アニータ騒ぎ
「日本へは売春しに行った」と嘯いた、元売春妻のチリ人・アニータがやって来た。元青森県住宅供給公社職員であった夫が業務上横領したした中から、8億円も貢がせた挙げ句、チリに逃げた。日本側は追いかけて返還を迫ったが、「もう使っちゃてないよ」と開き直られ、僅かの回収で、残りは回収不能とみた公社側の諦めで自由の身となり、彼女のこれまでの人生のドキュメント製作のため(元夫との離婚協議ともいわれている)、チリTV局の番組収録で、獄中の夫に再会するために日本にやってきた。
それを追い掛けるこの2、3日間の、余りにも情けない日本のメディアの姿を見せつけられることになった。納豆騒動から、芋づるのように次々と出てきたあるあるの捏造事件の過熱報道。これに関連して取り上げ、ブログに一度書いたあと消した朝日新聞社の過去の捏造問題があった。同社は自らの足元も確かめずあるある捏造を攻撃したが、今になっては消す必要がなかったこのメディアの体質がはっきりと見えた。今回は、他社の記事の盗用だ。少なくとも責任ある記事を書くのに、その出典(盗用された側は、他社紙まで目を通していることが明瞭だが)に頬被りをし、デスクはそれが見抜けず、盗用された側からの指摘を受けて、「悪うございました」で済ます。メディアとしての矜持(きんじ)などどこにも見えない。しかし、この節操のない姿勢はひとり朝日だけに限らない。
多くのメディアが1人の外国人女性アニータの日本上陸に、甘い菓子に群がる蟻のように、押すな押すなの勢いで取り囲んだ。騒動に巻き込まれたタクシー同士の衝突事故まで巻き起こす騒ぎになった。道ばたに垂れ流したクソのような話題に、何故日本のマスコミはこうも群がるのだろう。新聞報道はまだしも、テレビは新聞が取り上げたネタの落ちこぼれを拾って歩くだけだ。芸能ネタはもともとハイエナのような仕事を本分としているから仕方ないのかもしれないが。「話さないことの権利や自由」を踏みにじるように、「知る権利」を振り回し、返事するのが当然であるような言葉で切り込む。アニータには日本のメディアなど関係ないのが理解できていない。彼女は映画づくりの、或いは離婚協議のために獄中にいる元夫に面会するために来ただけのことだ。これだけであれば、どこかの二流紙が取り上げるだけで済む。
当然、彼女の本国でも日本の過熱した報道振りは放映されるだろう。本国でもスキャンダルまみれのアニータだが、まるで凱旋将軍を迎える時のような日本の報道陣の過熱振りは、自国でも売春の斡旋疑惑まであった「汚濁まみれの女」を大歓迎する日本のマスコミの姿と映るだろう。マスコミ陣も、一体何を今さら聞こうとしたのだろう。貢がれた彼女に罪はない。時の住宅供給公社の横領を許した体質と、彼女にうつつを抜かした元夫の間抜け振りを、そして、日本の恥を地球の裏側まで広めたことを、もう一度思い起こさせようとしているのか。「日本人って、ほんとうにバカなんだよ」と。こんな恥ずかしい取材は二度として欲しくないものだ。
| 固定リンク
この記事へのコメントは終了しました。
コメント
いつも興味深く読ませて頂いています。
同感です。ゴシップを追いかけているだけのマスコミの報道には辟易としています。考えることをせずにただお祭りのように騒ぐだけで、進歩は得られるのでしょうか。全く建設的ではない。悪者探し、こきおろし、そんなのばかりですね。
投稿: まどか | 2007年2月 3日 (土) 02時23分