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2007年1月 6日 (土)

脳死移植

昨年12月17日、臓器移植法*に基づく50例目の脳死臓器移植が、大阪府吹田市の国立循環器センターなどで行われた。17日、高知市の赤十字病院に入院中の成人女性が臓器移法に基づく脳死と判定され、本人が臓器提供の意思を示すカードを持ち、家族も同意したことで行われたものだ。昨年1年間の脳死移植は10例目になり、97年10月に同法が施行されてから年間での移植が最多となった。女性は意思カードで、提供を希望する臓器として心臓、肺、肝臓、腎臓、膵臓に◯をつけていた。提供された臓器は、心臓の移植が行われた国立センターのほか、片肺、肝臓、膵臓と片方の腎臓は東北大病院(仙台市)、もう片方の腎臓は岡山大病院(岡山市)で移植。もう一方の片肺は医学的理由で断念した。

 臓器移植法* 議員立法で97年6月成立、同10月施行。移植のために臓器を提供する場合に限り脳死を人の死と定めたほか、基本的理念として提供意思の尊重、臓器提供の任意性、移植機会の公平性などが盛られた。提供可能なのは15歳以上で、提供意思は書面で表示していた場合に限られる。
(同法に基づき99年2月、1例目の脳死判定が下されたのは、51例目になった同じ高知赤十字病院であった。)

日本臓器移植ネットワークによると、同ネットに登録している移植希望者は、延べ、12,303人(06年11月末現在)。登録開始以降の総数は30,747人に上る。また、法施行後、50人からの臓器提供による移植を受けた患者は計192人で、臓器別では同時移植の重複を含め、腎臓82人、心臓39人、肝臓35人、肺、膵臓各30人、小腸1人となっている。99年2月の脳死移植1例目で心臓移植手術を受けた50歳代の男性は、自分が手術を受けた当初は、法が施行されて多くの人が移植を受けられると思っていたが、実際には進まない現実を「まだ50例目か」と話す。

臓器提供の意思表示カードやシールの配布枚数は昨年11月末には計1億3700万枚を超え、健康保険証に意思表示欄を設けるケースも増えているという。しかし、このような運用面の工夫にも拘わらず、臓器提供は増加傾向にあるとは言えない。大久保通方・日本移植者協議会理事長は「移植を待つ患者、家族から見れば少な過ぎるというのが実感。1人1人が自分自身や家族が移植が必要になったらと考え、法改正するしかない」と話す。

言うことは尤もなことだ。しかし、身内の不幸と他人とは全く違う。家族のためなら命も捨てられる。しかし、赤の他人に死んだ後でも身を削るつもりはない。医学は心臓移植という神の領域にまで手を染め、博愛を押し付けようとしている。動物世界を眺めれば簡単に理解できる。病弱な動物は淘汰されるのが必定だ。人間も等しくみな動物として生を享けている。生きるも死ぬも神のみぞ知る、だ。

毎日新聞1月1日朝刊が、「2チャンネル」を取り上げた。1億円以上の募金を集め、日本では、12,303人のうち何人が心臓移植を待っているのか知らないが、その待っている人たちを飛び越えて、アメリカに渡り、早々と移植を受けようとする4歳女児への中傷の書き込みを取り上げたものだ。それは、昨年9月22日、新聞各紙に「さくらちゃんを救う会」の募金活動の記事が掲載されたことから始まったらしい。「また死ぬ死ぬ詐欺ですかw」。「w」は笑いの意味だそうだ。父親がつとに悪名高いNHKの職員だと分かって一層拍車が掛かる。「高給取りを隠して同情を買おうなんて詐欺だな」、「騙されて募金したので返してほしい」、「家を売ればいい」などが続いたらしい。

ここのところ格差社会が問題になり、富めるものと貧するものとの差は、政治の貧困も加わって益々顕著になっている。世界でも貧しいものの富めるものへの妬みは社会主義思想をも生み出した。そして革命から1つの国家を創ったが七十年の短い歴史を刻んで潰(つい)え去った。所謂左翼思想をアカと呼ぶ思想団体は日本人が忌み嫌う一つだが、日の当らない層に所属する日本人の多くは、その嫌うはずの思想の根源、富めるものへの反感は一様に心の底では持っている。それが今度の「2チャンネル」事件として報道されることになっただけだ。

毎日新聞の取材に「2チャンネル」の管理人、ひろゆき氏は「ネットの仕組みだから仕方ない」と答え、規制は難しいとする認識を示した。取材の中の会話の幾つかには次のようなものがある。匿名性の良さについて「例えば安倍首相が実名で掲示板に書き込んだら議論どころではなくなる。純粋に議論するのなら、人格はないほうがし易い」「中傷を面白がる人間の本質は変えるべきだと思うが、仕組みとしては無理。それができたらノーベル賞が取れる」。或いは誤った情報が独り歩きすることについては「既存のメディアが『冤罪報道』をした松本サリン事件と一緒。ただネットの方が間違う可能性は高いと思う。ネットはうさん臭いもので良い。大事なのは使い方を教育すること」そして、情報はいろいろあるから面白い、中傷は国民性の問題だという。

今、私の手許に1通の封書がある。日本ユニセフ協会からのもの、中には数枚の書類と振込み用紙。書類の1枚にはこのように書かれ、付箋の付いたものも混じっている。○○ ○○様 この手紙を開け、ここまで目を通された間にも、世界のどこかで栄養不良や病気のために命を落としている子どもたちがいるということ ─ わずか10秒の間に3人の幼い命が失われていること ─ を知っていただければと思います。そして、付箋のメモには「たとえば3000円で458人の子どもの命を救う方法があります。」と書いてある。

1億円も使えれば、何人の子どもが救えるか。同じ命を救うのなら、私はユニセフを選ぶ。

参照「臓器移植」06/05/30

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