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2006年10月17日 (火)

北朝鮮制裁と人道支援

北朝鮮の地下核実験の真偽はどうやら、実際に行ったことで落ち着いたようだが、その正確な位置はまだ特定されてはいない。空気中の放射線量も極く僅かだが騒ぎだけは大きい。

そんな北朝鮮ではいま、市民の困窮が深刻化しているという。前々から潜入ルポは度々テレビでも流され、腐ったものでも何でも食べたり、泥濘(ぬかるみ)の中から何やら拾い上げて口にする子どもたちの姿はよく見かける。

おもちゃの兵隊のような歩みの軍隊の行進は、見ていて恐ろしいのだろうが、吹き出したくなるような滑稽さがある。現在テレビで見る示威行進は、何年も前のもので、今では戦車を動かす燃料にも事欠く有り様だとも聞く。国を上げての貧困が押し寄せているはずの小国の北朝鮮が、なぜに核実験をやったのか。小国に不似合いな軍事力を備え、北朝鮮からは仕掛けることなど到底できないのに、威嚇だけはして見せる。軍人だけが富み、国民は疲弊のどん底にあっては金さんの破れかぶれ以外には戦える力などある筈はない。制裁の腹いせに金さんから仕掛ければ、間違いなく北朝鮮という国は無くなる。それほどこの国は疲弊していると見ていいだろう。

一方、国連児童基金(ユニセフ)の報道官は13日、国連安全保障理事会で協議されている北朝鮮に対する制裁措置について、子どもなどへの人道支援に悪影響が出ないようにして欲しいという考えを表明した。

ユニセフは北朝鮮で、世界保健機関(WHO)や世界食料計画(WFP)と共に90年代から人道支援を行って来た。報道官は、北朝鮮の子どもたちに対する予防接種の普及など支援の成果を挙げ、「こうした支援が続けられることを願っている」と語った。イゲランド国連事務次長(人道問題担当)も11日、「人道援助は制裁と切り離して続けられるべきだ」と訴えている。

将に涙を絞るような美談だが、ほんとうにそれでいいのか、90年代から始めているという人道支援と言う名の慈善事業、当時5歳であった子はすでに20か21歳の立派な北朝鮮人民の軍人になって金さんを支えていることになるのだ。支援をすればする程、立派な金さんの為の軍人を作っていることになる。金さんは、それが解っているからいくらでも無鉄砲なことを続けていられるのだ。人民は捨てておいても世界のお情け深い人たちがどんどん助けてくれる。軍人は切れ目なく生まれてくる。金さんは安心してテポドンを打ち上げを、核実験をやる。少しぐらい韓国や中国に逃げ出すやつがいても屁でもない、堪(こた)えない。

臭いものに蓋をするだけでは元は絶てない。人道支援という名の慈善事業は必ずしも善ではない。さあ、助けてやらねば大変だ、市民が、子どもが可哀想だ。と走り回って支援物資を送りつける。それが腐った組織の中で闇市に横流しされて行く。贈った方は折角送ってやったのに、と憤慨する。そして1部の人間の腹を肥やすことになるのに、懲りずに重ねての支援を呼び掛ける。それこそが慈善である、と言わんばかりに。そして金さんは、それが当然とばかりに気にもしないから、謝意を表明することもない。

10月14日、国連安保理事会は、全会一致で非軍事に限定した制裁を決議した。やはり中国の同意が得られないで合議に達したようだ。
 一、国連憲章第七章に基づき行動し、第41条の下で措置
 一、北朝鮮にすぜての核兵器、核開発計画の完全かつ検証可能な形での廃棄を義務付け
 一、北朝鮮への核、ミサイル関連物資や贅沢品の禁輸
 一、北朝鮮の核、ミサイル、大量破壊兵器の開発に関与した法人・個人の金融資産凍結
 一、北朝鮮の核、ミサイル、大量破壊兵器計画に関与する人物の入国阻止
 一、必要なら北朝鮮に出入りする貨物検査を含む協調行動
以上が、北朝鮮制裁決議の骨子だ。

最後の貨物検査は各国判断に委ねられるが、日本は、早くも上の決議に基づき、アメリカが北朝鮮に出入りする船舶への検査を実施した場合、周辺事態法を適用してアメリカ軍への後方支援を行うことや、自衛隊による船舶検査に強制力などを持たせるための特別措置法の整備についても検討に入ったようだ。

自民党の中には国連の決議だけでは物足りない人間(中川昭一政調会長)が、「核の保有について大いに論議する必要がある」と突っ走った。「(日本に)核があることで、攻められないようにするために、その選択肢として核(兵器の保有)ということも議論としてある。議論は大いにしないと(いけない)」と述べたとある。

彼は、どこまでも「眼には眼を、刃には刃を」を振り回したいらしい。米ソ冷戦時代の核開発にしのぎを削り合った無気味な情勢を、もう一度再現したいらしい。これを受けて安倍は、遊説先の大阪の茨木市での街頭演説で殊勝にも「北朝鮮が核武装しようとも、非核三原則は国是として守っていく」と述べた。

それでも金さんは、今度ものらりくらりと生き延びるだろう。何だかんだ言っても、やはり中国は問題の核心の国連憲章第七章の第42条(軍事行動に踏み切ることができる)の適用を避けるために動いてくれた、結果的には核兵器保有国として認めたのと変わらないぞ、少々窮屈にはなるが今までどおり、やれるわい、と。

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