学校給食費不払い 22億円に
何回かこの問題は取り上げて来た。
遂に給食費の不払いによる総額が、22億円に嵩(かさ)ばった。食費を納めないで支払った家庭の子と同じように自分の子どもに昼食を食べさせている親がいるということになる。義務教育だから給食費は納めなくてもよい、或いは支払っていれば、いただきます、は言わなくてもよい、と主張する親もいて昨年は問題になった。充分な献立を提供するだけの給食費が集まらず、校長が献立が粗末になることを見かねて、自腹を切る学校も発生した。
日本で学校給食が始まったのは明治時代に遡るが、現在のような仕組みになったのは第2時大戦後のことである。敗戦で食べるものも底を尽き、子どもに弁当を持参させることの出来ない家庭がたくさんあった。昼時になって上手そうに食べる友だちの食事風景に耐えられない子供達が、空腹のまま外で遊ぶか、動けば減る腹を抱えたまま午後の授業を受けていた。
時代は今、飽食と云われ、子どもたちも自宅の我侭に馴れて、好き嫌いが顕著になり、必ずしも給食を美味しく食べている訳ではない。戦後の時代から一変して同じものを皆と同じに食べる、ということから、法によって現在では栄養や食習慣、食事マナーを学ばせるだけではなく、社交性や人間関係といったことの育成までも含めて学ばせようとしている。海外の学校にも給食制度をもつ国(オーストラリア、アメリカ、ブラジル、ネパールや台湾、韓国など)はあるようだが、単に昼食の便宜をはかっているだけで、日本の学校給食のような「教育」の一環としては位置付けられてはいないようだ。
【閑話休題】
毎日新聞(1/25)から
給食を提供している全国の小中学校で05年度、給食費の未納額が計22億2963万円に上ることが24日、文部科学省の初めての実態調査で分かった。未納者総数は全体の1%にあたる9万8993人で、回答した学校の6割が「保護者の責任感や規範意識」の欠如が主な原因と認識した。また、「保護者の経済的な問題」を原因に挙げた学校も33・1%あった、という。
調査の対象は(給食を提供している)、各界などで給食費の未納が増加しているという指摘を受けて調査した。
国公私立の小中学校計3万1921校、1003万3348人
うち未納の小中学校 1万3907校(43・6%)
(未納の児童・生徒の割合:都道府県別)
沖縄県 6・3%
北海道 2・4%
宮城県 1・9%
因にゼロとした自治体はなかった。
これらのことに対して各学校の対応は(複数回答)
① 電話などでの説明・督促 1万3493校
② 家庭訪問での説明・督促 7691校
③ 支払いを求める法的措置 281校
♦未納分を補填せず徴集できた給食費で賄っている学校が4025校と最も多く、学校や教育委員会の予算から補填している学校もあるという。
学校給食法では「施設設備費や人件費以外の食材費等は保護者が負担する」などと定められている。ただし、経済的な理由で支払えない家庭には、就学援助制度や生活保護の教育扶助による給食費の給付制度がある。特に未納の割合が高い沖縄や北海道には地域経済の問題もあるのではないか、と見られている。
この調査で、給食費を滞納している保護者が児童・生徒100人あたりに1人いる実態が初めて浮かんだ。文科省のまとめでは05年度の月額給食費は公立小学校約3900円、中学校約4500円となった。学校現場からは、不況や貧困など経済的な問題を背景にした「払えない」だけではなく「払わない」ケースが多いとの声も洩れて来る。
自治体によっては保護者の給与の差し押え、滞納時の給食の一時停止、悪質な不払いをする保護者の該当者名の公表など、法的な措置を講じているところもある。広島県呉市の例では11〜29ヶ月分の支払いに応じなかった2世帯に対し、簡裁に申し立てたが、簡裁からの督促にさえ応じなかったため、市は保護者の給与を強制執行で差し押さえ、訴訟費用も含め計20万円を徴集したケースも発生している。別の1世帯についても近く差し押さえる予定であるという。また、自治体によっては全国に先駆けて03年度末から法的手段を使った回収策に乗り出した岩手県滝沢村おようなところもある。しかし、全ての保護者が支払ったわけではない。その後も村全体の未納額は03年度780万円、04年度880万円、05年度830万円と減少してはいない。
先に挙げたように生活保護による教育扶助を受け取りながら、学校に支払わない保護者のケースもあり、これからは問題のある保護者の場合には、学校長に直接交付することも制度上は可能なことだとしている。
ある公立小学校の担任教諭は「知っている児童のケースでも、未納者は生活が苦しい家庭であることは確かだ。でも、当事者の子どもは『携帯型のゲーム機を買ってもらった』『カラオケに行った』などと話しており、約4000円の給食費が払えないわけがない。払わなくても給食は食べられるから、まっ先に払おうとしないのではないか」と憤る。東京都足立区の男性教諭(57)は「お金がなくても、やり繰りして子どもをピシッと育てるという意識の欠けた親が出て来ている。経済的な余裕のなさで、精神的にも追い詰められているのではないか」と、現在の背景について語った。
敗戦後に生まれたもので、時代にそぐわなくなったものに、成人式を挙げたが、学校給食ももう必要のないものになった気がする。生きて行くのも辛かった敗戦後の時代に、ユネスコに助けられ、献立も貧しく美味しくはなかったが、生き延びることができた世代から見ると、今の世の中、限り無いほどの贅沢になった。弁当持参が出来ない貧しい子の多かった時代ではもうない。制度としての学校給食は廃止してもいい。
私の少年時代、長い間2歳〜3歳違いの兄妹を学校に送りだす母は、梅干し一つ、沢庵2、3切れの弁当を3人に持たせ、送りだしてくれた。敗戦時中学生だった私の下には未だ生まれていなかった末弟まで、ほとんど3人づつが小学校に在籍し、弁当を必要とした。暗いうちから起きた母は、何年も毎日毎日弁当を作ってくれた。時代は変わったが、弁当は母の手作りが何よりも旨いはず。子だくさんの家庭はそう多くない現在、弁当を作ることぐらい簡単なことだろう。
或いは給食制度の廃止がないのなら、給食費を払わない保護者の子には、給食は食べさせなければいい。それが、例えば‘いじめ’と思うなら、保護者は給食費を払えば簡単に解決する。払わないのは自由だが、それは‘食べられない’ということでその責任を取ることになるのだ。自由の本質とは責任ということなのだから。
参照「“いただきます”」06/01/22
参照「欠食児童」06/05/22
参照「食習慣が壊れている」- 2 - 06/09/25
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