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2006年12月28日 (木)

日本人は働き過ぎか

時恰も話題はホワイトカラー・エグゼンプション*(文字取りの意味だと、一般労働者・免除で何のことか理解できない)が来年の通常国会で厚生労働省による素案をもとに、関連法案として提出されることになりそうだ。早ければ2008年度には立法化され、施行される可能性がある。12月27日に同省が示した原案では、適用対象者の基準年収額については「相当程度高い」としているが、現在では1000万〜400万円まで幅広く想定され、具体的な年収額は明示されていない。
 *white collar exemption、ホワイトカラー労働時間規制適用免除制度(現在労働基準法に定められている1日8時間の規制を免除し、それ故に残業という概念を取り払う、ということ)

ただでさえ超過残業による過労死が発生する過酷な作業環境が、法案通過、成立となればノルマ達成のためには一層厳しい残業でない残業が強いられることになる。時間の規定が外されるから今まであった超過時間の25乃至50%増の割り増し賃金の支払いがなくなる。働いて働いて身体を壊し、死亡しても自己管理の問題で会社には問われる責任はなくなる。このまま通過してしまうのだろうか。このホワイトカラー・エグゼンプションについては別に更めて取り上げたい。

今回のテーマは日本人は働き過ぎ?働き過ぎじゃない?
私の経験から結論を先に言えば、決して働き過ぎではない。なぜなら、日・祭のたびに休むことができ、家庭サービス、子どもの相手、高速道の長時間移動が可能な、小旅行、その上海外旅行ができれば働き過ぎとは言えない。本当の働き過ぎは、敗戦後の日本経済を支えてきた団塊世代の前の労働者たちを言う言葉だ。彼らには日曜も祭日もなかった。子どもの相手ができる親などいなかった。家に帰ればバタンと横になり、そのまま眠りに入る、たまにある休日は、本人が身体を休めるための休日になり、とても子どもの相手はできるものではなかった。勿論その当時でも大企業の労働者や一般事務職の職場では、物見遊山のできる家庭もあっただろう。しかし、手を汚して働く当時の世界最低賃金の日本の労働者には家族サービスができる人間は数える程にもいなかった。その頃のことが頭にある世代には、現在の職場は天国だ。世界最低賃金は最高に昇り詰め、超過労働にはきっちりとした割り増し給が加算され、休日も数多くなった祝祭日の増加で増え続け、土曜日には半どん(仕事は午前中だけのことをそう呼んだ)から休日となる企業も増えて「花の金曜日」なる表現さえ生まれた。仕事の多くをコンピューターが処理をしてくれ、手作業で苦しんだ昔を知る人には今の職場は極楽のようなところに映る。とは言うものの、一方で、過労死が問題になる現実がある。聞いてみよう。

毎日新聞恒例の石田衣良の読者アンケートの集計(12/26)から
 有効投票数3484(男:1654、女:1830)**
        働き過ぎ  働き過ぎでない
 全体      73・6%  26・4%
   男     70・7%  29・3%
   女     76・2%  23・8%
 10代以下男  72・7%  27・3%
 10代以下女  62・5%  37・5% 
 20代  男  77・8%  22・2%
 20代  女  82・5%  17・6%
 30代  男  72・8%  27・2%
 30代  女  75・7%  24・3%
 40代  男  61・3%  38・7%
 40代  女  70・9%  29・1%
 50代  男  71・6%  28・4%
 50代  女  71・6%  28・4%
 60代  男  81・3%  18・7%
 60代  女  86・7%  13・3%
 70代以上男  47・4%  52・6%
 70代以上女  78・6%  21・4% 

労働者それぞれの基盤が、大企業か中小企業か、また事務職か工場労働者かによっては大きく変動する。また、70歳以上の男性に働き過ぎと思う数が決して多くないのは、上に述べたような辛かった時代からの変遷を熟知している世代だからだろう。反対に若い世代の特に女性が働き過ぎと感じるのは、遊びたい欲望に対する反動のようなものだ。モラール(労働意欲)の高低、労働に対する認識にももっと深く立ち入って分析する必要がありそうだ。

では、働き過ぎではない、の意見から聞いてみよう。
「周りを見ていると死にそうに働いている人2割と普通に働く人が残りの半分、さらに残りはあまり仕事しない人だなと。25年働いた結論です」(川崎市・さちぽん)「いくつか転職して働き過ぎの企業戦士も見ましたし、同等に怠け過ぎの社員にも出会い・・・結局、個人差です」(茨木県つくば市・佳子)「ひとこと言わしてもらいます。わたしは大阪船場に商売を習いに来ました。朝は7時から始まり夜は8時終わり。休みは月に1日で、食事は5〜10分間。それにくらべると今は・・・」(住所不明・匿名)

続いて働き過ぎと感じている人の意見。
「主人の会社は数千人のリストラの影響で、残った人間に仕事が上乗せされました。週90時間働き、子どものも会えず、休日出勤です。周りの人もみんなそう。過労のために人身事故も起きています。訴えた人たちは降格や出向になり、やがて辞めていきました。家族揃って食事がしたいなあ」(大阪市・匿名)「手段が目的になっている。家族や愛する人のための仕事でなく、仕事あっての愛する人、家族になってしまった。本末転倒」(静岡県三島市・中助)「働き過ぎる仕組みなのです。一般サラリーマンの場合、残業手当を貰わずに、正規の給与だけでは生計が成り立たないのが実情です」(川崎市・匿名)
 《この人の場合、月々の収入が分からないが、我々の時代は上からは、自分の給料に見合った生活をしろ。と教えられた。》

アンケートの結論を石田衣良は「日本人は働き過ぎ」に軍配をあげるが、私には、テーマに対して設問が浅薄すぎて答えが出せない。

ホワイトカラー・エグゼプション、企業側の言い分は、例えば10の仕事をAは8時間で終え、Bは10時間懸かって終えた。Bの超過時間2時間に割り増し賃金を支給するのはおかしい、仕事が出来ない人間の方が高給取りになる、とするものだ。戦後の復興期、共産党に指導された労働組合による平等論が大手を振ってまかり通っていた頃、こうも言った。「自分の未熟な技術、或いは知識のせいで、会社の材料に損害をかけ、時間を無駄にし、ロスをだし、その遅れをカバーするためにした残業代をよこせだと?ふざけるな!」だった。この規制が外れれば、時間外手当をつけなくてもよい層へ、仕事量はどんどん流れ込むことが想定される。ますます過労死の危険が膨らむことになりそうだ。当然、労働者側は認めない、と言うが、立法化を防ぎきれるだろうか。

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