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2007年4月 1日 (日)

沖縄戦集団自決について(教科書検定問題)

Musukri_1

 こぼれた種から発芽し、一株だけが咲いた
  ムスカリ


毎日新聞(3/31)から
主として高校2年生以上が使用する06年度教科書検定で、沖縄の集団自決における日本軍の強制・命令について、新たな検定意見が示された。「日本軍の強制は明らかとは言い切れない」と。

大江健三郎が1970年に著わした「沖縄ノート」を読んで、中に記載されている当時の沖縄・座間味島守備隊の将校・海上挺身隊第一戦隊長の梅沢裕・少佐(90)が05年8月、誤った記載で名誉を傷つけられたとして、出版社(岩波書店)と著作者を相手に出版差し止めと計2000万円の損害賠償を求める訴えを大阪地裁に起した。

書物が出版されて35年も経過した今、何故か。出版された当時でも著名な作家の書物だ、話題にもなった。当時責任ある立場にあって指揮命令をしていた本人が、耳を塞いでいたのだろうか。当年90歳になる梅沢が、今になって冤罪を申立てるなど変な話だ。世の中は、従軍慰安婦問題でも軍の命令はなかった、との見解が大っぴらに口にされることが目立つようになっている。梅沢も当世風の波に乗って、「自決を命令したことはなく、到底納得できない」と訴えたとしか思えない。誰かが支えてくれるだろうことを願っているのだろう。信じられないことだが、早速歴史を学ばないまま味方する弁護団も出た。

梅沢は命令を出したことはない、と言うが、当時の軍隊は絶対的な権力を持つ権威集団であった。文書が存在する命令もあるが、口頭で指示する場合もある。或いは何も指示しなくても、部下や徴発されて集団に加わっている住民が、配られて手にした手榴弾が、何を意味するかは説明などなくても理解していたのが戦争と言う極限状況下での人間の心理だろう。雨霰と降り注ぐアメリカ軍の砲弾に壕や洞窟から出ることも出来ず、武器も持たず、傷ついた体でどう戦え、どう逃げろ、と言えるか。兵はおろか、住民にも捕虜になることを厳しく戒めていた。捕虜になることを禁じたのは敵の手に、味方の情報が洩れるのを恐れたからだ。兵も住民もない。手にした手榴弾は「死ねの命令」と同義だ。

いじめ問題を考えてみればよい。‘いじめを見て見ぬ振りは犯罪だ’と頻りに書き立てるマスコミがある。梅沢は、自分の知らないところで手榴弾を部下がこっそり盗んで住民や兵に配っていたとでも言うのだろうか。戦場とはいえ兵器の一丁、銃弾の一発も、天皇陛下から賜ったもの、として員数は厳しく管理されていたものだ。手榴弾が住民に手渡されることは当然、知って許可していなければ部下の統括は出来ない。梅沢は見てみぬ振りをしていたのだ。

梅沢は大阪地裁の陳述で「軍の命令はなかった。当時は、軍の命令があったことにすれば、国からの補償を住民が得られるため、私一人が悪者になった」としたことを、文科省も梅沢の陳述を配慮してのことだろうか。梅沢は、自己犠牲の精神で住民の利益を守ったかのような言い分だが、それが真実か嘘かは、今さら新しい証拠が出ない限り、証明することは出来ないだろう。梅沢の言い分では、住民たちは命令もしないのに、勝手に死んで行ったとでも言うのか。当時の軍隊の指揮命令系統は「絶対」であって、極限の状態の中で住民を追い詰めたのが軍隊であることは間違いのない事実だ。

図書検定調査審議会では、今回の方針転換に否定的な意見はでなかったというものの、一部学者は「ここ最近は新しい研究といえるものはなく、なぜ今(見解を)変えるのか。政治的な理由しか背景にあり得ない」と首を捻る。

文部科学省の見解は次のようなものだ。
『従来は、「日本軍の命令」説が多数だった。沖縄返還(72年)前後から疑念や異説が出ており、05年は座間味島の集団自決を命令したとされる元日本軍少佐が裁判で命令を否定するなど、異説を補強する状況が出てきた。最近は、命令の有無よりも住民が自決を受け入れた精神状態に考察を加える学説が多い。極限的な状態に置かれるなどさまざまな状況が絡まって、自決に追い込まれたとも指摘される。「軍の命令」と断定するのはいかがなものか。』

と冤罪を主張する裁かれるべき張本人の供述を正当と看做すかのような見解を述べている。彼が言う冤罪が本当なら何故今頃ノコノコ出てきたのか。文部科学省が挙げる異説を補強する状況とは何か。日本国首相安倍が口にした「日本軍の狭義の強制性(命令)」はなかったという言葉の遊びが罷り通る状況を指すのか。

大きなテーマに対して見方は一つではない。幾つもの取り組み方がある。拠って立つ立場も多様だ。思想、政治、学識、派閥、学閥、閨閥など、力関係、利害損得が絡む。大先生の向こうを張った論陣は出世の妨げになる、避けて通るのは日本の研究者の慣わしだ。答えが一つなんてある訳がない。梅沢も、命令したかも知れないし、しなかったかも知れない。しかし、現実に大勢の沖縄の住民は自決して死んで行った。そして、時の権力者の軍人は「絶対の権限」を持っていた。何せ、天皇の軍隊であったから。

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