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2007年6月29日 (金)

夫の収入10万円減ったら

毎日新聞(5/9)の紙面、面白い記事だな、と思っていたが後回しになった。
仕事と家庭の両立(ワーク・ライフ・バランス*)のために夫が就労時間を短縮し収入が月10万円減ると、妻の「夫婦関係満足度」は低下するが、それはどのように補えるか、というテーマで取組んだ研究結果が発表された。

*ワーク・ライフ・バランス—1990年代初頭に不景気にあったアメリカで考え出された取り組みで、一般に「仕事と私生活をバランスよく両立させること」を云う。

シカゴ大学社会学部教授の山口一男・経済産業研究所客員研究員が、仕事と家庭の両立と、夫婦関係満足度の関連を分析したところ、「平日の夫婦の会話時間を16分増やすこと」は妻にとって夫の収入が10万円増えるのと同じで、それが夫婦関係を円滑に営む対策の一つになるとの結果になった、というものだ。

この分析は、財団法人家計経済研究所の「消費生活に関するパネル調査」を基にしたものだ。調査は初回の93年当時に24〜34歳だった女性らに対し、家計や資産、夫婦間系の満足度、家事・育児や仕事などの時間を継続的に尋ねたもの。山口教授は01年までのデータを使い、妻の夫婦関係満足度に影響する要因とその度合いを調べた。

<妻の夫婦関係満足度に影響する要因とその関係>
  要因(影響度の大きい順)    影響
 夫婦の共有生活活動数の増加   上がる
 結婚継続年数の経過       下がる
 最初の子どもの誕生       下がる
 夫婦の平日の会話時間の増加   上がる
 夫婦の休日の共有時間の増加   上がる
 夫の失業            下がる
 夫の育児分担割合の増加     上がる
 世帯の預貯金・有価証券の増加  上がる
 夫の収入増           上がる

マイナス(下がる)の影響度が最も大きいのは結婚継続年数で、結婚期間が長くなるほど、妻の満足度が低下することがわかった。これに対し、プラス(上がる)の影響度が最も大きいのは、山口教授が独自に、平日の「食事」「くつろぎ」と、休日の「くつろぎ」「家事・育児」「趣味・娯楽・スポーツ」の計5活動で構成されるとした夫婦の「共有主要生活活動数」。この活動が増えれば、満足度が高まるという結果が出た。

山口教授はまた、夫婦関係の満足度と各要因との関係について、数式モデルを作成した。仕事と家庭の両立のために夫の就業時間が短縮して、月収10万円が減った場合に、妻の夫婦関係満足度の低下分をどう補えるかをはじき出した。結果は
 1、夫婦の平日の会話時間を一日当たり平均で16分増やす
 2、休日に妻が夫と大切に過ごしていると思う生活時間を1日当たり平均で54分増やす
 3、夫の育児分担割合を3%増加させる
 4、世帯の預貯金・有価証券を約130万円増やす
などだった。
同教授は「月10万円の多寡は家庭によって異なるため、あくまでも統計上の平均的な結果」と付け加えている。なお、妻の夫婦関係満足度は第1子出生時に大きく低下するものの、第2子以降は影響が見られなかったという。同時に第1子出生時の満足度の低下は、仕事を持っている妻よりも専業主婦の方が大きく表れたという。

同教授は毎月10万円の収入減になる生活について、その多寡を家庭によって異なる統計上の平均、と言い訳のような説明をしているが、夫との毎日の16分の会話、毎週1、2度の小1時間の共に過ごせる時間が共有出来ることで、生活必需品や、交友関係、近所付合いの範囲で欲しいものや垂涎のブランドものを諦めて、夫婦一緒にいることで満足する女性がどれだけいるのだろう。反対に、コマーシャルでも流れた多くの主婦の本音とも言える「亭主元気で留守がいい」の逆を行くようなもので、一緒の時間が増えるのは息が詰まるという夫婦もいるだろう。そして、例えば夫婦関係の満足度が低くなることは、昨今のように離婚が増え続けることの原因にもなるだろう。

妻の満足度が下がる第1子の誕生は、育児の仕事が増えることで十分考えられることであり、それはまた、第2子出生の主な障害となって少子化の要因の1つにもなるだろう。生活の基盤が夫だけの収入によるものなのか、共働き家庭なのかでも違ってくる。夫の10万円の収入減が、妻の収入との逆転現象を生むことも珍しいことではなくなる。そうなれば熟年離婚ばやりの現在のような世相からは、年金の分割も妻から夫へ行くケースが多くなることも考えられる。

結局はこの研究、フェミニズムを下敷きに中流以上の家庭を対象に、アメリカ生まれの分析・手法を使って世間受けする内容にまとめただけのものに見える。

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