クラスター爆弾禁止リマ会議開幕
毎日新聞(5/23、24)から
不発弾が市民を無差別に殺傷するクラスター爆弾の禁止条約作りを目指す「クラスター爆弾禁止リマ会議」が23日、今年2月のオスロ会議(49カ国参加)を上回る68カ国、八つの国連機関、25カ国の非政府組織(NGO)の参加を迎えてペルーのリマで開催された。ペルーやノルウェーは、同爆弾を大量に保有しながら禁止に消極的な米露中が加わらない「有志国連合」で、「全面禁止」を柱とする条約を締結するよう提唱した。一方ドイツや日本は、国連の枠組み内で米露中を含めた議論を行うよう求め、会議は冒頭から条約作りの枠組を巡り対立している。クラスター爆弾を大量に保有しながら会議に参加していない米中露などへ国際的な圧力が強まりそうだ。
会議の冒頭でペルーのグティエレス副外相が「会議を全面禁止に向けた重要な足掛かりにしたい」と開会を宣言して、ノルウェーと共同で作った「即時全面禁止」の議長国案*を説明した。まっ先に口火を切ったドイツは米中露が参加し、国連の枠組内にある「特定通常兵器使用禁止制限条約(CCW)締約国会議」が、「議論の場には最適である」と訴えた。ドイツと同じく慎重派であっても日本の立場は少し異なる。オスロ会議の時もそうであったが、アメリカの顔色を窺ってからでないと何も物が言えない。それまではやっと保有しているクラスター爆弾は手放したくない。安全保障上の必要性を強調することでCCWでの議論が「効果的」と慎重姿勢のままだ。
*即時全面禁止条約案要旨 毎日新聞(5/12)から
▼禁止事項・・いかなる状況下でもクラスター爆弾の使用、開発、生産、貯蔵、移転(輸出)を認めない。使用時・使用後に民間人に受け入れ難い危害を及ぼすためだ。
▼定義・・爆発性の子爆弾を持つクラスター爆弾を禁止対象とする。(子爆弾が、発煙弾、照明弾、追尾する誘導弾であるものは含めない)
▼在庫の廃棄・・6年以内の期限内に終わらない場合は、締約国会議等で10年を限度として延長を。
▼不発弾処理・・10年以内の期限内に終わらない場合は、締約国会議等で10以内の延長を認める。
▼国際協力・・・(略)
▼被害者支援・・(略)
▼発効後・・・・加盟国は自国の履行状況を国連事務総長に年次報告の義務。発行後5年後に再検討会議を。それまでは締約国会議を毎年開く。
▼発効の要件・・20カ国目が批准してから6カ月目の月初めに発効する。
▼留保・・・・・特定条項を留保(して署名・批准)することは認められない。
しかし、そのCCWの再検討会議で禁止合意に至らなかったことを不満とする25カ国が昨年11月、スイス・ジュネーブで禁止を求める宣言を発表。その後の約半年間で、禁止条約づくりに参加する国は約2・5倍に増えている。クラスター爆弾使用禁止に積極的な国々は、一気に条約づくりを進める考えだ。今回の会議での議論の叩き台として「即時全面禁止」の議長条約案を作成した積極派の国々やNGOは、全会一致方式のCCWでは何も決められないとして、CCW重視は「何もしない」というのと同じだ、と主張している。
独仏英などがいうように、国連の枠組み下にあるとしても、当初から明確な反対姿勢を示している米露中、イスラエルなどを加えたCCWで、何が決まるというのか。日本はアメリカが態度を決めてくれなければはっきりした主張は口にできない。それまでは、慎重派の尻馬に乗ってどっち着かずで安倍流ののらりくらりを続けるしかない。これでは議長国がいう「何もしない」のと同じだと言われても認める他ないだろう。
リリアン・バジョン、ペルー外務省安保・軍縮部長(名前から想像できるように女性)が22日、毎日新聞記者との会見で次のように語っている。「不発率が低ければ容認するという考え方は人道的に受け入れ難い」と語り、独**英などが唱える「部分禁止論」を退け、全面禁止を主張した。
**ドイツ条約案は「不発率1%未満」を当面の禁止対象から外すとする。
バジョン部長はリマ会議の実務責任者で、ノルウェーなど他の積極派の国と連携してクラスター爆弾の「即時全面禁止」を柱とする議長条約案の作成に係わっている。続いて「2月のオスロ会議に参加しなかった国からも今回、参加申し入れが非常に多かった」と語り、条約策定に向けた国際世論の高まりに自信を見せた。12月に予定される次のウィーン会議まで半年間あることを念頭に「オスロ会議で生まれた条約作りへの力強い動きが失速することのないように、今度の会議で弾みをつけたい」と語った。
【付】
ノーベル平和賞受賞者でケニアの元副環境相のワンガリ・マータイさんは、22日、リマ会議を前に現地で市民フォーラムを開催したNGOにメッセージを寄せ、不発弾が無差別に民間人を殺傷しているクラスター爆弾に強い反対を表明した。「リマには多くの国々が結集し、廃絶に向け準備が進んでいる」と廃絶への支持を表明し、これまで一部の外交官が同爆弾の禁止について議論しながら結論が出ず、昨夏の第2次レバノン戦争でクラスター爆弾が使われた実態を批判した。
5月26日、追記
♦軍事国家を目指す安倍にとって、北朝鮮が打ち上げるミサイルは逆効果となって彼を後押ししてくれるものとなる。北朝鮮が騒げば騒ぐほど、ますます集団的自衛権の言葉が真実味を増してくれるのだ。25日午前9時ごろ、2発或いは数発という海上投棄とも思える花火を東と西に打っていた。訓練とも言えない情けない数だ。他所さまの庭の片隅であった話だが、早速安倍はコメントを出した。「日本の安全保障にとって、重大な問題とは認識していない」と。さすが、こんなことでは驚かないぞ!という気らしい。
♦「クラスター爆弾は防衛に必要」、恐ろしい日本の空幕長。
防衛省の田母神(たもがみ)俊雄空幕長は25日の定例会見で、「日本は島国で海岸線が長く、クラスター爆弾は防衛に有利」と述べ、手段として必要、と語った。上陸してくる敵(北朝鮮以外は考えにない)を海岸線で防ぐために使うことが想定された発言だ。「クラスター爆弾で被害を受けるのは日本国民。爆弾で被害を受けるか、敵国に日本が占領されるか、どちらかを考えた時、防衛手段を持っておくべきだ」と述べた。
また、久間防衛相も「国土が蹂躙されるか、守り抜いた後に不発弾処理をした方がいいのか」と話して、自分は戦争が終わってから、不発弾処理をする方がよいと思うとの考えを示した。
《二人とも、ともにトップにあるものが、日本国民が戦って(守り抜いて、とは戦火にまみれて、ということ)死ぬことを選び、死体の中をかき分けて不発弾を拾って歩くことを選ぶという。海外でどれだけ多くの人が被害を受けていて、今、将(まさ)にペルーのリマでは世界の国々がクラスター爆弾が非人道的な兵器であるかを議論し、全廃を提議している最中だ。アメリカが廃止に反対しているからとて、その虎の威を借りた陰で、北朝鮮向けには有効武器であるとは余りにも国民の命を蔑(ないがし)ろにするものではないだろうか。このような戦争がしたくて堪らない安倍は、虎視眈々、憲法の改正を大目標に、周りの溝を次々に埋めて行こうとしている。
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