食習慣が壊れている -2-
調査全体を通して言える主婦の傾向は、アンケートやインタビューなどの回答「言ってること」と実際の生活面で「やってること」の乖離が年々大きくなっていること。それが若い層ほどこの傾向が顕著に見られることだと言う。
例えば、「栄養バランスを重視して、おかずには肉と魚を交互にし、野菜の多い料理を考える」と言う主婦(27)の実際の1週間は、魚は1回、後は肉ばかり、野菜は殆どなかった。その言い訳は「家族が食べないものは作らない」と言うことになる。また別の主婦(31)は「夫には子どもの前で酒は飲まないように」と言いながら、子連れのママ同士の集まりにはビールを持参する。或いは味噌まで自宅で作っていたほどの手作り派の主婦(38)が、簡単料理や加工品、出来合いの惣菜ばかりが続くようになった。
このようにアンケートの回答は「現実に今日したこと」のような具体的に訊ねたもの以外、殆ど当てにならないことが分かる。「どう考えているか」という意識調査は主婦たちの実際の行動とは懸け離れており、調査のデータとしてはあまり役に立つものではないことが分かる。主婦にとって食事づくりは、どうしてもやらなければならないものではなく、他のやりたいこと、したいこと、或いは成りゆき任せでは作らなくても仕方がないもの、簡単に済ませたいもの、になっている。男の方も奥さんに無理に料理をさせて、波風立つのを避けることを考える。それよりは外食にでもするか、となる。
飽食の時代と言われて久しいが、肝心の食事の事になると想像するような豊かな食事をしているわけではないようだ。逆に食事はできるだけ節約を考え、その金銭があるのなら娯楽に回し、ディズニーランドに、家族旅行に、次には自分の服や家族の服に、或いは稽古ごとや趣味に使われる。そして次々に台所に立たない主婦が増えて行くことになる。当然のことのように出来合いのものを食べ、コンビニのお握りや、菓子パン、カップ麺や回転すしを取り囲むことになる。
昔ながらの、女は家族より早く起きて食事をつくるもの、朝食は味噌汁とご飯、などという強制には縛られなくなって来たが、食事を作ることの内面的な意味や価値観が希薄なって来ている。主婦自身のその時々の気分や気持ちに左右され、自分の子どもが、毒性の強い添加物まみれのファストフードを食べていても気にしなくなる。現在問題になっている朝ご飯を食べないのも平気になり、痩せても太っても関心を持たない。
今回の調査とは別だが、朝ご飯を作らない、作れない母親に代わって幾つかの学校が朝ご飯の給食を始めている。岡山県の或る小学校では「そこまで町がする必要があるのか」と言う意見もあるが、「食べて来なかった」「お腹が空いちゃった」などの他、勉強に集中できない子も多く、「家庭に任せておいても解決しない」と、対応を決めたという。過疎化の進む地方では、学校統合で早朝(6時台)には巡回のスクールバスに乗らなければ通学できない子もいるが、校長は「町がこんなことまでするのは、本来の姿ではない。家で朝ご飯を食べなくてもいい、となったら本末転倒。朝食の大事さは繰り返し、保護者に訴えている」と話す。
日本スポーツ振興センターの00年の調査では、小学生の16%、中学生の20%が朝食を摂っていない。朝ご飯を食べて来ない子は、3時間目ぐらいになると「気持ちが悪い」と訴える子も多い。女子栄養大学の足立己幸名誉教授は「朝食を学校で補完するより、家庭の努力を促してもらいたい、それでも作らない親には言ってもなかなか変わらないのが現実だろう。だったら、子ども自身で朝食を作る力を育てるよう、発想の転換が必要な時代ではないか。小学校低学年でもご飯の準備はできる。親が変わるのを待つより、子どもを変える方が早いかも知れない」と話している。
女性の職場進出で、「忙しい」「時間がない」と言えば、出来ることもしない言い訳の錦の御旗としてまかり通る世の中だが、今回のアサツーディ・ケイ2000Xがまとめたデータからは、必ずしもそうばかりでない面も見え、主婦のその時々の気分で作る作らないが左右され、献立が変わり、食べることなんかどうでもいいという「食」を軽視する時代になっているような気がする。このような未熟な親を、子どもの教育や将来について任せることが出来るよう、壊れてしまった食習慣を取り戻すためにはどうすればいいのか、国も学校のその場しのぎを見ているだけでなく、真剣に取り組む必要がある。
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