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2006年12月 2日 (土)

いじめ緊急提言

毎日新聞は社説(11/30)で緊急提言を述べている。
再生会議は、「社会全体に対する決意表明」社会のあらゆる分野で総力を挙げて問題に取り組む意思と構えを共有したい。改めて「いじめは人権を踏みにじる犯罪で、絶対許されない」という認識を徹底し、根絶しなければならないという。

要約〈いじめが社会問題となった1980年代以降、教育行政機関などでもさまざまな防止と手だてが論じられてきた。今回の提言にある問題認識や加害の子どもに対する毅然とした措置などもすでに指針として出ている。なのに長い間基本的に改善されず、孤立した被害者が命を絶つという最悪の悲劇が繰り返される。なぜか。

私たちは、背景の一つに学校や教育行政の問題隠蔽体質、事なかれ主義を指摘してきた。子どもの世界のいじめは、注意を向けないと、明確な形で大人の視界に現れにくい面がある。逆に言えば、見て見ぬ振りをしやすい。教員が情報をすぐに確認していれば、あるいは一歩早く踏み込んでいれば、というケースが少なくない。

近年、競争原理導入の教育改革政策の流れで学校や教員への業績評価の目が強まり、それが問題隠蔽や先送りにつながりやすいという現実だ。いじめは、例えば、特定の患部に専門医が適当な処置をすれば、何事もなく回復する──という単純な問題ではない。形態は複雑で、大人社会の有りようや病理も微妙に映す。
 これに当たるには社会全体の知恵と継続的な努力が必要だ。「犯罪だ」と徹底して教えよう。「絶対許されない」という原点を再確認し力を合わせれば、連鎖現象は必ず断ち切れる。〉と結んでいる。

再生会議の連中と同じく社説も、いじめの本質がなにかも分かっていない。問題を教育行政、隠蔽体質、と指摘をしておればメディアの責任が済むような表現だ。そして、わけがわからなくなったことで「社会全体に対する決意表明」とした再生会議と同じように、責任の所在がどこにあるのか分からない表現にしている。

責任は明確に存在するのにそれを見ない。その責任こそいじめる子を社会に野放しで放り出している親たちだ。毎日新聞社自体がそれは把握していることなのに追求して行かない。いじめの原因を社得意のコンピューターによるほぼ1000人の回答をまとめ、記事にしているのだ。電話によるRDS法[(Random Digit Sampling)電話番号の末尾の数桁の組み合わせで作成し、調査対象とする方法]で調査した世論だ。
 (質問と回答:11/25、26の2日間・数字は%)
♦いじめが行われる最大の原因は何だと思いますか
                 全体  男  女
教育制度に問題がある       12  12  12
教師の指導に問題がある      11  11  10
保護者のしつけに問題       54  54  54
いじめる側に問題がある      10   9  11
いじめられる側に問題       1   2   1
♦いじめをなくすためには、どうしたらいいとおもいますか
教師の指導力を強化する      10  12  8
地域で子どもを育てる環境をつくる 22  23  21
家庭での会話を増やす       42  37  47
少人数学級を導入する        9  8   9
いじめた子に厳しい罰を与える    7  10  5
♦教育基本法がいじめをなくすことに役立つと思いますか
役立つと思う           23  16  28
役立つと思わない         63  72  56
♦全国の高校で必修科目の単位不足問題が発覚しました。受験を控えた生徒がいることを考慮し、政府は、補習の時間は70時間を上限とする救済策を決めました。政府の救済策をどう考えますか
評価する             30  29  31
救済策は不公平を招く       33  40  26
もっと手厚い救済策が必要だ    24  20  28

これで見る限り、普通の人の方がよほど健全にいじめの本質を捉えている。保護者のしつけに問題があるとする人が優に50パーセントを超えているのだ。教育基本法の対策にすら60パーセント以上の人たちは評価していない。

いくら厳しく最終的に結果として表面に出るいじめを処罰しようと、諌めようと、次から次に社会に送りだす親たちがいては、現在考えられ、対策を立てようとしているいじめがなくなることはあり得ない。どんなに社会に呼び掛けようと、旗を振ろうと、それこそカワズ(蛙)の面(つら)にションベン(小便)だ。

まして、当の子どもたちはいじめが‘悪いこと’だと思っている子は半数にも満たないのが実情だ。
NPO法人「ジェントルハートプロジェクト」《私はこのいかがわしい名前は大嫌いだ》が過去3年間に亘って各地の講演会で訪れた小学校8、中学校23、高校5校の児童生徒約1万3000人を対象にしたアンケートをまとめたものだ。
「いじめる方が悪いと思うか」と聞かれて「はい」と答えたのは
   高校生では        4割
   小・中校生        6割
「いじめられても仕方ない子はいるか」に「いいえ」と答えたのは
   小学生ではかろうじて半数を超えたが、
   中学生では     4割を切った。

一方、「いじめはなくせるか」との問いに「はい」と答えた比率は、学年が上になるほど少なくなった。
   「いじめを相談する相手」は「友だち」が56%
                「教師は」わずか19%
                「いない」が20%を超えた。

 「親」は残りの5%にしか過ぎないのか。相談したくてもいない相手では・・・、頼るに頼れない現代の親がそこにある。親の子育ての無責任は、子どもたちに「いじめ」に対する罪悪感さえ失わせているのだ。 本当に教育を再生させたいのなら、時間が掛かるのは覚悟の上で、このような親への育児教育の根本から取り組むのが道であろう。
巷には「人は外見が90%」だの「全て」だの、人を差別することをほのめかす書物も出ている、「セレブ」などと、なり振りだけで人格が決められるような風潮も蔓延っている。子どもの世界だけが穏やかで過ごせるものではないだろう。

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