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2007年9月28日 (金)

裁判員制度

国民が刑事裁判に参加する裁判員制度の施行(09年)に伴い事件報道について、最高裁の平木正洋・総括参事官は27日、福井市で講演し、裁判員に予断を与える恐れがある報道として、
 ♢容疑者の自白の有無や内容
 ♢生い立ち・対人関係
 ♢容疑者の弁解が不自然・不合理という指摘
 ♢DNA鑑定など容疑者の犯人性を示す証拠
 ♢容疑者の前科・前歴
 ♢事件に関する識者のコメント
など6項目を例示した。
「裁判員は職業裁判官と異なり、報道された事実と証拠に基づく事実を区別することに慣れていない」と説明した。最高裁関係者が裁判員制度と報道の関係について、公の場で懸念を示したのは初めて。福井市で始まった「マスコミ倫理懇談会全国協議会第51回全国大会」で、個人的な見解として述べたものだ。毎日新聞(9/28)。

これに対して参加した報道側からは強く反発する発言が続いた。「事件の背景や、社会的問題を明らかにするためには自白の内容や前科・前歴の報道が必要な場合もある」「捜査に誤りがないかどうかをチェックする役割がある」と事件報道の意義を強調し、参事官の発言に反発する意見が出された。参事官は「職業裁判官は予断を排除する訓練をしているが、経験のない裁判員の場合、証拠を前にしても報道の影響を受け、公正・中立な判断をできるかどうか大きな不安がある。裁判員は報道が間違いがないと思ってしまうのではないか」と見解を述べた。

また、報道規制につながりかねないとの質問に対しては「自白などの報道を一切するなという趣旨ではなく、報道に対する法規制は馴染まないと考えている」と答えた。さらに、報道機関の指針づくりにも言及し、「その祭の参考にしてほしい」と補足した。日本新聞協会は裁判員制度の導入に伴う取材・報道のあり方について、年内を目処に加盟各社の参考になる指針を自主的にまとめることにしている。

《参事官の懸念はよく理解できる。国内の新聞は、何処の社のものを読んでも独自性のある論調を展開する紙はない。特に政治に関してはお上から毎日2回の記者への立ち話を聞くだけだ。大袈裟に言えば一言一句のちがいもない。逆に違いがあれば立ち話を聞き違えているか、勝手な想像を加えるかしかあり得ないのが実態だ。スクープなど年間を通してもあれば奇跡だ。この体質は戦時中の大本営発表を流していただけの当時から何ら変わってはいない。

現実問題として、未経験者の裁判への参加は、現在の諸犯罪(小はいじめから殺人まで)に対してますます厳罰を要求するような風潮の中で、従来の被害者側の人権を忘れたような司法の裁きへの反動を加速させかねない危険性を孕んでいる問題だと考える。正義だ、人権だ、と叫んでみても、道徳が存在しない現在の日本では、裁判員そのものが、己を律するバランス感覚を持っているとは考えられない。「罪を憎んで人を憎まず」が単なるスローガンで終わるだろう。「もっと厳しい判決を」「死刑にして」は今では常に耳にする言葉になってきている。メディアにしても、昔から変わらない権力に対する抵抗姿勢も見えないことには信用ならない。メディアの公平性という言葉はことによっては右顧左眄(うこさべん)する立脚点の定まらない陽炎のようなものだ。》

青山学院大学教授(メディア倫理法制)・大石泰彦の話。「仮に示された6項目の規制がなされれば大変なことだ。犯罪は時代を映す鏡と言われ、社会の歪みとして分析しなければいけない出来事なのに、当局が規制を始めれば報道を通じて犯罪を読み解くことができなくなる。例えば冤罪の告発は報道の役割の大きな一つだが、もし偏向報道だと言われると「無罪ではないか」と言うこともダメということになり、私は反対だ。しかし、最近の報道では、犯罪を人間ドラマ、娯楽として扱う内容が目立つ。メディアの自浄努力も働いておらず、公権力に規制の口実を与える状況になっていると思う。捜査機関に誤りがないかチェックするのは報道の大きな役割だが、今は非常に弱い、と言う。

《教授の心配が、杞憂に終わればよいが、そのためには新聞協会が年度内にまとめたいとする裁判員制度の導入に対する取材・報道のあり方についての指針で、規制につながる不安を取り除くために、しっかりと指針を作り上げ、当局を納得させてこそ、より優れた裁判員制度が布かれることになる。

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