憲法記念日と、不貞の子の旅券は前夫の苗字(姓)
♦5月3日、日本国憲法施行の日。朝から憲法問題に関する番組が犇めいている。敗戦後に新しく生まれた憲法は、いまや60年目に入った。なし崩しに拡大解釈を繰り返した運用を続け、既成事実を積み重ねた上、海外へ武力派遣まで行う軍隊とも呼べる戦力を持ってしまった。
そこで為政者たちは「時代にそぐわなくなった」「時代に合わない」の詭弁となって人心の攪乱を狙いだした。安倍は「私の政府」と、政府を個人的所有物であるかのように言い、ここに来て憲法の改正を目標に据え、国民投票法案を強引に通過させ、たかが総理の分際で憲法の改正のための解釈見直しを有識者会議に命じた。その理由はやはり「時代が変って行く中で(憲法を)どう解釈すべきか議論してもらいたい」(4月23日、内閣記者会のインタビュー)と。また、憲法改正についても夏の参院選の争点にかかげる方針を示した。一方、公明党は憲法9条1、2項の堅持や、集団的自衛権の行使を認めない立場を明確にしており、政府与党内に波紋を広げそうだ。
集団的自衛権にしても、世界のあちこちで積極的に戦争を仕掛け、展開しているのはアメリカだ。自衛を考えることなど一切ないのがアメリカだ。その国の傘の下で、うろうろしているだけの日本に、自衛のための軍隊など必要はないだろう。例えば、傘から飛び出して独立して自衛のための戦争をするだけの軍事力を持つことをアメリカが黙って見ているか。第一次世界大戦で敗戦国であったドイツが年を経ずしてヒトラー率いるナチス・ドイツとして復興し、ヨーロッパを席巻したことを思い出せばよい。かつて日本の侵略で被害を受けた国々や国際社会がそれを許すか。どのように戦力を増強してみても、根本的に核兵器や原子爆弾の一つも持たないことを宣言した日本という国を、例えば仮想敵の北朝鮮が恐れるか。
日米秘密保護法違反で問題となっているイージス艦の心臓部と言われる情報も、世界最高水準の防空、迎撃システムといいながら、クラスター爆弾並みの不良率の高い、信頼性のないものかも知れない。こんなものに頼る集団的自衛権など片腹痛い。
憲法を検討するより早く、仮想的(北朝鮮)に向けて迎撃陣地を日本列島に布き始め、クラスター爆弾を隠し持って戦備の増強を図っている。憲法を踏みにじりながら後追いかけるように帳尻あわせの改竄を考るのが為政者のやり方だ。憲法で明確な戦争ができる軍備を整えれば、軍需物資で儲かる企業は手ぐすねひいて待ち構えている。戦前、戦中、軍需産業で巨万の富みを築いた大企業、財閥は、“夢よもう一度”と跳びつくことだろう。
♦毎日新聞(5/2)から
外務省が「離婚後300日以内に誕生した子は前夫の子」と推定する民法772条のために戸籍がない子供らにパスポート(旅券)を発給することを決めた問題で、外務省は旅券発給の条件として「前夫の姓」の記載を条件の一つにしていることが分かった。無国籍児の旅券取得を後押しして来た市民団体などは「子の人格を尊重して普段使われている姓を旅券に反映させてほしい」と反発している。
外務省は近く旅券法施行規則を改正する方針で、
◎子供を戸籍に記載するための裁判手続きを起している
◎海外への渡航を認める人道上の理由がある
などを無戸籍児への発給条件としていたが、さらに、
◎前夫の姓にあたる「民法の規定で決まる法律上の氏の記載」
が必要とした。
外務省旅券課は、772条で離婚後300日以内に生まれた子は一律に前夫の子と推定されるため、前夫の姓にせざるを得ないとしている。裁判で現夫の子と確定後なら、旅券の姓を訂正できるという。同課は「申請者の事情には同情し、法務省などと議論を重ねてきたが、772条が現状のままである以上これがぎりぎりの対応。法律を超えた裁量は取ることができない」と話している、という。
《旅券課の説明は全くその通りだ。子供が可哀想だというだけで法律を曲げることが許されることはない。親に反対され、許されないままに子が生まれ、祖父母になった親から孫に免じて婚姻を許される家庭内の人情話とは違う。親が法律のような家庭内のことであれば、その親が泣くか、或いは許せば済む。しかし、日本には民法という人々が等しく守らなければならない法律がある。その法を破ったとなれば、相応の罰があるのは当然だ。「私たちは何も悪いことをしていない」とは離婚の成立も待ち切れず婚姻関係の継続中に、或いは別居中に不貞をはたらき、離婚後300日以内に子を生んだ男女の言い分だ。女性だけを責めるものではない。妊娠に至るまでの立場や状況を考えれば、法を犯して関係を持とうと(夫への裏切り、悪いことを)するのだ。そこでお互いの配慮をするのが大人だろう。女性にとって暴力夫であれ、夫以外の男に好意をいだいたであれ、男の側からは、離婚していない以上は人妻だ、妊娠を避ける配慮があって当然だろう。
《それを「子供が生まれてしまったんだ、この子を可哀想と思え」、「子供の人格を認めろ」というのが現在の法を蔑ろにした大方の同情意見だ。責任を取らなければならないのは見境なく子供を拵えた男女にある。一方で、性道徳の乱れの結果をDNA鑑定で片をつけてしまおうとする意見もある。生物学的にはそれで親子関係のけじめはつくのだろうが、社会の仕組みはそれだけで済む単純なものではないだろう。法を遵守することは社会生活を営む親の責任だろう。自分達で責任の取れない勝手なことをした結果、都合が悪いから“法律を変えろ”では余りにも虫が良過ぎる。
《外務省は法のぎりぎりのところで善処しようとした。それが気に食わないのなら、海外への旅行などしなければよい。それが自己責任の取り方だ。どうしても現夫の姓での海外旅行がしたいのなら、外務省が提案するように、現時点できることは、裁判でそれを認めさせることだけだ。憲法も民法もどちらも法だ。
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