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2007年8月30日 (木)

救急車内で死産

毎日新聞(8/29)の事件の記事はショッキングな表現を取った。「病院たらい回し1時間半9カ所 妊婦衝突事故後に流産」と。しかし、テレビによる続報では衝突以前に救急車内で流産(死産)しており、衝突したのはその後のようだ。新聞報道では衝突の衝撃による流産と誰でも解釈する表現となっており、「非は病院にあり」を臭わせている。

あけて30日の同紙の記事では一転して病院は『産科医分娩に追われ 受け入れ不可能であった9病院』の実態を書いて、しきりに病院が手一杯の状況にあったことを説明している。しかし、誤報と思われる衝突事故と死産前後の関連性の経緯については一切触れていない。

この事件は29日午前5時10分ごろ、大阪府高槻市富田丘町の国道171号交差点で、妊娠3ヶ月の奈良県橿原市の女性(36)を搬送中の救急車と軽乗用車が出合い頭に接触事故を起したことで明るみに出たものだ。当時現場は雨が激しく降っていて救急車のサイレンは軽乗用車を運転していたドライバー(51)は聞こえなかったという。最初の記事ではたらい回しされた挙げ句、衝突事故に遭い、救急車を乗り換えて着いた搬送先の病院で、胎児の死亡が確認された、というものだった。

いやしくも人間誕生の医術に携わる病院や医師が、浜辺で遊ぶビーチボールや毬投げのように、そう簡単に次から次に異変の発生している妊婦を放り出すものだろうか。特にことは昨年も公立病院で分娩中に意識不明になった妊婦を19病院が受け入れを断わり、搬送先の病院で8日後に死亡するという痛ましい事件のあった同じ奈良県で発生したものだった。メディア(毎日新聞)の過熱した報道で、奈良県の産科医療は大打撃を受けているのだ。

全国的にも産婦人科、小児科の医師不足が懸念されており、奈良県では昨年の例を参考に周産期(妊娠満22週から生後満7日未満までの期間)医療体制を充実させようとしている時期であった。
 今、時間軸で経緯を追ってみると29日、午前2時44分ごろ、奈良県橿原市内のスーパーで女性が「下腹部が痛い」と連れの男性に訴えたことから始まる。男は119番通報して救急車を手配。それから後は記事のように動いていくが、搬送先が決まるまでずっと女性は救急車の中にいてスーパーの駐車場で待機していた。
 4時19分 大阪府高槻市の病院が受け入れを許可する
 5時5分 搬送先に移動中、女性は救急車内で死産する
 5時9分 高槻市内の交差点で接触事故
 となる。明らかに交通事故と死産との関連性はないことになる。誤報をメディアは何の訂正も釈明もしていない。

不思議なのは、流産した女性だが、メディアによって妊娠3ケ月であったり、5ケ月であったり、6ケ月であったりすることだ。ま、それはまだどうでもい、この女性が妊娠の最短期間の3ケ月であったとしても、掛かり付けの病院もなく医師もいないことだ。ということは、母子手帳(正確には母子健康手帳)も持っていないことなのだろうか。スーパーで一緒に買い物をしていた男性についても「知人」であったり「同棲している男性」と書かれているが、この男性も救急車を呼ぶに当って、メディアによっては「女性が出血している」「妊娠しているかも知れない」などと、とても女性の身近にいる間柄とも思えない、見ず知らずの男性のようだ。残念だが、医学的には女性の出血があったことは、この時点ですでに「流産」が確定したことになる。

この女性、深夜にスーパーに出かけての買い物中のことだが、まさかしょっちゅう自転車やバイクを利用していた訳ではないだろうな。36歳にもなっていることだ。妊娠を知っていれば、お腹の子が16週を過ぎるころまではまだまだ安定期には入っていないことぐらいは知っているはずだ。それにこの時期はいつ流産してもおかしくない、そのためにも掛かり付けの病院、医師との定期的な検診は受けておくべきであったろう。

いずれにしてもこの事件、たらい回しされたから流産したのではないことだけは確実だ。

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