泥棒見て縄
07年度問題としてクローズアップされている団塊世代の大量退職を、企業では大きな危機感を持って迎えようとしている。
厚生労働相の調査で、全国の約1万社を対象に実施し、約1500社から回答を得た。それによると、団塊の世代が従業員に占める割合いは平均7・6%、企業別では運輸業の11・3%や建設業10・5%、製造業8・4%などの比率が高く、それぞれの企業が抱く危機感では「意欲のある若年、中堅層の確保が困難」な状態にある、というのが64・4%で最多となっており、「技能伝承が円滑に進まない」が58%と続いていた。全体では企業の33・7%が技能やノウハウの継承に危機感を持っていることが分かった。これは前年度調査の約1・5倍に上る。一方で、対策として雇用の延長や、中途採用をあげる企業が多く、実際に若年層への技能伝承に取り組む企業は少なかった。
07年度問題への対策としては、「団塊の再雇用」(33・8%)や「中途採用を増やす」(28%)が多く、「若年、中堅層への技能伝承」は9%にとどまった。
年々社員が年齢を重ねることは採用した時から自明のことだ。何を今さら危機感を抱くことがあるのか。今でこそ回復した景気で一息ついている企業も、長く続けて来たリストラの反動から人手不足の珍現象を招いて、恐喝まがいの社員引き止めに躍起になっているところもあるように、多くの企業は不毛の時代を新入社員の採用を見送り、手っ取り早い人件費の削減で乗り切って来た。当然のことだが、技能の継承をするべき、或いはノウハウを引き継ぐべき筈の後継者は育たず、世代間の断絶が生じたのが現在の企業が抱く危機の最大の要因だ。
どんなに経営が苦しい時でも、特に技能を必要とする企業では、世代間の断絶を作ることはその企業の最大の弱点となる。算盤勘定だけで、企業は人なり、を失念した経営者失格の最たるものだろう。同世代だけで固められた企業では、引き継ぎたくも若年層を採用することを怠ってはバトンを受け取ってくれる「手」が見当たらない。当座の銭かねだけで、企業の継続を考えない経営者に率いられた社員こそ、哀れな人種と言うべきだろう。
かといって何もしない訳にいかない、企業を畳む訳にも行かず、遮二無二働く意欲を持たない当世の若年層では頼りにならない、苦し紛れに採るのが団塊世代の再雇用や、中途採用という逃げ道になる。すべての企業がそうではないはずだ、先を見据え、発展させて来た企業だってある。
泥棒見て縄を綯(な)うようでは、いずれ破綻する。
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