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2007年1月21日 (日)

納豆騒動

毎日新聞(1/21)から
思わず吹き出した。『関西テレビがねつ造』として、スーパーから消えた納豆のダイエット効果がまやかしであることを報じている。あさましい痩せ願望の女ごころの隙をついた番組であった。

どう考えても食べて痩せられる食品なんて、毒草くらいのものだろうに、必要以上に痩せて骸骨か針金のようになりたい人間たちが、我先にと押しかけて、店の陳列棚から納豆の姿を消し去った。哀れなものよ、と見ながら通り過ぎていたが、案の定だ。仕掛けた関西テレビは1番に悪いが、それに踊らされる知恵のない消費者が哀れで面白い。昼の帝王とあだ名される著明司会者の番組(スタジオに集まる人に男性の姿を見かけることはない、司会者の言う「昔のお嬢様たち」)が取り上げる種々の物品でも、同じような話題を提供し続けているが、人と同じでないと不安な人たちの右往左往を面白く聞いている。その極端な例が今回の納豆になっただけだ。

世の中を騒がし続けているいろいろな詐欺事件の納豆版だ。痩せたいのなら、食べないことが一番。美食に馴れ、飽食の世の中、何を食べても必ず太る。特に敗戦後の日本人は肉の魔力に取り憑かれ、体格も少しは西洋人並に脚も伸び、世界一と言われた短足も返上できる勢いだ。反面、魚や野菜を摂取しないために、それまでなかった肉食から来る病気が増えた。日本人には比較的少なかった年をとってからの肥満体の人間が街中に目立つようになった。西洋の老人が、まっ先に弱る身体の部分は、脚だ。男であれ、女であれ、沢山の老人のヨボヨボと歩く姿は何処の国、何処の街の何処を写しても溢れている。肥満した上体を支えるための脚に負担が掛かるからだ。今に、日本人もこのような体格の老人が増えるだろう。

儲かるぞ、儲かるぞ!と大喜びでメーカーはいち早く増産体制を敷き、完全に打っちゃリを喰らう結果になった。金儲けは余ほど慎重に準備しないとばかを見ることになる。日本の専門家(ナットウキナーゼ「血栓を溶かす作用がる」を発見した)の須見洋行・倉敷芸術科学大教授(食品機能学)は、日本人は1000年以上も前から納豆を日常的に食べてきたが、痩せるという作用は聞いたことがない。ものを食べているのに痩せるというのは異常なことで、そんなことがあれば身体に毒だ、と語っている。偉い学者の話を聞くこともない。食べれば太ることは前から分かっていることだ。

19日に‘子どもむけ防犯携帯’でも書いた、視聴者は宣伝に踊らないよう、もっと賢くならなければこのようなことは、これからも幾らでも起るだろう。

何事も疑うことで生きて来た私には、何事も、ちょっと待て、と考える間を取る。敗戦で学んだ知恵だ。大きくは国の施策から、小さな新聞記事まで、自分の価値基準で捕らえる。風説にも流行にも捕らわれない、流されない。多勢に無勢で言えば、多くは無勢の側になる。何処の会社にもある勢力分布でも、非力の味方を通した。別の部だが後輩の課長の中の1人に光る人材がいた。ある日、役員から将来の幹部候補を尋ねられた。その彼が将来の会社を背負って立つでしょう、と答えた。私の退職後、事実、後年その彼が代表取締役に就任した。何事もちょっと間をおいて、ぐるりと周りを見回す目を持つことが大事なことだ。勿論価値判断が下せるための自分自身の目を養う努力は惜しまないことだ。

痩せた、肥ったと別人の写真を使用したらしいが、皆はそれを信じたのだろうか。今どきコンピューターを使えば、どんな姿にでも変身は可能だ。江戸時代、街頭で‘寄ってお出で、見てお出で’とやったガマの油(薬)売りの宣伝効果と変わらない口車に乗るような消費者では、可哀想だがこれからも惑わされ続けることになるだろう。

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