 33・3%
70代以上 男 100% 0%
70代以上 女 33・3% 66・7%
《男性の世代が上がるにつれてどんどん昔の男派が増えるのは、よく理解できる。18歳の女性も回答しているように、今の若い男性の女々しい外見には馴染めないのだ。女性には優しいと映る面でもあるのだろうが、世代が上がるにつれて今風の男性の女性化は、生理的に我慢ならないものだ。つい先日のことだが、庭木を求めて出かけたが、そこで女性店員(間違いない女性)に名前の分らない写真の花の名称が知りたくて、担当を訊ねた。あの人に聞いて、と言われて指さして教えてもらった。「どうもありがとう、あの女性ですね」と答えて嗜められた。「男の人ですよ」と。どう見ても女性だ、身に纏っているもの、花を手入れしている物腰。「あ、男の・・」の寸劇もどきだった。女性相手のホステスは言うに及ばず、美容院など、なよなよとした男の品評会ができそうだ。
《街行く男たちの髪型の女性的なこと、後ろから眺めると男も女も見分けがつかない浮浪児の不潔なザンバラ髪だ。年輩の男性が昔を懐かしむのは(そう、昔の男を魅力的とするのは、女の子のように眉を剃り、髪を女性風に真似、香水を振り掛けるようなことをしない)、優しいだけの今の男には、昔の男にはあった野性が失われて見出せないからだ。》
では「今の男の方が魅力的」を。
「昔の男がいいと思うのは、思い出がいいのでは?意地でも今の男がいいと思いたい。今の男が2番手なんて、自分がみじめじゃないですか」(愛知県阿久比町・鈴虫)、「今の男に1票。当然、恋は上書きです」(奈良県河合町・てんとうむし)、「今の男の方が魅力的です。男の呪縛から自由だから。昔の男が魅力的に映るとしたら、制約の中で生きる姿が決断力や実行力があるように見えるからかもしれません。しかし、それはそう生きるしか選択肢がなかったともいえるのです」(千葉県八千代市・久史)、「女性の情熱、自主性、才能などを評価し、尊敬してくれる男性には年齢を問わず魅力を感じます。日本は室町時代まで女性の財産権が認められ、奈良、平安の男たちはぬけぬけとスイートな恋歌をいくつも残し、恋愛と女性の権利に関しては先進国だったのに、江戸、明治の根拠のない家父長への集権が日本の男をつまらなくしたのではないでしょうか」(京都府長岡京市・紅茶猫)。《なんだかテレビに出まくっていた頃の舛添氏の天敵、田島(女史)の顔が思い浮かぶ。室町から奈良、平安、そして明治からおそらく敗戦までがこの人の「昔」に含まれるのだろうが、焦点のない勝手な屁理屈になっている。己の知識を披瀝して見せびらかすだけのことに終始したまで。》
石田衣良の総論だ。「今回のアンケートは実は男性を中心に圧倒的に昔の男の方が魅力的という回答が寄せられました。メールでは反対だったけど。でも、ぼくはやっぱり今の男も悪くないと思うのだ。そこで、審判員の我侭を加えて、今の男の方が魅力的ということで、白黒つけることにします。」となっている。
最後の回答を。
「昔の男はただ男だけやってりゃよかった。でも、今は男だけやってるような男は魅力的じゃない。男の価値観も多様になり、どんな男になるかを自分で考えて目指さないといけない! それが原因で男は自信を失っている。カッコいいってなに? 答えなんかないんだと思う。とにかく自信を持とうよ。根拠のない自信でもいいから」(大阪府八尾市・立地骨炎)。
《カッコいい男、と設問で問う魅力的な男はイコールではない。「カッコいい」と現代風な言い回しは魅力的なもののうちの、1要因ではあるのだろうが、カッコ悪い生きざまが、男の魅力となることだってある。確かに男の価値観は多様化したのは事実だ。だがしかし、女の真似をするのは決して魅力的な男とは見えない。それに肝心なのは魅力的と受け取るのは、受け取る側の問題であって、100人いればその受け取る魅力は100通りあって当然、蓼食う虫も好きずき、と言うこと、これだという答えなんかないんだろう。》
| 固定リンク
この記事へのコメントは終了しました。
コメント