俺は偉いんだぞ
世の中には金と権力だけに頼る空っぽの人間がいる。
去る9月28日、テレビ東京の菅谷定彦社長は定例会見で、大株主の元衆議院議員、糸山英太郎氏が会長兼社長を務めるゴルフ場運営会社がスポンサーとなった番組を巡り、担当の幹部社員が糸山氏に挨拶に出向かず、「礼節を欠いた」などとして処分したことを明らかにした。
テレビ東京によると、糸山氏と会長兼社長を務める「新日本観光」は、テレビ東京の発行済株式約5%(20日付)を所有しており、日本経済新聞社に次ぐ第二位の株主となっている。問題の番組は、昨年4月〜今年3月に放送された「ゴルフスーパーバトル」。菅谷社長によると、先月30日に面会した際、糸山氏は「スポンサーなのに、部長以上が会いに来ないのはおかしい」と、番組内容に関する説明が不十分ことなどを指摘した。さらに、契約についても不備があるとして、改善を求めたという。菅谷社長は今回の会見で「問題提起には叮嚀に答えていくが、他のことは是々非々で対応して行きたい」と述べている。
糸山は、後に総理になる中曽根康弘の秘書を務めた後、32歳の時参議院議員に初当選したが、選挙期間中からその金権振りがマスコミに取り上げられ、さらに、当選直後に大規模な選挙違反が発覚する。選挙対策関係者から本部長、経営していた会社の社員、ギャンブル関係者ら142人が逮捕、1287人が検挙された。その後衆議院議員に3回当選する。彼のあるところ金にまつわる話題が付いて回り、『貪官汚吏(どんかんおり)欲深で、不正なことをする役人』と評されたこともあった。彼の金蔓は妻の父が元日本船舶振興会会長を務めた笹川良一の末の弟に当たり、資金面でのバックアップは強力なものがあった。
金権が人格のような糸山は、04年、自宅のザ・イトヤマタワーの18階で元暴力団組長から紹介された16歳の女子高生を買春して恐喝された折りも、その上を行く組長さんを使い、児童福祉法違反に問われることはなくて済んでいる。このような糸山が、テレビ局に対して挨拶のないことにクレームをつけることは至極当然のことで、どうしても金の力の前に頭を下げさせたかったものだ。テレビ局はまた、糸山のこわーい部分を知るだけに、ご無理ご尤もと当時の営業局担当部長を戒告、担当専務と営業局長を厳重注意にして応えているのだ。
立教大学社会学部(メディア法)の服部孝章教授は
《「礼節を欠く」という理由だけなら、大株主で広告主でもある糸山氏に対し、体裁を取った処分としか思えない。こんなことがまかり通れば、大株主を社内処分に介入させることにつながる。》と話す。
“実るほど 頭を垂れる 稲穂かな”には無縁の男のようだ。
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