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2007年1月 7日 (日)

携帯電話

携帯嫌いの私は持っていないが、殆ど利用しないで通信費だけは払い続けている妻が、今まで持っていた電話会社が近々サービスを停止することになるため、機種の変更をするのに手続きに立ち会った。これまでにも外出先から掛けて来て、固定電話の明瞭な声に比べ、デジタルの聞き取りにくいいらいらする交信には我慢ならない思いをしたことがあった。以来二度と出先からは携帯で掛けて来ないように言ってからは、公衆電話以外は交信していない。妻も自分から所望して手にしたものではなく、長男からのプレゼントであったため、捨てることもできないままで、充電を繰り返し、通信費だけは毎月支払っていた。

今回も、わざわざ機種変更までして所持する必要もないのに、捨てたくない、と更新をした。テンキーだけ並んだ簡単なものがあったが、気に食わず、カメラ機能だけは付いたものにしたが、無用となるだろう。デジタルカメラも長男からのプレゼントだが、その前にプレゼントされていたフィルム使用のカメラがお気に入りで、未だにフィルムの銀塩写真だけをせっせと利用している。確かに仕上がりはデジタルよりも数段は上の品質に仕上がる。わざわざ携帯で品質の悪い写真を撮ることもないだろう。

今まで全く携帯の情報に疎いままで来たが、先日の毎日新聞で目にした記事には吃驚した。「携帯端末、世界の壁」日本10社でシェア8・8%とあった。円グラフも載っている。クレジットの決済機能やワンセグ放送、音楽ダウンロードなど高機能化が進む日本の携帯電話に関する情報は、しばしば耳にもするし、テレビでも目にする。当然世界の中でも大きくシェアを広げているものと思っていた。しかし、日本メーカーの世界における販売シェアは10社合計で8・8%に低迷しており、欧米や韓国の企業に大きく水をあけられているという。この現状を打開し、世界に通用する産業にしようという論議が政府内で活発化し始めたらしい。ただ、日本と海外の携帯電話会社のビジネスモデルの違いも根底にあって、簡単ではなさそうだ。

総務省によると、携帯電話端末の05年のシェアは
 フィンランドのノキアが    33・5% で首位
 米モトローラが        18・8%
 韓国(サムスン・LGの2社) 19・9%
 日本(10社)         8・8%
 スウェーデン         6・4%
 その他            12・6%
となっており、日本は10社併せてもサムスン電子の単独12・9%にも及ばない。

昨年10月の菅総務相の私的懇談会「ICT国際競争力懇談会」の初会合でメンバーの1人が「海外は音声主体の安い端末が中心。高機能端末が売れる日本とは違う」と問題の根深さを指摘した。

《文化面の価値観の違いは携帯電話に始まらない。30〜40年前にも言われたことだが、カラー写真が一般家庭に普及した頃、西洋の写真に対する評価と、日本人の評価には根本的に大きなに差があった。西洋での写真の見方はあくまでも写真本来の写っている風景であれ、人間であれ、現実(或いは事象)の瞬間や時間が切り取られ、定着していれば、色彩の芸術的レベルは2の次であった。それに比べ、日本人は写真は美しくなければ満足しなかった。結婚式、花嫁、花、景色、誕生した赤子であれ、すべて写真は美しく仕上がっていなければ及第点としなかった。芸術の先進国で美術を学ぶためには遊学の憧れの地であったフランスで仕上がるカラー写真も、例外なく日本のカラー写真と比べると、嘘のように見劣りする仕上がりでユーザーの手に渡されていた。私自身のヨーロッパ各地の現地の市場調査からだが》

《それから数十年経過した。西洋はそのままで、日本人が西洋化されて行った。写真は事象が写されいればほぼ満足し、色再現が少々悪くても、解像度が悪くてもデジタル写真に慣らされて行った。銀塩写真の美しさも稀少価値でしかなくなった。ゲームセンターに置かれ、頭を突っ込んでピースで写る玩具のような写真でも満足するほど美的センスが低下した。それが携帯電話に付け加えられた。複合商品として次の抱き合わせを開発する方では音楽に目をつけた。音も同じような道を辿っていた。じっくりと鑑賞する音楽が消え、喚き立て、叫び、爆音が轟く音の洪水になった音楽には、音質は不要のものだった。レコードからCD、MDへとどんどん音質が低下して行った。若者たちは音質よりもその簡便性に価値を見い出した。だから簡単に音を無視した携帯電話に組み込まれた。現在は、その悪い音質を少しでも改善しようと取り組んでいるようだが。》

《上の懇談会出席者の発言のように、日本の携帯電話を「高機能機」だから世界の競争力への参加を危ぶむ発言は、ひとりよがりのもので、「高機能」との考えは、世界では差ほど必要とされない要らない機能が余分にくっついているだけのこと、との認識がない。開発者のユーザーを考えない自己満足で生み出されたものに過ぎないのだ。あれもできる、これもできる、ではすべて虻蜂取らずの中途半端なものになるだけだ。それを「高機能機」と嘯(うそぶ)いてみても単なる複合商品であるに過ぎない。電話機としての機能さえ持っていれば、不作法、無礼なカメラ代わりの使い方もしないで済むし、ディスプレイから顔も上げないで話す無礼もなくなる。》

日本の携帯電話契約者数は昨年11月末で約9400万件と世界第4位の市場だが、市場は飽和状態でメーカーの採算も悪化している。「成熟した国内市場に目を向け過ぎた結果」との批判もある。しかし、問題は高機能化だけではなく、菅総務相は「携帯電話の1円販売はビジネスモデルがおかしい」と指摘する。本体価格4〜5万円の端末を1円で売る販売代理店もあるが、この安売りが可能なのは、電話会社が代理店に支払う1台3万円前後の販売奨励金のおかげだ。代理店はこの奨励金を原資に、仕入れ値よりも安く端末を販売する。結局、奨励金は利用者の月々の基本料や通話料に転嫁される仕組みだ。日本の割高な携帯電話料金の原因がここにもある。

この奨励金による値引き販売は国内市場の拡大に貢献したが、市場の飽和を生むことになり、買い換え需要が減り、安売りをしても販売の延びが期待できなくなる。総務省の懇談会の議論は、規制緩和や法人税優選などでノキアを後押ししたフィンランド政府にならい「官民一体の欧米式セールス」で模索するようだ。

《それもいいだろうが、くっつけ過ぎた余計なものを削ぎ落とし、電話機本来の機能をもう1度見直して掛かることの方が大事ではないのか。》

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