代理出産 その二
昨年8月に、韓国での代理出産を契約した身勝手な女性同性愛者のことを書いた。
つい先日には、50代後半の娘の母が、娘夫婦の受精卵で「孫」を代理出産した女性のことを報じた。前回紹介した諏訪マタニティークリニックの根津八紘院長が、東京都内で会見して明らかにした。実母からみて孫を代理出産した例が明らかになったのは国内初のことだ。子どもは母親の実子として届け出たあと、娘夫婦と養子縁組をした。
根津院長によると、娘が癌で子宮摘出したことから、母親が約4年前に代理出産の相談を持ちかけてきたという。04年に娘の卵子とその夫の精子を体外受精させ、受精卵を娘の母親の子宮に移植、昨年の春に出産していた。母親の方は閉経していて自然妊娠は出来ない状態であったが、女性ホルモンを投与していた。
代理出産は海外で実施されているが、国内では03年に家族間系を複雑にすることなどを理由に日本産婦人科学会が禁止する指針をつくり、後生労働省の審議会も罰則つきで禁止すべきだとする報告書をまとめている。
今回の代理出産について根津院長は「親子愛で成り立つ代理出産は、姉妹間に比べて問題が起りにくい」と説明している。これは前にも記したが、10月10日育てたお腹の子が愛おしくなり、依頼された人への引き渡しを拒否するケースを指す。この問題は代理出産の多いアメリカでは時々見られるケースがある。同院長は01年5月以降、妻の妹などが出産する2例の代理出産を実施したことを公表した。会見の席では「さらに2例、妻の姉妹が代理出産したケースに関わっている。他にも2〜3例の実施を検討中である」という。
このような所謂借り腹について、面白い意識調査をした大学がある。不妊治療を学んだ医学生が「自分が不妊患者になった場合にどう考えるか」を明らかにし、不妊治療がどこまで認められるかを考える参考にするためだ。
《夫婦の受精卵を別の女性が出産する代理出産(借り腹)について》
社会的に賛成できると答えた医学生が7割もいた一方、
自分が不妊夫婦の立場なら実施すると答えたのは3割だった
《他の生殖補助医療(不妊治療)についても》
社会的には賛成だが、自分が不妊夫婦なら実施しない、とする回答が目立った。
<浜松医科大学の産婦人科医らの調査:同大医学部5年の男女174人を対象に、04年4月〜昨年9月>
健康な立場で切羽つまって子どもが欲しい人たちの気持ちを察するのは難しいことで、常識的なありふれた回答になるのは自明のことだ。常に医療を施す側にいる人間が、施される側の心理状態を理解するのは難しい。このギャップを埋めるのが医療の問題でも有るし、難しさだ。現在の国内での禁止を求めた代理出産については、70%の学生が「社会的に賛成できる」と答えたが、「自分なら」との答えは33%にとどまった。厚生労働省の生殖補助医療部会の03年の調査では、代理出産を一般的に認めてもよいと答えた人は46%であった。また、夫婦以外の第3者の卵子、精子、受精卵を使う不妊治療についても、やはり「社会的に賛成できる」が50%台にくらべ、「自分なら」は5〜10%だった。
先の娘夫婦の受精卵による母親の代理出産が大きく報道されて、これを受けるかのように民主党の作業チームは、代理出産を一定条件下で容認する中間報告をまとめた。毎日新聞(12/17)によると、極めて限定的な内容で、容認は妻が医学的理由で子を産めない場合に限り、「代理母」に親族がなることや報酬の支払いを禁じる法規制も導入するとしている。代理出産を認める条件として、病気で子宮を失ったなど、医学的・肉体的な理由に限定し、高齢などを理由にした代理出産は否定した。代理母いついては第3者が無償で引き受ける場合だけ認めるとしている。
さらに、専門的な倫理審査機関を新設し、個別審査をする「許可制」を提案している。また海外で発生している依頼者への引き渡し拒否や、反対に生まれた後の依頼者夫婦が引き取り拒否ないよう義務付けることも盛り込んだ。これは、5体満足で生まれない場合や、出産までに依頼者夫婦に何等かの変化(別離など)の発生を想定したものだろうが、必要なことだろう。ただ、中間報告では、生まれた子と代理母との法的関係は(海外で代理出産を選んだ、向井亜紀の例など)今後の課題ついて、さらに検討を進めるとしている。
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