米大統領は平和の脅威か
イラク高等法廷(旧フセイン政権の犯罪を裁くため、03年12月に米英占領当局とイラク統治評議会によって「特別法廷」として設置され、後に現行の名称に変わった)は、イラク国内法に基づき5人の判事によって審理が進められ、2審制になっている。米英占領下で設置されたために、フセイン元大統領や弁護団は正当性に異義を唱えている。
ウサマ・ビンラディンを捕まえるために出かけ、雲隠れされて捜し出せずに手近なフセインをひっ捕らえることで誤魔化し、9・11の目をイラクに向けさせて来た。イラクに梃入れして法廷を開かせ、完全にテロから反れ、大量破壊兵器に名目を切り替えたが、3年を経過してもそれらしい兵器を見つけることもできず、戦争だけは続けているのが現在のブッシュ大統領だ。アメリカ国内でさえ疲れ切った国民はブッシュから離れ、ブッシュの強い味方であったキリスト教右派もすでにブッシュを見限ったようだ。
こんな時、バグダッドのイラク高等法廷は5日、フセイン元大統領の判決公判で、アブドルラフマン裁判長が求刑どおり死刑(絞首刑)を言い渡した。中間選挙の遊説に向かう途上のブッシュ大統領はテキサス州の飛行場で、フセイン元大統領に死刑判決を言い渡したことについて「日の浅いイラクの民主主義にとって大きな成果だ」と語り、民主化が進展したとアピールした。ブッシュは「フセイン裁判は独裁者の支配を法の支配に転換しようと努力するイラク国民にとり、画期的な出来事だ」と評価した。
しかし、これより先3日付のイギリスのガーディアン紙は、ブッシュ米大統領は北朝鮮の金正日総書記や、イランのアフマディネジャド大統領よりも危険、とする世論調査の結果を掲載した。世界の指導者で誰が平和への脅威かなどを英国民に尋ねた結果だが、ブッシュはかつて自分が「悪の枢軸」と呼んだ国の指導者より、危険視されるようになったとしている。
調査結果によると、75%がブッシュについて危険と回答。北朝鮮の金正日は69%、アフマディネジャド大統領は62%だった。最も危険とされたのは未だに捕まえられない国際テロ組織アルカイダの指導者ウサマ・ビンラディン容疑者で、87%に上った。
ガーディアン紙のほか、イスラエル、カナダ、メキシコの有力紙も連携し、それぞれの国で同様の調査を実施した。イスラエルを除く3ヶ国では、イラク戦争を正当化できないとする意見が圧倒的多数を占めた。親米のイスラエルでも米国の政策を支持する比率が減ったという。
アメリカ国内ではニューヨーク・タイムズは5日付の社説で、「ブッシュ政権で議会を主導して来た共和党の仕事振りはひどかった」として、7日の中間選挙で共和党候補を一切支持しないことを明らかにした。1951年から発行している同紙だが、「記憶に残る限り初めてのこと」(社説)としている。
初めてにしろ、これだけのことが社説として表明できることに驚く。例えば日本で朝日、毎日、読売、産経などのどれかが書くとすれば、NHKの短波放送でやったごとく、権力を使った統制が即座に実施されるだろう。いや、腰抜けのメディアにはそんな骨のあることが書けるところはあるまい。どこも一様に特色もなく、波風立たない論調で、どの新聞を読もうと違いのないことが日本のメディアの伝統になっているのだから。
今日にもアメリカは中間選挙の結果が明らかになるのだろうが、アメリカ国民の期待どり、2大政党間での転換は起こるのだろうか。
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