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2007年8月10日 (金)

バイオ燃料は本当に切り札になるのか

超党派の国会議員による議員立法で、6月20日にエコツーリズム推進法*なるものが成立した。法の施行は来年4月だが、その前にエコツーリズムって何?ってことで、東京都内の旅行代理店「リポーン」が4泊5日の東日本縦断の「そらべあツアー」を企画し、6月28日午前8時前、JR新宿駅西口からエコ観光旅行にでかけた。バスの側面には「てんぷら油で走っています」とステッカーが張られていた。るんるん気分で出かたようだ。

途中立ち寄ったツアー先は塩釜市のかまぼこ工場の廃油を精製するプラントや、バイオガス発電、木材チップを使ったストーブの普及といった新エネルギーでまち起こしを進める岩手県葛巻町、支笏湖畔の植林などを見て廻った。(毎日新聞、7/9より)

*エコツーリズム推進法--(成立の背景)これまであったパッケージツアーや通過型の観光と異なり、地域の自然環境の保全に配慮しながら、時間をかけて自然と触れあう「エコツーリズム」が推進されてきた。しかし、現在は地域の環境への配慮を欠いた単なる自然体験ツアーがエコツアーと呼ばれたり、観光活動の過剰な利用により自然環境が劣化する事例が見られる。このような状況をふまえ、適切なエコツーリズムを推進するための総合的な枠組を定める法律である。
 (法律の趣旨)地域の自然環境の保全に配慮しつつ、地域の創意工夫を活かした「エコツーリズム」を推進する。以下の具体的な推進方策を定め、エコツーリズムを通じた自然環境の保全、観光振興、地域振興、環境教育の推進を図る。
 1、政府による基本方針の策定
 2、地域の関係者による推進協議会の設置
 3、地域のエコツーリズム推進方策の策定
 4、地域の自然観光資源の保全

うるさいほどエコ(ツアー)ツーリズムがならんだが、ツーリズムとはサイトシーイングと同じ観光旅行のことだ。勉強して廻ることが目的ならほかに呼び方があろうというものだ。

バスにもステッカーに掲げた「てんぷら油で走っています」のバイオ燃料(ガソリンや軽油の代替燃料となる植物由来の『バイオエタノール』『バイオディーゼル』)の需要が世界的に増えている。植物の成長過程で二酸化炭素を吸収するため燃やしても大気中の二酸化炭素は増えず、エネルギー安全保障面でも有効なためだ。原料のサトウキビなどの作付面積は急拡大しているが、環境に優しいはずの大生産国(米国・ブラジル)では逆に生態系を破壊していることが懸念されている。加えてブラジルには新日鉄グループが大規模な高炉を新設するという情報もある。世界最大の鉄鋼メーカー、アルセロール・ミタル(ルクセンブルク)に対抗するため、韓国ポスコとウジミナスを戦略パートナーと位置づけてのことだ。(毎日新聞8/10)環境には何も問題はないのだろうか。

燃料の排出量を考える時には燃やした時の排出量だけではなく、原料の生産(ガソリンなら採掘)から使用までを総合的にみるLCA**が必要だ。

**LCA(Life Cycle Assessment ライフサイクルアセスメント)
 製品の一生における環境負荷を評価する製造、輸送、販売、使用、廃棄、再利用まですべての段階での環境負荷を総合して評価する仕組みのこと。製品のライフサイクルについては「製品のゆりかごから墓場まで」と説明されることが多い。

このことから家庭から出されるてんぷら油の燃料化は、燃料としては極少単位の可能性があるというだけで、実際にガソリンに代わる燃料にはなる対象ではあり得ない。小規模実験室の段階で、その可能性をテストしても、そしてそれで車が走ったとしても、言葉は悪いが目くそ鼻くそレベルの話題づくりの話でガソリンの代替燃料となるものではない。一昔前になろうか、消費者団体のご婦人方が、廃油から石鹸や洗剤を作ってニュースになったことがあったが、家庭のてんぷら油の再生は、LCAから判断しても、車を走らせるよりは余ほど生きた再利用となるだろう。

バイオ燃料への転換が環境負荷を増大させる、という話になるが、ブラジル政府は75年、第1次石油危機の経験から、輸入原油に依存するエネルギー政策を見直す「国家アルコール計画」を発表。サトウキビが原料のバイオエタノールの増産に取組み、現在は年約1600万キロリットルを生産している。燃料にバイオエタノールもガソリンも両方使えるフレックス車は、新車販売の8割以上を占めている。政府は20年までにバイオ燃料生産を05年比で倍増する指針を策定したが、サトウキビ畑の大幅な拡大が不可欠だという。

この農地開発のターゲットになっているのが、中部のセラード地域、世界最大の熱帯サバンナ地帯で、16万種以上の動植物が棲息する生物多様性の宝庫なのだ。サトウキビが植えられたとしよう、加工する大工場が必要になる。これで生態系への影響はないのだろうか。日本でも安倍は昨年11月、当時30キロリットルであったバイオエタノールの生産量を、15〜20年先、年間ガソリン消費量の約1割に当る600万キロリットルに増やすよう工程表の作成を指示した。今のところ、拠点を沖縄と北海動において考えているようだが、大農場を作り、加工工場を建設したとして、国土の狭い日本に、ガソリン消費量の僅か10%のバイオエタノールを生産するために、またまた環境破壊を進め、狙っていることとは逆に、皮肉にも温暖化を促進させることにつながりはしないか。

従来のサトウキビやトウキビ、トウモロコシ、規格外小麦などの既存原料はだけでは精々5万キロリットルに止まると見られる。大半は食べない素材の稲わら、木材、資源作物、(コーリャンほか)の新しい原料に頼らなければならない。食糧用に生産されている既存原料を大量にバイオエタノールに振り向けると、穀物価額の高騰や食糧自給率の低下につながる懸念もある。

事実、アメリカでのエタノールブームを背景として、穀物相場に高騰が見られ、日本向けの遺伝子非組み換え(非GM)のトウモロコシや大豆の供給に黄信号が点っている。アメリカの農家にとって収入面で魅力が小さくなり、その結果非GM品の作付けを敬遠しつつあるからだ。遺伝子組み替え食品を拒否して来た日本の食糧確保も大きな試練を迎えることになっているのだ。

二者択一のエタノールだけで走る車はない。ガソリンとの混合比率を何%にするかの問題であって、逆にガソリンを使用しないで走る車が出現することはガソリン業界は望まないことだろう。トヨタは新ハイブリッド車「プラグインハイブリッド」の公道試験を開始することを発表した(7/25)。ガソリンと電気モーターを併用する車で、家庭用電源で充電できる。国内では8台の実車を使って今秋から最長3年間の公道走行を行う予定。欧州や米国でも順次試験を重ねて性能確認を行い、実用化を目指すという。市販車の電池容量を2倍にし、さらに改修してモーターのみで連続13キロ走行できるようにした。加速時にはモーター出力をガソリンエンジンが支える走行もできる。充電用プラグで家庭用電源につなぎ、100ボルトで3〜4時間、200ボルトなら1〜1・5時間でフル充電となる。電気代は昼間で40〜160円、夜間割引料金なら10〜40円程度。25キロを走行した場合、市販のプリウスと比較して燃料代を4割程度減らせるという。

結構なことだが25キロ走行するのに途中充電時間が1〜5時間必要となる。計算しても実際には役には立たない。充電時間が行動範囲を決定してしまう。そのため結果的にガソリンに頼ることになるだろう。

以上考えて来て、バイオ燃料は話題性こそ華やかだが決して環境問題の切り札ではなく、一過性のもので終わるだろう。ただ、アメリカやブラジル、或いは中国やロシアのように広い国土があれば、成り立つのかも知れないが、日本のような猫の額しかない国土の小さい国では、資源は枯渇し環境破壊が進むことになるだけだ。電化にも不自由さがつき纏う。究極残されているのは太陽電池になるだろう。太陽が地球を照らしてくれている限り、原料がなくなることはない。問題は夜間走行を快適なものにするためには蓄電容量が何処まで大きくできるか、反対に太陽電池そのものがどの程度小型化されることが可能かだ。この実現にはガソリン業界が巻き起こすパニックを鎮めることが可能かどうか難しい問題はあるが、こちらの方がバイオ燃料よりは地球に優しいことは確かだろう。

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コメント

お邪魔します。
「石炭から作る人工石油」は先の大戦の頃にはドイツ
に既にあったそうですが、戦時中といった「背に腹は代
えられない」状況以外で使われた事はありません。モノ
を作るためにエネルギーを使う事はあっても、エネル
ギーを得るためにエネルギーを使っては「割に合わな
い」のではないでしょうか(トータルのエネルギーは増
えないので)。後「エネルギーの使い方(省エネだけで
はない)」も考える必要があると思います。

投稿: ブロガー(志望) | 2007年8月12日 (日) 09時17分

はじめまして。ピザテンフォーのyutkarlsonです。ピザテンフォーでは、紙のピザボックスそのものを、なくす運動を展開中です。詳しくは、以下のブログをご覧下さい。
http://yutakarlson.blogspot.com/2007/08/blog-post_18.html
http://yutakarlson.blogspot.com/2007/08/mottainai.html

投稿: yutakarlson | 2007年8月20日 (月) 14時58分

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