北朝鮮さまさま
衆議院補欠選挙の2議席は自民党が勝利した。一先ずは安倍政権にとっての追い風になるのだろうか。
北朝鮮の核実験問題への政府が見せた対応をテコにして、テポドン騒動を切っ掛けに続いた要人の右傾化した発言で、多くの有権者や若者の同調者を増やして来た安倍政権は、今回の核実験はうってつけの追い風となって働いたようだ。その意味では政権交替で先行きが不安視されていた安倍にとっては、一つの山場を通り抜けたと言えるだろう。北朝鮮さまさまだ。民主小沢の神通力も、テポドンや核には到底太刀打ちできる相手ではなかったと言える。
その北朝鮮を意識し、先に総務省が出した「NHKの短波ラジオ国際放送への命令放送」問題について、先の大戦中の情報、言論統制の復活か、と不安を書いたが、言論封じのテロだとして、早くも抗議集会が持たれている。
今月17日、東京都内で開かれた言論テロに反対する市民集会で、上原公子東京都国立市長は約220人の市民らに「総務省がNHKに拉致問題を重点的に取り上げるよう命令するという。民主主義にとって怖いのは情報コントロールです」と訴えた。
命令放送問題は、メディア関係者だけでなく市民らにも波紋を広げている。講演後上原市長は「今までと大きく異なる運用をしながら、NHKの放送の自由を尊重するという。そんな言葉を誰が信用できるのか」と語気を強めて語っている。
この背景には拉致被害者の家族会や支援団体・救う会の政府への働きかけがあるだろう。安倍が官房長官時代から、安倍も含めた政府関係者との定期的な懇談の席で「北朝鮮にいる生存者の安全確保のために、あらゆる手段を尽くして欲しい」と要望して来ている。安倍が総理になってからの懇親会で「拉致問題は人道的なので、理屈じゃなく、国民を守るという前提に立って、命令放送をしてほしい」と、増本照明家族会事務局長が菅総務相に要望した経緯もある。
NHK職員の労働組合である日本放送労働組合(山越淳委員長)は19日、「具体的な放送内容についてはこれまでどおりNHKが自主的に判断していく」との立場を示した。委員長は「個別政策にについて命令を出すことは明らかに政府の関与に当る。NHKは視聴者から疑惑を抱かれないよう明確なメッセージを送るべきだ」と語る。
これについて「NHK受信料支払い停止運動の会」共同代表の醍醐聰・東京大学大学院教授は「NHKは毅然とした態度を示すべきなのに、言葉の上で独立性を保った自主的放送を行っていると言っているだけだ。これまでの放送を見れば実態は、政府の意向に沿った放送になると批判されても仕方ない」と指摘している。
自民党内でも、通信・放送産業高度化小委員会の片山虎之助委員長は「NHKの国際放送に国費を出している関係で、放送法上は総務相が命令できるが、拉致問題といった特定の事項を命令してやらせる感じになるのは如何
なものか。国際社会に日本の事情をわかってもらうことは必要だが、命令という形式は穏当ではないと思う」と話している。
私の世代には『臨時ニュース、臨時ニュース』で始まる戦時中のラジオから流れた嘘八百の戦捷報道に、翻弄された苦い思い出がある。今回の命令が、いつ何時、テレビに適用されることになるか知れたものではない。北朝鮮の動きを利用した、ナショナリズムの不穏な風が首筋に流れるのを感じる昨今だ。
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