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2007年2月21日 (水)

‘はい’という返事

会社勤めから遠ざかって随分と経った。会社の手が離れてからは、しばらくの間、自分で手続きをしていた春の税務申告も昨年までは必要のない年齢になっていた。しかし、地方分権のあおりを喰らって、昨年から再び自分で市・県民税等の申告が必要になり、今年も昨日、市役所まで出向いて手続きを終えてきた。今年は納めた中から、いくがしかの還付金が発生した。

さて、本題に移るが、申告者のために用意された会議室は、およそ50人ほどが順番を待つためのパイプ椅子、と応対するための市役所の人たちが申告者と対面するテーブルが20卓ほどが、整然と並べられていた。担当者が前後にテーブルを置き、その前後の相談者を相手に1人で2人の相談に乗り、電卓を弾き、届け出書類への書き込みを指示し、てきぱきと処理をしていた。相談をする人たちに、若いと言える世代は見かけられない。全員が老いた男女だ。当然だが、サラリーマンは会社がすべて処理して税務署へ提出するからこういう所へ出向くことはない。いきおい年寄りだけになる。その年寄り相手だから書類への記入にも眼鏡の掛け替えを含め、必要以上に時間が懸かる。驚いたことだが担当者も、ずいぶんと根気強い応対をしている。やっと1人終えると、次を呼び掛ける。

受付で渡された受付番号を手に畏まっていた。「確定申告○○番の人」、2度、3度繰り返すが返事がない。もう1度呼ぶ。影のように静かな動きで女性が声を上げた担当者に近づく。別の担当者が続いて番号を呼ぶ。前の席の男性が黙って立ち上がって呼んでくれた担当者の前に座る。また声が上がって番号を呼ぶが、4、5回繰り返してもどこからも返事がないし、誰も立たない。この年齢になると耳の遠い人だって混じっていておかしくない。もう1度呼ばれた時、後ろの椅子がカタコト鳴って妻(だろう)に付き添って老人の夫婦が呼んだ人に近づく。すべてがこの調子だ。一種異様な雰囲気に驚いた。誰も呼ばれても返事をしない。私もそうだが、一線を退いてからは、年金だけが頼りで生活してきた。それが地方分権だかなんだか知らないが、年寄りは早く死ねと言わんばかりに、年金の中から再び高額の市・県民税の徴集が始まった。

皆一様に長年働き続けて社会のために貢献してきた年齢の人たちだ。「今さらどうして」との思いも交じる。呼ばれても‘はい’と言えないほどくたびれているのだろうか。本来呼ばれたら元気に‘はい’と返事をして人生を渡ってきた人たちの筈だ。人との繋がリに挨拶や返事の大切さは十分知っている年代の人たちのはずなのに、どうしてこうも弱々しいひとたちと映ったのだろうか。幼稚園児のような無闇に大きな声を出す必要もないのに、何だか弱々しく草臥れた人たちに見えた。そして私の番号が呼ばれた。結構大きな声だったと思う。返事してテーブルに近づいて座った。

手続き終えて帰り際に見回した会議室内は、一桁だった順番待ちの人は、50人以上に膨らんでいた。最後の人は恐らく冬の日が沈む時間になっただろう。

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