日本の象牙輸入許可
先月31日、ワシントン条約で取引が禁止されている象牙を輸入したとし、撞球(ビリヤード)のキュー(cue、球を撞く棒状の道具)を製造する、岡山県総社市の業者が関税法違反の疑いで逮捕された報道があったばかりだ。彼らはキューのバット(球を撞く時プレーヤーが握る部分)の装飾用に使用していた。
その象牙が、今日の報道では日本向けに60トンの輸出することになったことを知らせている。オランダのハーグで2日に開かれたワシントン条約の常設委員会で、南部アフリカ3カ国(ポツワナ、ナミビア、南アフリカ)が在庫として持つものからの輸出を認める決定だ。これら対象になる象牙は3カ国の政府が自然死した象などから採取したものだという。
輸入については日中両国が希望していた。昨年10月の常設委員会でも協議されたが、輸出国側の密猟監視体制が不十分として結論が持ち越されていたものだ。中国は、国内での流通監視体制が整っていないとして輸入が認められなかった。
常設委員会に続き3日から開かれる締約国会議では、今回のような取引を認める手続きを簡素化するべきだという南アなどアフリカ4カ国の提案と、今後20年間は取引を全面禁止すべきだというケニア、マリ両国の提案も協議される見込みだ。象牙は89年に国際取引が禁止されたが、99年に一度、日本向け輸出50トンが認められてから、今回が2回目の輸出許可となる。象牙の取引自体に強硬な反対姿勢を示す国もあり、今後の恒常的な取引の解禁につながる見通しは少ないと見られる。
今回の決定を受けて日本政府は「条件を整えたのだから当然」との立場だ。環境省野生生物課は「輸入が承認された象牙はすべて自然死したもの。3カ国の収益は、すべて象の保全や地域住民のために使われることになっている」とその意義を強調している。
全国の印章の約半分を生産する日本一のはんこの町、山梨県の旧六郷町(現市川三郷町)では、製造・小売業者が決定を歓迎しているという。「品薄の象牙が輸入再開によって価額が安くなり、発注が増えれば朗報だ」と。現在では象牙の代用にオノオレカンバの木などが開発されているが、やはり細かい加工は象牙が優るという。
国内では、牙の形を維持している「全形象牙」を取引する場合は1本ごとに登録し、国から「登録票」の発行を受けるよう義務づけている。だが、加工しやすいように全形象牙を数個に切断すると、それぞれの「カットピース」については登録義務がない。また、登録象牙から作られた印鑑や装飾品などには「正規品」を示す環境省・経済産業省発行のシール(標章)を張ることができるが、義務とはされていない。
今回の会議では同じアフリカ諸国でもケニアなどから、取引開始によって、密猟の増加に対する強い懸念が出された。同会議に参加したNGO「野生生物保全論研究会」の坂元雅行事務局長は「国内の管理体制はまだ不十分にもかかわらず、輸出を認めた今回の意思決定には大きな疑問がある。大変残念な結果だ」との見解を公表した。
《NGOが、兎や角言うこともないだろう。輸出を認めるのは自然死の象が対象ということだが、中に密猟で死亡した象のものが混じっていることの可能性があっても、その選別は難しい。輸出3カ国の収益は象を保護するため、当然密猟に対する監視体制を充実させることに使われ、また地域住民の生活のために使用される。今後恒常的に行うことでもないようだ。どんなに厳しい密輸監視体制も、現実には役に立たない。それよりは、今回のように8年目、或いは10年の歳月を限っての取引があってもいいのではないだろうか。》
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