風力発電機倒壊だけではない
青森県東通村岩屋の風力発電施設「岩屋ウインドファーム」で8日夜、高さ約68メートルの風力発電機1基(出力1300キロワット)が基部のところから倒壊していたことが分かった。同施設を運営する事業会社「ユーラスエナジー岩屋」(本社・同村)によると、8日午後9時55分ごろに停電があったため、東北電力が点検したところ、25基あるうちの1基が倒壊しているのが見つかった。
当日は強風が吹いた記録はなく同社は現時点では「原因はわからない。うちの風力発電機が倒壊したのは初めて」と話している。同施設は01年11月操業。風力発電機は風速60メートルに耐えられる設計になっているという。原子力安全・保安院によると、事故機はデンマークの風力発電機メーカー「ボーナス」社(04年にドイツの「シーメンス」社が買収)で製造されたものである。倒壊の事故の報告を受けて、原子力安全・保安院は10日、職員2人を現地に派遣し事故原因を調査する。
風力発電機には風を受けてブレード(羽)に回転力を与える方法に二通りあって、風の吹いて来る方向を自動的に感知してその方向にナセル(頭頂部)を向けるものと、その部分を電気で回転させ、ブレードを効率良く受けられるようにコントロールするものとがある。たまたま同施設は後者のタイプであったが停電中で、風の方向へブレードを向けさせるための通電は、停電のために流れていなかった。例えば、風を正面から受けられず、横から受けたとしても、気象台のデータでは当日の瞬間風速は同位置で7メートル程度、強風と呼べるものではなかった。風速60メートルに耐えるからには、その許容範囲には十分な余裕がある。同じく設計上の耐用年数も20年といわれ、老朽化したものでもない。調査の結果を待つだけのようだ。
青森で起る以前、日本には風力発電機の倒壊・破損事故が発生したことがあった。2003年9月、颱風14号が沖縄県宮古島を襲った時だ。この時の風速は70メートル、25基ある風力発電機のうち倒壊したのが3基、ブレードの破損が2基、ナセルの損傷が1基発生している。この宮古島の事故を受け、保安院では耐風設計強度の見直しの検討会を重ねている最中であった。
問題は風力発電機に限らない。高度成長期の1950年〜70年代、アメリカにほぼ30年遅れて急ピッチで建設された全国の道路に架かった橋梁が、21世紀に入って急速に「高齢化」しているのだ。50年という期間で道路の損傷が目立ち、改修を必要とするケースが増えて来るとされる目安でもある。かつてアメリカ全土で80年代に交通インフラの崩壊が目立ち、荒廃するアメリカの象徴とまで表された時代があった。
高度成長期に建設された橋梁は、旧設計基準に基づいて設計されたため、床板が薄く、鉄筋量も少ないと推定されている。また海岸に沿って走る道路では塩害の影響を強く受け、鋼材の錆も目立っている。鉄道に代わる輸送手段は激しい大型貨物車の通行で、定期的な整備を行っても橋桁の亀裂は生じ易い。04年度の国のまとめでも、国管理の橋梁9400橋のうち約2500橋で、点検の結果、緊急対策が必要とされた。国交省道路局は「大きな損傷になる前に、定期的、丁寧に修繕をすれば、100年でも健全な状況を保てる」と、重要性を説明している。
政府のおっしゃる100年が眉唾であっても、何事も「その時点では私は担当ではありませんでした」で誰1人責任は取らないのが我が国のお役所仕事だが、問題であるとの認識は持っていてもらわないと、国民が事故の悲劇にあう危険性がなくならない。
まだある、マンションの耐震問題で湧いた昨年だが、そのマンションのスラム(貧民窟)化が進んでいる。全国のマンションストックはすでに500万戸近くに達し、およそ1000万人が暮らしているが、今後はこれらの老朽化が急速に進展して行く。マンションに住むことのメリットは、居住空間の安全性と、連帯意識が薄くなった現代人の、人との関わりのない安心感にあると思われる。分譲マンションは昭和40年代後半から本格化し、年々その数を増やして来た。それ以前はごく僅かな数だったが、昭和46年ごろから急激に増え出した。その後もマンション市場は大きな需要期を迎え、大量に建てられて行った。そのつけが今になって来たもので、不適格な高齢マンションが数多く出現するようになった。10年後には全国で100万戸近い高齢化マンションが出現すると見られている。
昭和45年以前に建てられて、築後30年以上を超えるマンションは4〜5階の中層が最も多く、古いマンションほど団地型とみられる。空き家の割合も高くなっており、エレベーターの設置率も低く、バリアフリーになっておらず、住む人の高齢化に適さない建物になっている。建物が古ければ古いほど空き家率が高く、歯抜け常置のマンションも増えている。マンションのスラム化は建物自体以上に人が住まなくなった時から急激に進む。空き家が増えると次には当然管理費が不足する状態が来る。管理や修繕ができなくなる、その先にはスラム化がやってくる。オクションとよばれる建物でも、鉄とコンクリートで作っている以上は必ず耐用年数の限界はある。せいぜい50〜60、よくても70年だろう。ちょっと恐ろしい話だが、マンションのスラム化は必ず来るし、これからは加速度的にそれはやってくるのは間違いない。
風力発電機の倒壊から話は広がったが、日頃頭に引っ掛かっていた懸念を文字にしてみた。
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