出生率 最低に
さあ、大変だ、大変だ。捕らぬ狸の皮算用、何度となく政府の予算の元になる出生率については識者から、メディアからも警告が発せられて来た。破綻するぞ、危ないぞ、と言われ続けて来た結果が、誰の目にも明らかな計画の甘さを露呈した。
何がその原因となり、少子化の歯止めが効かないのか。今回の厚生労働省の、05年度人口動態統計で、全国平均の「合計特殊出生率」1.25を下回った14都府県(青森は全国平均の1.25)に、それを考えるヒントになる問題点があるように思う。奈良県の1.12、北海道の1.13は特に低い数値の県・道だが、おしなべてその特徴で目立つのが、都会と呼ばれている地域で低い傾向が見られることだ。具体的には『人口密度*』で見れば、1位は想像どおりで東京(出生率は全国でダントツの0.98)2位が大阪(同1.16)3位は神奈川(同1.17)4位は埼玉(同1.18)5位は愛知(同1.30)6位は千葉(同1.18)7位は福岡(同1.21)8位は兵庫(同1.20)9位沖縄(同1.71)10位京都(1.13)と続く。【*2000年調査】
それと生産に従事可能な年齢の人口に占める割合いから見ると『生産年齢人口割合*』(15〜64歳)
1位から順に(単位%)埼玉の72.9、を筆頭に、神奈川、千葉、東京、大阪、愛知、奈良、京都、兵庫、茨城の68.5の順になる。【*99年調査】
続いて『離婚率*』(人口1000人当たり)
1位から順に(単位件数)沖縄2.64、大阪、北海道、福岡、東京、神奈川、宮崎、高知、千葉、10位に兵庫の2.05と続く。【*2000年調査】
人口密度、生産年齢の人口に占める割合、それに離婚、この3つの要素絡みで出生率の低い都道府県が殆ど含まれることに気がつく。限られた企業数を人口密度の高い人間たちが奪い合う。性道徳の弛んだ現在の日本では、お互いを確認し合う前に成り行き任せで同居、一緒になり、成りゆきで子どもを産むこともあるが、生活力のない若い男女は心配で子を産むことを躊躇う。そんな家庭を見ている女性たちは、最初から結婚を遅らせ、1人身の気楽な暮らしを捨てきれなくなる。子育てに消費しなければならない金は、ブランド品に、衣服に、旅行に、エステに、旨い食事に化けて行く。女性だけではない、今時の男性は美容院にも行くし、エステにも通う。都会で生活すれば嫌でも生活水準はうなぎ上りに高騰して行く。自分1人だけでは済まない、おつき合いという競争が生まれ、競り合って身を飾る。己の個性も掴めないで人の真似で消費金額が上がって行く。贅沢に慣れた生活からは生活水準を下げることには我慢できなくなる。子どもなど後回しでよい。それよりも今が大切、とますます晩婚化、或いは未婚のまま終える選択をすることになる。これは高齢になっても生んでくれれば少子化には歯止めが掛かる、と期待していた政府の晩産化の見通しさえ甘かった、と言わざるを得ないだろう。
間違って、いや、早まって結婚した人間たちは、はい、さようなら、と別れては見たがすぐに生活に行きづまる。子どもが邪魔になる。おい、政府よ、この子を預かる預かり所を増やせ、となる。1人では生活が苦しいから、と別れた日から男を、女を捜し始め、或いは同棲を始める。再婚できれば御の字だが、それでもうまく行くとは限らない。世間を賑わすいじめに繋がるケースが頻発する。再び悪循環が始まる。
政府が発表した少子化対策には大別して2つ。
1つは財源が必要なもの、これは次の5つ。
⑴ 0〜2歳を対象にした児童手当の増額
⑵ 出産育児一時金を30万円から35万円に拡大(10月から実施予定)
⑶ 不妊治療に対する助成の拡大
⑷ 子育て支援型税制
⑸ 学生奨学金の拡大
2つには その他のものとして
⑴ 出産育児一時金の支給手続きを簡素化
⑵ 登下校時のスクールバス導入
何を考えているんだろう。こんなことで結婚しよう、2人3人と子どもを産もう、などと計画する若者がいるとでも思っているのだろうか。少子化対策とはこれから結婚してもよい、と考えられる対策でなければ役に立たない。政府の考えていることは、殆どは少ない子どもでも、産んだ子どもと親へのご褒美のようなものだ。国家財政としては巨額の投資でも、個で見れば微々たる金額だ。お前たち貧乏人はこれだけもらえば子どもを産むだろう、程度にしか受け止めないよ。そんなものは直ぐにもっとよこせ、となるのも目に見えている。
今の日本は平和ぼけから飽食の時代、無責任の時代に突入している。日本中の目が一極集中化した東京を向いている。華やかな都会への憧れが、人口密度を押し上げては就職難を生み、結婚、出産を遠ざける。都会では多くの人は隣は何をする人ぞ、で生きている。余ほど「こいつは儲けた」となるような施策でないと今となっては人心は動かない。
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