これでも親、保護者?
毎日新聞(3/9)から
記事の見出しは「川崎市長 自ら督促行脚」となっている。
川崎市の阿部孝夫市長は8日、認可保育園の保育料を長期滞納している市民全員と面談して催促すると発表した。政令指定都市トップの督促は極めて異例で、阿部市長は「同情すべき事情のない方にはすぐ納めてもらうようお勧めする」と話していいる。
同市内の保育園は市立・私立合わせて117園で、1年以上の滞納者は129人に上るという。滞納額は2月末時点で計約6000万円で、3年以上の滞納者は16人いる。保育料は父母の前年度収入に応じて設定され、阿部市長は「支払い能力がないというのはあり得ない」という。同市長は「保護者の都合に合わせて保育所で面談する。『合わない』という人には強制執行(給料の差し押え等)をするとも述べた。
面談は4〜9月を予定しているが、担当の市健康福祉局こども計画課は「突然のことで驚いている」と話している。
《給食費滞納、授業料滞納などのニュースが流される昨今、さして珍しいことではなくなった気がする。保護者のモラルの低下は恐ろしいほど根深く、各家庭の中に浸透しているようだ。過去から続く国民年金保険料の未払いによる制度の崩壊さえ心配されるものもあるが、同じくNHK受信料の未払いを、マスメディアが局側の問題を大々的に報道したことを後ろ楯に、契約者の未払いを支持に近い姿勢で連日のように取り上げて、数字の推移を流し続けた。日本人はこのようなことには節度を弁えず、すぐに同調する連中の多い国民性だ、面白半分に未払いが増え続けた。凶悪犯罪ですら愉快犯の生まれる付和雷同する人種だ。情報が流れる度にその数は増えて行く。ましてその情報は網の目のように張り巡らされている。こいつは一丁加わってみようじゃないか、となる。
《話は変るが、長い間馴染みにしている書店がある。週ごとに顔をだし、1冊1冊の購入は微々たる金額だが1ヵ月2ヵ月溜まると結構大きな金額になる。ある日、書店の責任者のボヤキを聞かされたことがある。定期購読を結んでも、驚いたことに毎週きちんと受け取りに来るとは限らない客がいるのだそうだ。私など次の発行が待ち遠しく、書棚に並ぶ書籍を眺めるのも楽しいし、必ず買って帰らないと生活のリズムが狂う気さえするほどだ。その店主が云うに、溜めてから受け取りに来る人の中には何ヵ月も経ってから来て、「何でこんな高いんだ!」と文句を云い、「1度には払えないぞ!」と次に回す人がいるんですよ、と嘆いたことがあった。まさしくこの手の人間が今、書店でも多くなっているんだそうだ。
《保育園の滞納も心理としては変らないんだろう。だらしない己の性格が却って自分の進む道を狭くしている。ほかの自治体の事情は分からないが、川崎市の場合市長の説明では、保育料は「保護者の収入に応じた金額で、払えない人はいないはず」だという。それでも払わない保護者はわが子を預ける保育園が、ボランティアで預かってくれているとでも錯覚しているのだろうか。入園に際しては園の規則の説明も聞いているだろうに。預けた子どもに何か事故や異変でも起れば、園の責任を激しく詰問することになるだろう。子どもを預けるからには親に代わって保育の責任を依託することに対して、その対価を支払う義務がある。手の懸かる他人の子を預かるのに今どき無償の愛を期待するなんて虫が良過ぎる。給食費の不払いによく使われる、「義務教育だから」の情けない親とはまた違った親たちだが、滞納する保護者の数、その金額が発表される度に、このような親たちは、だらしない連中でも同類の多いことが心強く、ますます支払わねばならない義務感を投げ捨てて行く。そのくせ何かの時には権利だけはずうずうしく主張する。
《自治体によっては貧困が原因で滞納しているところもあるようだが、概ねはモラルをなくした親たちの問題だ。
沖縄の那覇市では、保育料の滞納は5年間で5700万円(07年3月1日現在)、件数で3476件となるが、市では生活困窮が主な原因とみているという。市は滞納者に対して分割納付の相談も行っているが、困窮者でなく、誠意のみられない保護者には段階的に厳しい対応を取っているということのようだ。
仙台市では市の保育料滞納は累積で2億円を超え、督促にも応じなかった保護者の預金の差し押え、という強制処分にまで及んだケースも起っている。
先月26日のブログでも触れたが、先生までもが給食費や授業料の滞納があった、大阪市では市立保育園の保育料の未収納額が約20億円にのぼり、市は悪質な滞納者の給与の差し押えに乗り出す姿勢を見せている。
こちらも市の職員になるが、京都市内の保育所に子どもを通わせる同市職員の保育料滞納が01年から5年間で、37世帯計約3600万円にのぼることがわかった。京都でも昨年12月8日を期限として、払う意思がない職員には、給与の差し押さえ等、厳しい対応をとることを決めた。
同じく京都府城陽市の保育園では保育料の未納が05年度決算で192件、5386万円あった。請求はこれら未納分について「法的措置を含め保全と徴集をはかるよう市長に勧告すべき」とし、徴集の時効を5年とする市の判断にも疑義があるとしている。市は悪質な滞納者に対し、昨年12月から給与、預金の差し押えを前提とした督促状を送付している、という。
《全国の自治体に広がっている、支払わなければならない滞納問題に、都合のよい言い訳の種が増えた。いわく、「格差社会のしわ寄せを受けている」「非正社員のような低所得層には支払えない」などだ。自治体としても、無碍に情け容赦のない取り立てをし辛い。弱い者いじめと取られかねない。ついつい弱腰になって滞納総額の金額が膨大なものになる。これをまた良いことに、みんなで払わなければ怖くない、とますます悪循環の泥沼にはまり込む。払う側も、受け取る側も、これだけ大きな金額になる前に、お互いの責任をしっかりと把握するべきだ。いずれにしても滞納する側に問題のあることには変りないことだが。》
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コメント
プログ拝見。
『世相』の愛読者です。
「これでも親か」まさしく、極論として現実の世相のひずみは「親」にあります。
久しぶりにコメントさせて頂きます。
「世相」。毎日毎日綴られている記事、資料と知識と識見に裏打ちされた論説には、ただた驚嘆しております。「継続は力なり」といいながら、「キッコ」みたいにプロ集団のバックもない個人で、毎日毎日ここまで継続しているその力は『驚嘆』です。
ただ、その驚嘆する「力」の前に私のような浅学な読者は追いつけないではないしょうか。
願わくは、テーマを絞った副題をそえ、簡略された文章を採用して短文形式にしていただければ愛読者として有難いと思っております。ご無礼お許しください。
投稿: 小高英二 | 2007年3月10日 (土) 22時55分