アイスランドの商業捕鯨再開と、日本のクロマグロ、ミナミマグロ
アイスランド政府は17日、1985年以来中止していた商業捕鯨を約20年ぶりに再開すると発表した。漁業省は「捕獲は持続可能な範囲に限定する」との声明を出して、再開は関係する国際法に違反しないと主張している。
現在、商業捕鯨を行っているのは国際捕鯨委員会(IWC)に異義を申し立てたノルウェーだけ。1988年以来商業捕鯨を中止している日本は、アイスランドと共に科学研究を目的とした調査捕鯨を実施して来たが、ここにきてアイスランド政府はこれまで捕鯨の権利を留保してきたと主張。IWC総会で、商業捕鯨再開の前提となる捕鯨の監視制度「改訂管理制度(RMS)」の議論に進展がみられなかったため、これ以上の留保ができないとした結果である。
アイスランドの商業捕鯨再開は、欧米の反捕鯨国の反発を呼ぶとともに、日本の対応にも影響を与えることになりそうだ。アイスランド政府は18日から捕鯨許可を交付するとしており、今週中にも捕鯨が再開される見通しとなった。
計画では2007年8月末までに、商業捕鯨で9頭のナガスクジラと30頭のミンククジラを捕獲する。調査捕鯨分と合わせると、計69頭になる。捕獲したクジラは国内で消費し、需要が高まれば輸出も検討するとしている。
英BBC放送は、関係者の話として、クジラが小魚を食べ漁獲が減る被害を受けている漁民の苦情を、アイスランド政府が考慮した末の決断と伝えている。クジラと小魚の漁獲量減との関係は、日本でも言われており、捕鯨再開を望む根拠の一つともなっている。
乱獲がらみでは今回のミナミマグロ(インドマグロ)の漁獲枠半減という日本船へのツケが回って来たようだ。それによると、07年から5年間、今の半分の年3000トンに減ることになった。日本のマグロ消費のうちミナミマグロの比率は3%と小さいものの、既に高いマグロ価格をさらに押し上げる可能性があることが懸念される。日本は大消費国として過去の乱獲のツケを払わざるを得なくなったようだ。
07年以降の漁獲枠は、先週開かれた「みなみまぐろ保存委員会(CCSBT)」の年次会合で決まった。加盟国・地域の合計は3395トン減の1万1530トン。削減分の9割を日本が負うことになる。日本では殆どのミナミマグロは刺身として消費。ミナミマグロの供給量が減れば、高級マグロの値上がりにつながりそうだ。
現在、地中海での乱獲が問題になっているが、これも大半が日本向け。日本人の食卓は、昔ながらの米を中心とした食事からパンや肉中心に移ったとは言え、片方では今や病的とも言えるほどの勢いでマグロには執着しており、寿司や刺身で消費されている。煮物や焼き魚での魚嫌いの子供達でさえ贅沢すぎる回転寿司のマグロ、トロには涎を垂らすほどの好物でもある。
日本海の漁村にも近い田舎で育った私には、収穫してきたばかりの市場に出る前の新鮮な魚類を日常食して来たせいか、冷凍、解凍の魚には馴染めず、マグロにはさして興味はない。寿司屋のマグロ、或いはトロのにぎりや刺身よりは、捕れたばかりのイワシの方が煮ても焼いても余程旨いことを知っている。現在の住まいは全く海岸線のない県のため、捕れたばかりのイワシほどの旨い魚はトンと口にできない。個人的にはマグロが値上がりしようが痛くも痒くもつらくもない。
今回の漁獲枠削減は、日本漁船による過去の乱獲に対するペナルティーの色合いが濃いとみられる。付和雷同の国民性から、何事においても尻馬に乗り、人の口に上る評判に遅れを取りたくないだけで、己の好みを‘あの人と同じ’ものに偏らせることになる。あの人と同じ魚はマグロが、トロがいい、となる。それが次から次の乱獲となる結果、世界の鼻つまみになって制裁措置のような規制枠をはめられる。水産庁は05年に1800トンの過剰漁獲があったことを認めているが、これを大きく上回る、との批判を他国から浴びた経過がある。CCSBTの会合で過剰漁獲量は確定されなかったが、水産庁は「主要な漁獲国、大消費国として、改善義務がある」として大幅削減を受け入れている。
贅沢に馴れてしまえば元に戻すことは難しい。私の世代がそれこそ泥水すすって生き延びて来たような生活に戻るのは、それ程難しいことではないが、下限を知らない世代にはとても絶えられるものではないだろう。マグロやトロだけが魚じゃない。マグロ資源の研究者からは「ミナミマグロの漁獲削減に加え、ICCAT*でもクロマグロの削減が実現すれば、資源回復の期待が持てる。価格に影響がでるだろうが、しばらくみんなで辛抱し豊富なカツオなどを食べて欲しい」との指摘が出ている。
*「ICCAT(International Commisson for the Conservation of Atlantic)大西洋まぐろ類保存国際委員会」
マグロよりも旨い魚は幾らでもある。
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