戦場に行くのは いつも若者です
昨日の「硫黄島」の米兵の戦争体験の原作を翻訳した大島英美(東京都出身52歳)について紹介記事が載っている(毎日新聞18日)。
61年前の激戦地硫黄島。この地に星条旗を打ち立てた米兵6人を描いたノンフィクション「父親たちの星条旗」を翻訳した。「この本を訳すことは運命だと感じた」と彼女は言う。
33年前、日本に留学中の作者ジェームズ・ブラッドリーさん(52)と知り合い、米国の別荘に招待された。星条旗を掲げた6人の中の1人の父親ジョンさんがいた。彼女の挨拶は「日本人は敵でした。お邪魔しても不快ではないですか」と聞くと「硫黄島は、はるか昔。歓迎するよ」と言われた、という。
この会話の重さを実感したのは、02年にニューヨークの本の見本市でこの作品を見つけたことだ。ジョンさんは生前、硫黄島の体験を家族には語らなかったとあった。「本当の勇者は多くの戦死者」との理由からだったという。そして、彼女への笑顔には戦争の凄惨さを知り尽くしたからこその「互いに理解しあう大切さ」が込められていると気づいた、と言う。
原作を翻訳中、何度も涙があふれて本を閉じたという。「これは、女性のための本だ」とも思った。彼女の息子(19)と同じ年頃の、ごく普通の若者たちが時代の熱気に煽られて戦場を志願した。《日本の徴兵で集められた兵隊たちと根本的に違うところだが、彼ら若者たちは、開戦の宣告もなしに行った真珠湾への攻撃に対する“日本憎し”で続々と志願していたのだ》原作には、戦死を伝える電報を自分で読めず、配達人に「あなたが電報を開けなさい」と迫った母親のエピソードも書かれている。《いずこの女性も、夫やこどもを失った悲しみに違いはないだろう》。
「戦争を肌で感じれば母性が疼く。女性は戦争を止める大きな力になる。戦争を始めるのは大人で、戦地に向かうのが若者なのです」と結んである。
《大人の皆が戦争を始めるのではない。国政を動かし、命令できる立場にあって、自分自身は決して戦場に出ることのない大人が始めるのだ。それに、忘れてならないのは、飛行機を作り、軍艦を造り、銃器、銃弾をこしらえて、戦争で利益を得る立場の人間が必ずいるということを。》
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