関西科学大新設は無理
毎日新聞(12/18)が、学校法人「奈良学園」(奈良県大和高田市)が来春、奈良市に設立を予定していた関西科学大の開学が頓挫したことを報じた。理由は11月の文科省への認可申請に虚偽があったとして中止を命じたものだ。ところが、同学園は事前に全国の185の高校から261人の指定校推薦を受けていたことで、内定を決めていた高校生が入学先を失うことになり、トラブルが広がっている。
どう見ても、現在の少子化の中で、毎年、毎年続く大学の新設、学部の増設は道理に合わない。何度も書いてきたが、疾うに学校余り現象は何年も前から始まっているはずだ。関西科学大は近畿初のスポーツ科学部(定員200人)と、看護学部(同120人)の開設を予定していたというが、この先一層少子化が進むことを考えれば、学部はすでに各地に存在しており、事新たに函ものを新設までして造らなければならなかった大学でもないだろう。それよりも問題は学生の青田買いだ。認可の下りていない期間での募集がそもそものルール違反だった。
少子化といわれながらも大学や新学部の設立は相次いでいる。ここ5年間で56校が新設され、平成19年度には過去最多の566校となる予定だ。「新設のメリットなんてない。だが新しいもので生徒を引き付けないと、学校法人自体がつぶれてしまう」とは北陸地方のある学長の溜め息まじりの言葉だ。
<18年7月末までに文部科学省から発表された19年度に新・増設が予定されている大学・学部・学科>
新設大学 11件(全私立)
私立大の学部増設が早大(基幹理工・創造理工・先進理工(従来の理工を再編)を始めとして40大学56学部等。
私立大の学科増設が60大学67学部88学科となっている。
(旺文社パスナビ)から
新設大学、増設学部・学科のそれぞれの定員の合計は約32000人弱になる。少子化の中からこれだけの学生の確保が約束されないと、全ては絵に描いた餅になる。学生集めが過熱するのも避けられない。定員の半分までとするガイドラインも無視された推薦入学者数にAO(アドミッション・オフィス)、学生の青田買いも激しくなる。勉強もそこそこにしておけば、一般入試で苦労しなくても大学くらいは誰でも入れるようになった。
問題は別の面からも検討されなければならない。学校を増やし、時代が求めるとは言いながら、目新しい学部、学科が増えることは、一般企業で言う少量多品種の質の高さをどう維持するかがポイントになる。大学で言えば教授陣の充実だ。それほど教授陣の層は豊富に生まれているのだろうか。増設の学部も学科も極めて高い専門性が求められることは必定なのに。皮肉な見方をすれば、年々小児化する大学生、最高の知者でなくとも楽に相手にできるか。今日の新聞記事、東大の学生の3割(数字のマジックが隠されている。総数はたった3534人の30%)が、いずれはニートかフリーターかと将来を心配しているという。無気力だけとは言えないが、ノンポリ組みであることは確かだ。相手はこのレベルなんだろう。
関西科学大の入学内定を決めていた261人、どのような収拾の道があるのだろうか。それにしても、淘汰の声が聞かれる中、競争激化による際限のない拡大政策で、増加の方向だけにしか目の行かないとは。今年よりも来年、来年よりも再来年と、更に少子化は進む、その都度学校を増やし、学部・学科を増やして行くつもりだろうか。この浅はかな対策の愚に、いつ、誰が気づくのだろうか。
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