「職安」の窓口手当て
「職安」職業安定所のことだが、これが現在言われている非常にお目出度い名前の「ハローワーク」、何故このように呼び方をつけたのかは分からないが、これもわざわざ括弧つきで説明が付く早い時期にカタカナ語になった言葉だ。たしか1980年代までは普通に「職安」で通っていた。そのころの企業はまだ55歳定年制が多く、大企業の60歳定年制の導入が話題になった頃だ。
私も失業保険を貰いながら2度目の就職先を探していた。今と違って毎週一回の職安への顔出しが決められていた。顔を出さないと保険金の支給は下りなかった。それに顔出しの時間は一定ではない、毎週時間が変更された。保険金の受給をしながら一方で働く不正受給者を選別するために考えられた細工だった。支給金額は当然日割りの一週間分であった。途中何度か求職者へ希望の仕事を職安が紹介してくれた。理由なく断わると働く意志なしとして給付が止められた。当時の職安はこのように殺伐とした場所であった。
それから20年近く経過した。名前もハローワークが通称となり、週一の顔出しも必要ない簡便化されたものになり、毎週一度は対応していた失業者とはそれまでの4分の1の一ヶ月に一回に減り、窓口はコンピューターが導入され、個人も各自のパソコンや携帯での求人検索が可能になり、一段と職を求めて窓口に来る人との対応は負担の軽い業務の職場になっていると思う。しかし、ここ職安で働く職員に対し、給料を上乗せするシステムがずっと引き続き行われいたようだ。いわゆる「窓口手当」だが、人事院は「時代にそぐわない」として直接職業紹介にあたる職員、失業保険の業務に関係する職員、一部の所長、次長が対象となっている「調整額*」の廃止を、一方厚労省は従来からの主旨どおり「失業者に対するため、精神的緊張が極めて強い」ことを理由に存続を求め、お互い駆け引きに激しさを増しているという。
*調整額・・「一般職の職員の給与に関する法律」に基づいて人事院が規則(俸給の調整額)で定めている。廃止されたところもあるが、現在は職安、海上保安庁の巡視船任務、国立の障害者施設の職員、保護観察官などに適用されている。因に「職安」の一人当りの全国平均は約1万円、毎月約1億円が支出されている。
先に見たとおり、職安の窓口に来る人数は本当に大変であった当時に比べると、仕事量やその精神的負担など、ないに等しいほど軽減されている。失業者を厚労省がいう「精神的、情緒的に不安定な者が多く、さらに酒気帯び、狂暴性を有する者もあり・・・」ような職を求めて来る人たちを、精神病患者や飲んべえなど、ならず者集団か何かの如き発言は、失業者への愚弄としか思えない。1980年代の6ヶ月間通った職安の所内で、その間、ただの1人も酒気帯びの人を見たこともないし、声高に所員と話す人に逢ったこともない。確かに世相の移り変わりは激しいが、窓口にどのような人が来ようと、職安に限らない、どこでも、どの企業でも誠心誠意対応するのは当たり前のことだ。今となっては不要の手当てでしかない。
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