酒、ビールのコマーシャルをなくせ
連日飲酒運転による事故が発生する。片やテレビの画面から、新聞紙面からはビール会社の新製品が続々と発表され、酒飲みは喉を鳴らしながら画面に見蕩れる。敗戦後の傷跡も癒えず、働いても働いても生活の苦しい時代の庶民の心を掴んだ歌が作られた。安酒をあおり、メチールを飲み、命を落とす人も多く出、自棄くそのようになって憂さを晴らしていた。
お酒呑むな 呑むなの御意見なれどー ア、ヨイヨイ
酒呑みゃ 酒呑まずにいられるものですか ダガネ
あなたも酒呑みの 身になってみやしゃんせ ヨイヨイ
ちっとやそっとの御意見なんぞで 酒止められましょか
トコ ねえさん 酒持って来い (昭和26年、ヤットン節)
刑罰を厳しく、取締りを厳しく、と声高に叫ぶ反面、一方では野方図なコマーシャルの垂れ流しが続く。ヒステリックにタバコの害を叫び、コマーシャルが姿を消した流れを考えれば、それ以上に殺人さえ惹起する酒の恐ろしさは、タバコ以上にヒステリックに叫ぶ必要があるのではないか。ところが、どんどん飲ませておいて、生じる結果だけを取り締まっていては、無くそうとする運転事故の減るわけもない。上の歌のように、どんなに注意されても飲まずにいられないのが酒飲みだ。
それを助長するような宣伝合戦がテレビ画面で繰り広げられる。日本酒に、ワインに、ビールに、発泡酒に、好感度の高いタレントを使って飲め飲めと迫る。昔と違って女性もその道の女ばかりが飲むものではなくなった時代だ。飲めと謳うからにはお手軽に飲めるように、と価額合戦が始まる。缶チューハイの価格破壊は凄まじい。1缶(350ミリリットル)100円割れは当たり前になっている。
東京都西部の酒販店に並ぶカラフルなパッケージの缶チューハイには、80〜90円の値段が貼られている。ジュースより安くないと売れないのだそうだ。缶チューハイは宝酒造が1984年に210円で売り出したのが最初。後発のサントリーが99年に140円を出して価格競争の時代に突入する。当然追い掛けるのはアサヒやキリンが続く。
新商品の開発が簡単なのも要因としてはあるようだ。ブランドものに焼酎や、ウオッカ、蒸留酒、などを炭酸で割り、果汁などで味付けするだけで新商品が出来上がる。そのため、年間では100以上の新商品が続々と作り続けられる。この結果、古い人気の落ちたものは在庫整理の必要から幾らでも安く売られる。ジュースよりも安く入手できる現状は、度を過ぎれば、未成年者の飲酒の拡大にもつながりかねない。
早くからタバコ以上に害がある、と言って来た世界保健機関(WHO)が、07年5月をめどに、酒の広告規制を強化する方針を固めた。大半の先進国が酒の広告に何等かの規制をしており、WHOの動き次第では、日本でも影響を受けることになるだろう。速やかにテレビを始めメディアから、酒のコマーシャルが消えることを期待する。
それとも全米ライフル協会風に詭弁を使えば「飲酒運転で人を殺すのは人であって 酒ではない」となるのだろうか。
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