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2007年9月 8日 (土)

飛鳥美人はどうなる

四月に始まった高松塚古墳は破壊されて、石室の解体作業が無事終わったようだ。
発見されてからたかだか35年、1300年間の漆黒の世界の眠りを破られて、色鮮やかなままで眠っていた明日香の美人たちは、見るも無惨な姿に変わり果てていた。このままでは壁画は消滅の危機にいたる、となってやっと恒久保存を真剣に考えることになった。

1300年と35年。ここに到ってもなお学界の意見は現地保存と、例えば博物館での公開保存とで自説にこだわり、綱引きを続けているのが現実のようだ。現代科学の粋を尽くしてもなお黴の発生は止められず、今回の手段となったにも拘わらず、まだ、未練たらしく現地保存を主張する考古学者がいる。現在考えられる限りに贅を尽くして対黴設備を完備させ、箱ものを作り上げ、石室を十重二十重に科学装置で固め上げ、密室にしてもとに戻そうということらしい。

今回塚の取壊しがなされるまでの高松塚の外観は、屋根も造りつけてあって古墳というよりも粗末な仮宿のようなものだった。修復されて10年後に、元の位置に古墳を残すとしても、石室(壁画)は元に戻さず、歴史的遺跡として考えればよい。その時には土を盛った地肌のままにして、木や竹薮の繁る姿に復元し、小高い墳丘状にするのがよい。

飛鳥の美人は、今までのように、特定の人間だけが秘匿物を眺めるように見ることが可能な宝物であってはならない。国民誰の目にも見る機会が与えられてこそ、初めて国宝といえる。そのためには博物館でも造り、国宝の壁画は全面を展開して見られるように展示することを考えればよい。その方が少しの変化も見逃すことなく観察が可能だ。黴を除去する以外のことをして、色を加えたりすれば、それはもう修復でも復元でもなく、創作になる。石室はレプリカでも十分だ。そして、一日でも早く国民へ公開をすることだ。

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