幼稚園化する大学
毎日新聞(12/4)から
人口の大きな塊(かたまり)《驚いたことに団塊をダンコンと読むレベルの人間が多くて困るが、ダンカイと読むんだからね。因にコンの字は魂(たましい)と書くが、そんな熟語はない、違いが分かるかな。》が時代を次々にうつろい行き、少子化が叫ばれて久しい。淘汰が始まる大学で、笑えない話が今、起っているようだ。
チラシの写真が記事の中にある。イラスト混じりの下段には、茶髪に紺のブレザー、スカートの女子学生風の女が「待っているので 是非来てね!!」と両手を広げている。その上に、特に太字で書かれた4行ほどの文もある。
授業の事で相談があります。
いちどセンターに顔を出してください。
来週、必ずセンターにこの紙を持ってきてください。
その時、一緒に相談しましょう。
小学校ではないのだ、れっきとした大学からの通知だ。その名も日本工業大から学生に送られるものだ。大学生に宛て、通知書を‘紙’と記して送りつける。紙には違いないが、正式の通達文書だ、
一体何が起っているのだろう。
若い女性職員が棚の引出しに重なる約60枚のファイルの中から1枚を取り出し、電話を掛けた。留守電になっていた相手に留守録を入れる。「確認したいことがありまーす。一度顔を出してくださいね」。その近くの女性教員が男子学生と話し中「学校に来ないでどこに行ってるの」「ゲームセンター。メダルがなくなるまで遊ぶんす」教員はその学生のファイルにメモを挟む。埼玉県宮代町にある日本工業大の「学修支援センター」で、毎日のように繰り広げられている光景だそうだ。
まるで精気も覇気もない連中相手の仕事だが、同センターは昨年4月、学習だけでなく生活面まで学生をサポートする目的で設置された。《ということだが、はっきり言えば、面倒を見ない親に代わり、親代わりをしてやるおせっかいな仕事だ》教員3人、職員2人が約4800人の全学生の授業への出席状況を常時調査している。特定の講議を3回連続で休んだ学生を電話や手紙で呼び出すことにしているとか。その際心掛けているのは「絶対に怒らないこと」なんだそうだ。家族の、或いは家庭の崩壊はここまで進んでいるのだ。生活の基礎の基礎が躾けられていない。甘やかされ、叱ってももらえず、産んだままの放任状態だ。
放っておけば97年度の3%が00年度には5%まで上がった退学率に拍車がかかることになり、大学経営にも支障を来たすことになる。有賀幸則センター長は「休みがちな学生がそのまま退学してしまう。見過ごすわけにはいかなかった」と説明している。が、頭数の減少はそのまま収入の減少であり、放置すれば経営手腕を問われる危機状況に陥ることになる。世間体は構わない、大学が幼稚園になってもそれだけは防止しなければならない。何が何でも退学する学生を減らさなきゃ、ということだ。
朝起きられない特定の学生には女性職員が1、2時限目の30分前にモーニングコールをし、教員がメールを送ることもある、という。学内からも「そこまで必要なのか」との声もあるが、有賀氏は「学生を育てて社会に出すことも大学の使命。私たちの仕事は学生が自分で一歩を踏み出すまでのサポート」と語っている。《こんなことまでして卒業させても、社会に出て役に立つ人間には到底育つまい。企業に入っても足手纏いになるだけだ。企業では生活面の、手取り、足取りまで面倒見てくれる人はいない、というよりも、個人情報保護の精神から、他人への口出しは、これ幸いと、ヨコ文字好きの言うハラスメントとして伝家の宝刀宜しく逆に訴えられかねない。企業では、朝起きられなかろうと、遅刻しようと、度重ねれば無用の者となるだけだ。せいぜいニートかフリーターになるのが精一杯だろう。まるで幼稚園児がパンツを履かせてもらうレベルだ。》
昨年12月、センターはどうしても連絡が取れない学生約30人にクリスマスカードを郵送したという。「見守っている」との思いを届けたいからだ。返信は一つもなかった。それでも今年もカードを送る準備を進めているとか。《よくもこんな無駄なバカなことをするもんだ。したところで感謝する連中でも、有り難がる連中でも、気に掛ける連中でもさらさらないだろう。その程度の常識でも備えていれば、元々それこそ普通の人間で生活して来たろう。》
他の大学でも似たり寄ったりの対応を求められている。横浜市の関東学院大学が04年4月に設置した「学生支援室」。対象は基礎学力の不足を補うため。支援室の誕生を山崎浩一室長は「AO(アドミッション・オフィス)入試で受験の多様化が生まれ、学力差が出るようになった。授業についていけない学生の引き上げの問題が生まれた」という。面接や小論文だけで選考するAO入試は人物重視になるが、推薦、AO組の増加とともに中途退学者が増えたという。同大学・工学部では03年度は1〜3年生で137人、5・4パーセントを占めた。「どこの大学でも同じだが、退学されたら経営に響く」と。支援室を設置した2年目の05年度は69人、3・2パーセントに減ったという。
少子化で減る学生をいち早く確保しようと大学間の争奪戦が激しくなり、一般入試を経ないで入学する学生が増えている。06年度の国公私立大の入学者のうち35・6パーセントが推薦入試。AO入試の5・9パーセントを含めると、4割以上が一般入試を受けない。かつての「受験競争」が霞んでいる。
《お出でお出で、で迎えてくれる大学。お寝坊さんでも起して上げるから遠慮はいらないよ。なんなら家やお部屋までお迎えに行きましょうか?とまでなるのではないか。何をしたところで絶対数の足りない頭数。やることすべては小手先の技だ。必ず破綻することが見えている。それりも、抜本的な政治絡みの対策が必要だろう。何せ散々言って来ているように、大学の数が圧倒的に多過ぎるのだから。半分はなくてもいい数だ。頭数、授業料、だけを基準にした経営面の対応ではいずれ限界がある。
できれば先に慶応義塾が取ったような、合併策もその一つであろう。安倍晋三も教育の再生を図りたいのなら、いじめや、小中高だけではなく、今後の日本を左右する人材を育てるためには、怠惰な若者を甘やかすのではなく、自ら進んで勉学に励まねばならない厳しい環境づくりこそ検討するべきだろう。》
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コメント
初めまして。名目偏差値50強の大学で教えております。
記事の内容は、要するに大学が多すぎる、ということですね。
心理カウンセラーの話では、最近多い悩みは、不本意就学つまり
そもそも大学へ行くつもりが無かったのに進学してしまった、
と言う悩みだそうです。
昨年教えた一年生で、将来消防士になりたいという子がいました。
本当は高卒でなっても良かったのが、クラブ活動をやりすぎて
公務員試験の準備が出来ず、進学したのだそうです。
まさに大学全入時代です。
投稿: taka | 2006年12月 4日 (月) 23時06分