いじめ調査(付 施政方針演説)
安倍の首相施政方針演説を聞いていた。始まって数分、またもや横文字の繰り返しだ、吐き気がしてチャンネルを変えた。夕刊で改めて目を通した。「教育再生」について次のように演説した。
『教育は内閣の最重要課題です。現在、いじめや子どもの自殺を始めとして、子どもたちのモラルや学ぶ意欲の低下、家庭や地域の教育力の低下といった問題が指摘されています。公共の精神や自律の精神、自分たちが生まれ育った地域や国に対する愛着愛情、道徳心、そういった価値観を今までおろそかにしてきたのではないでしょうか。こうした価値観を、しっかりと子どもたちに教えて行くことこそ、日本の将来にとって極めて重要であると考えます』と述べ、60年振りに改正した教育基本法を踏まえ『関係法律の改正案を今国会に提出し、新たに教育振興基本計画を早期に策定します。ゆとり教育を見直し、必要な授業時間を確保するとともに、学習指導要領を改定し、国語力の育成、理数教育、道徳教育の充実など、公教育の再生に取り組みます』と。
つづいていじめ問題に言及し、『いじめについては「どの学校でも、どの子にも起こりうる」という意識を持ち、教育現場においていじめ問題に正面から立ち向かうことを徹底します。いじめの早期発見、早期対応に努めるとともに、夜間、休日でも子どもの悩みや不安を受け止めることのできる電話相談を全国で実施します。放課後に子どもたちが自由に学び、遊んだり、地域の人たちとも触れあうことができるよう、「放課後子どもプラン」を全国で展開します』。
彼の頭の中には冒頭に何度も繰り替えした言葉“戦後レジーム(体制)”を大胆に見直す、という戦後体制からの脱却は、現行憲法が手枷足枷になってこれからの日本には邪魔になる、との考えで固められている。それではどうするのか、が今回の演説になった。要は明治の教育勅語の精神に還れ、だ。「公共の精神や自立の精神、地域や国に対する愛着愛情、道徳心などの価値観を教えていくことこそ・・云々」は、国民の精神構造の規範として存在した教育勅語、これに尽きる、と言っているようなものだ。これらは国が規則で規範として縛るものではない。今からちょうど半世紀も前になる。1957年、10月9日、時の戦犯総理安倍の祖父岸信介は、アメリカのNBC放送の記者と会見して「憲法9条は廃止の時」と口にした。安倍は祖父のこの言葉を遺言とでも捉えているかのように、憲法改正に政治生命を賭けようとしているかに見える。
【閑話休題】
毎日新聞(1/11、26)から
同紙1月10日、文部科学省は、いじめの実態調査を批判されていたことで、あらためて「いじめ」の定義*を示すとともに、国立・私立校も対象にする「いじめ調査」の具体的な見直しの方向性を示した。07年度(06年度分)から実施される新調査では、いじめの有無を児童・生徒の立場に立って判断することを強調する、こととし、調査対象校も公立校だけから国・私立も加えて調査範囲を広げて全国的に把握する、としている。
*文部科学省のいじめ定義
「いじめ」とは
「⒈ 自分より弱いものに対して一方的に
⒉ 身体的・心理的な攻撃を継続的に加え
⒊ 相手が深刻な苦痛を感じているもの。
なお、起った場所は学校の内外を問わない」とする。
なお、個々の行為がいじめに当るか否かの判断を表面的・形式的に行うことなく、いじめられた児童・生徒の立場に立っておこなうこと。
《これまで多くあった痴漢・セクハラ被害が、女性の訴えだけで簡単に加害者となって断罪された男性が生まれたような、一方的な被害者を生まないための歯止めはあるのか。また、学校外でのいじめを認めたとして、誰がそれをどう指導するのか、私は学校外で起ることは、学校には責任はない、という考えだ。一般社会では、外部で犯罪や事件(企業内部の問題は別)を惹起すれば企業イメージを損ねるとした処罰はあるが、企業は責任はない。学校も同じだ。学校外でのいじめには先生や教諭に責任はない。教育委員会や自治体や、世間でもない。管理監督の責任の管轄は保護者に移る。これこそ安倍が酸っぱく言う家庭教育、躾の問題になるのだ。》
文科省の通達より早く「いじめの実態調査」をした県教育委員会(埼玉県)がある。
県教育委員会が25日、速報結果をまとめた公立小中高校を対象にした「いじめ実態調査」は学校の報告ではなく、児童・生徒に直接アンケートする形式をとっている。
調査は12月11〜14日に実施。県内全域から小中高各8校を選び
小学校4年
6年
中学校2年
高校 2年 の5577人の無記名式 有効回答 5390人による
文科省のいういじめ、「一方的」や「継続的」にとらわれず、「あなたが『いじめ』と感じるものすべて」について、率直に意見を引き出そうとした。この結果
いじめられたことがあるか 全体の39・3%が ある、と答え
このうち今もいじめにあっているが10・9%と答えている。
いじめられたことがあるかの問いには
学年別 ある ない
小学4年 50・5% 49・5%
小学6年 43・3% 56・7%
中学2年 38・2% 61・8%
高校2年 34・1% 65・9%
同時に加害者になった経験を持つものも3割り〜4割りもおり、「加害者・被害者が入れ替わることもある」と分析している。いじめられていることを知り、或いはそこにいても、「何もしない」と回答したものが、中高生のおよそ3割の生徒が見て見ぬ振りをしていることも分かった。
続いては、いじめにあった時、あなたはどうするか、には
我慢するとの答えが一番多く 各学年ほぼ 50〜55%
相談した(担任には2〜3割り) 30〜40%
相手にしなかった 30〜35%
やり返した 15〜20%
目立たないようにした 10〜15%
直接相手と話し合った 10〜13%
学校を休んだ 5〜 8%
学級や部活で話し合った 3%弱
その他 5%弱
細部にわたっての分析はこれからの作業になるようだが、傾向として、文部科学省が05年度に行った調査では、県内の児童・生徒数に対するいじめの発生率は各年代で軒並み1%未満であるとされていた。しかし、今回の調査では、小学4年で、半数の子どもたちが「ある」と答えている。いじめの形態はどの年代も「悪口」が最も多く4〜6割以上だが、年齢が上がるに従い「たかり」「暴力」が減り「ひやかし」「仲間外れ」のような心理的攻撃が増加する傾向が分かった。
兎に角、子どものいじめは結果として現れる抹消の現象だ。これだけは安倍と思いを一にするが、家庭を顧みない保護者の、家庭教育を放棄した現実が原因となっている。責任を制度や学校や教師に押し付け、「学ぶこと、学ばせることが義務」の義務教育の考えが逆転しているのが、現在の親たちの考えている義務教育だ。ここのところをきっちり保護者らに理解させないと、いじめ予備軍は各家庭で年々育てられているのだ。責任を学校だけに向けている親のいるうちは、いじめは永久に後を絶たないだろう。
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コメント
マスコミの世界では、子供の世界でのいじめばかりが取り上げられていますが何故でしょうかね?大人の世界だっていじめはあるのに。
むしろ、大人の場合は、家族に対する責任もあり、逃げ場が無いだけより深刻な結末を迎えるケースだってあります。そうした事実を隠蔽しておいて、子供にばかり「いじめはいけないよ」「いじめをなくそう」などときれい事を言ったって、「何だ。大人はウソつきじゃないか」と思われるだけ。全然説得力がありません。
「子は親の鏡」。子供に「いじめを無くそう」と言うなら、まず大人の世界で行われているこういう酷いことを無くすべきなんじゃないでしょうか?
http://nomoreijime.web.fc2.com/shousetu-mokuji.htm
この物語はフィクションということになっていますが…、よく読んでみてください。(ちょっと長くて面倒ですが)そして、こういう会社の商品を買うべきかどうか、よく考えてみて下さい。
皆さんがきちんと正しい判断をすることが、こういう暴力を行えば、社会から非難されるのだと言うことをこういう会社に教えてあげることが、大人の世界でも、子供の世界でもいじめをなくしていくことにつながるのです。
この物語を他の人たちにも教えてあげてください。
http://nomoreijime.web.fc2.com/shousetu-mokuji.htm
投稿: YOKO | 2007年1月30日 (火) 22時32分