「食育白書」と家族の崩壊
毎日新聞(11/24)から
世の中いじめ、いじめで大騒ぎだ。いじめはいけない、いけないことだと言うだけで、効果的な対策は何一つ立てられていないし、虐められる側への同情ばかりで肝心の、いじめる側の親の養育責任を放棄したような、子に対する躾や教育に関する意見を取り上げる論調が全くない。今時の、何事も責任転嫁して自己主張の激しい勝手気侭な親に気兼ねしてか、いじめる子を野放したままの親の問題を正面切って取り上げることがない。
親の教育は子どもがお腹に宿った時から始まっている。月満ちてこの世に生を享け、母の懐に抱かれ、ふくよかな乳房からおちちを授かって育った。
昔、『団欒』という言葉があった。‘家族団欒’或いは‘一家団欒’のように使う言葉だ。意味はまろやかなこと、集まって車座に座を占めること、集まって和やかに楽しむこと、親密で楽しい会合などを指すものだ。用例としては「いの一番」に一家団欒が挙げられるほどに、以前はどこの家にも見られた食事風景だった。その中でも会社勤めを終えた大黒柱の父親を囲む夕飯どきだった。戦後の復興に向けて先ず最初に父親が抜けた。そして現在、子どものいる家庭でも、食卓には父親どころか母親さえもいない家庭が増えている。両親共働きの家庭だ。このように曾(かつ)てあった団欒こそ家庭の大切な教育の場であり躾の施せる場であったのだ。現在では、家庭で最も欠落している部分になっているものだ。会話もなく、暖かいご飯も熱くてふうふうしながら飲んだ味噌汁の味も味わえず、出来合いのスーパーやコンビニで仕入れるもので取り敢えずお腹を満たす。家庭の団欒は学校へ上がるまでに学ぶべき最低の躾の場であった。ものの善悪、食べ物の大切さや、箸の持ち方も、食事の作法もすべて両親や祖父母が教えた。それでも道を外す人間も出ることは歴史の教えるところだが。
食事が終わっても子どもがこもる部屋はない家族が殆どであった。現在のように家庭内で子ども部屋と称する鍵の掛かる密室のある家はほとんどなかった。親は子どもの監視が楽にできていた。本当なら、現在でも親は子どもの養育義務から、監督し、監視する権利もあるのだ。施錠されていようが、いまいが部屋へ出入りする権利、持ち物を検査する権利、(携帯電話の内容を見る権利なども)を持ち合わせているのだが、子どもを怖がってそれもしない。どこの家庭でも門限はあった。子どもの夜間外出など許す親はいなかった。
その次の世代になると家つき、カーつき、ババア抜きで大事な人生の先輩を切り捨て、核家族へと変化して行った。続いて母親も仕事を持って家から大人が消えた。当初は心配だからと施錠して家を留守にしたが、不慮の失火や事件が発生すると託児所の必要性が求められるようになり、母親は授乳からも食事の支度からも手を引き、
女ばかりが育児をするのはおかしい、となったり、育児休暇が生まれてくる。しかし、ますます育児は親の手を離れ、小荷物一時預かりの他人任せに移行して行く。共働きで収入が増えるとどううしても生活は贅沢になる。それが基準になると、より高い基準を求め、一層忙しい忙しいで育児の放棄になり、監督責任の放棄になる。いじめる子の無分別も、虐められる子の弱さも、その根源は親の愛情を受けていない、或いは感じられない親子関係に内包している。その鉾先を学校に向けても、教師に向けてもお門違いだ。
今回の政府の「食育白書」では、朝食をとらない「欠食」や、一人で朝食をとる「孤食」が子どもに広がっていることに焦点を当て、「健全な食生活が失われつつある」と問題視している。《何を今ごろ、と思うのだが、問題意識がこの程度なのが現在の日本なのだろう。これは10年も20年も前から始まっていることなのに、未だに『食生活が・・・』の認識しかないのだ。現実は完全な家庭の崩壊の段階にまで来ているのに。登校して来ても昼まで持たず、よれよれの生徒に、見るに見かねた学校が、朝食をまかなうところも出現した。親の育児放棄以外の何ものでもない。》
もう20年も30年も以上も前になる。私の現役時代から、「男が朝飯も食わずに出社してきて、碌な仕事ができるか」と部下を叱った。現在ではそう叱ってくれる上司もいなのだろうか。一方、現在朝食と脳の働きの関係を取りあげた研究もされていて、国立教育政策研究所の調査(03年度)をもとに「朝食をきちんととる子ほどペーパーテストの得点が高い傾向にある」と指摘している。側面から食事の大切さを訴えかけようとするが、どこまで利き目があることか。
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コメント
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投稿: skywork | 2006年12月25日 (月) 03時56分