敗戦の日
1945(昭和20)年の明日正午、ラジオから天皇の声で終戦を知らせる放送の電波が、当時は今程普及していなかった受信状態の良くないラジオ(国民型と呼ばれていた)から、緊張した甲高い声が流れ、13歳の少年の耳には馴染みのない難しい言葉の連続が続いた。「敵は新たに残虐なる爆弾を使用して」「しきりにむこを殺傷し・・・」集まった人たちの中には当時は数少ない大学を出た学士さまは一人もおらず、雑音まじりの尊いお方の声をきょとんとして聴いていたのが可笑しい程鮮明に残っている。後に知る全文を下に写す。難しくて現代かなで育った若者には到底読めない、ふりがなを打つが、意味は各人勉強のつもりで調べて欲しい。当時の教育レベルが理解できるし、文章をこしらえた為政者たちの思惑も読み取れることと思う。
原文
朕深ク 世界ノ大勢ト 帝國ノ現状トニ鑑(かんが)ミ 非常ノ措置ヲ以テ 時局ヲ収拾セム(ん)ト欲シ 茲(ここ)ニ 忠良ナル爾(なんじ)臣民ニ告ク 朕ハ 帝國政府ヲシテ 米英支蘇(しそ)四國ニ對シ 其ノ共同宣言ヲ受諾スル旨 通告セシメタリ 抑々(そもそも) 帝國臣民ノ康寧(こうねい)ヲ圖リ 萬邦共榮ノ樂ヲ偕(とも)ニスルハ 皇祖皇宗ノ遣範ニシテ 朕ノ拳々措(けんけん、お)カサル所 曩(さき)ニ米英二國ニ宣戦セル所以(ゆえん)モ亦 實ニ帝國ノ自存ト 東亜ノ安定トヲ庶幾(しょき)スルニ出テ 他國ノ主權ヲ排シ 領土ヲ侵カス如キハ 固(もと)ヨリ朕カ志ニアラス 然ルニ 交戰巳(すで)ニ四歳ヲ閲(けみ)シ 朕カ陸海将兵ノ勇戰 朕カ百僚有司ノ勵精 朕カ一億衆庶ノ奉公 各々最善ヲ盡セルニ拘ラス 戰局必スシモ好轉セス 世界ノ大勢亦我ニ利アラス 加之(しかのみならず) 敵ハ新ニ残虐ナル爆彈ヲ使用シテ 『頻ニ無辜ヲ殺傷シ』 惨害ノ及フ所 眞ニ測ルヘカラサルニ至ル 而(しか)モ 尚 交戰ヲ繼續セムカ 終ニ我カ民族ノ滅亡ヲ招来スルノミナラス 延(ひい)テ人類ノ文明ヲモ破却スヘシ 斯ノ如クムハ 朕何ヲ以テカ 億兆ノ赤子(せきし)ヲ保シ 皇祖皇宗ノ神靈ニ謝セムヤ 是レ 朕カ帝國政府ヲシテ 共同宣言ニ應(おう)セシムルニ至レル所以ナリ 朕ハ 帝國ト共ニ 終始東亜ノ開放ニ協力セル諸盟邦ニ對シ 遺憾ノ意ヲ表セサルヲ得ス 帝國臣民ニシテ 戰陣ニ死シ 職域ニ殉シ 非命ニ斃(たお)レタル者 及其ノ遺族ニ想ヲ致セハ 五内(ごだい)為ニ裂ク 且(かつ) 戰傷ヲ負ヒ 災禍ヲ蒙リ 家業ヲ失ヒタル者ノ厚生ニ至リテハ 朕ノ深ク軫念(しんねん)スル所ナリ 惟(おも)フニ 今後帝國ノ受クヘキ苦難ハ 固ヨリ尋常ニアラス 爾臣民ノ衷情モ 朕善ク之ヲ知ル 然レトモ朕ハ 時運ノ趨(おもむく)ク所 堪ヘ難キヲ堪ヘ 忍ヒ難キヲ忍ヒ 以テ萬世ノ為ニ 大平ヲ開カム(ん)ト欲ス 朕ハ茲(ここ)ニ 國體ヲ護持シ 得テ忠良ナル爾臣民ノ赤誠ニ信倚(しんい)シ 常ニ爾臣民ト共ニ在リ 若シ夫(そ)レ 情ノ激スル所 濫(みだり)ニ事端ヲ滋(しげ)クシ 或ハ同胞排儕(はいせい) 互ニ時局ヲ亂リ 為ニ 大道ヲ誤リ 信義ヲ世界ニ失フカ如キハ 朕最モ之ヲ戒ム 宣シク 擧國一家子孫相傳(つた)ヘ 確(つよ)ク神州ノ不滅ヲ信シ 任重クシテ道遠キヲ念(おも)ヒ 總力ヲ将来ノ建設ニ傾ケ 道義ヲ篤クシ 志操ヲ鞏(かた)クシ 誓テ國體ノ精華ヲ発揚シ 世界ノ進運ニ後レサラムコトヲ期スヘシ 爾臣民 其レ克(よ)ク朕カ意ヲ體(たい)セヨ
慣習で送りかなの濁音が使われていない上に、句読点もない。難しいが、読んで欲しい。
あと1日と5分で、その時間になる。
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