就職性差別
大卒者の就職率が、厚生労働省の調査で96年以来最高の水準となった。バブル期とほぼ同じとする民間のデータもあるが、大学の就職担当者らは「企業の厳選傾向は変わらない。内定を取れる学生と取れない学生に二極化している」と気を引き締めている。
東京都内の法政大学を今春卒業した学生の就職率は、前年比で6ポイント近く上がり、95%だった。人間環境学部4年の女子学生(21)は、「追い風は感じるが、みんなが売れるわけではない。メーカーを20社回り、まだ内定はない」と厳しい顔で話す。同大学の就職担当者は「バブル期は数合わせと言えるような採用もあったが、昨年は企業も厳選採用を崩さなかった」と。
企業の採用数の増加で学生が大企業を志向する傾向にあると言い「中小企業の採用にしわ寄せが出るかも知れない」と話す。このところ日本企業の特色であった終身雇用の見直しも囁かれ、安定志向の強い若い世代には、大企業寄りの施策を打つ政府の元では、わざわざ苦しい中小企業を選ぶことは勇気のいることだ。当然のように雇用形態のしっかりした大企業へ目が向くのは自然な流れでもある。
リクルートのワークス研究所が実施した大卒求人倍率調査では、07年度卒業予定の大学生・大学院生に対する民間企業の求人は約82万5000人、前年より12万6000人増加。84年の調査開始以来最多だった。91年の84万人に次ぐ水準だった。「リクナビ」と「就職ジャーナル」の編集長・前川孝雄は「内定が取れる学生と取れない学生に分かれる側面もあり、必ずしも就職活動が楽になったわけではない」と話している。
学生にも格差が、と注目したがるが、これはそのような問題ではない。昭和の初期(1929年)「大学は出たけれど」という映画が作られたように、今よりももっと厳しい冷たい就職戦線があった。10月24日、永遠に続くかと思われたアメリカの繁栄に、突如ストップが懸かる。ウォール街で始まった株の大暴落は世界中を巻き込んで大恐慌となって日本を襲ってくる。職はなくなり、優遇された高等教育も役に立たなかった。農村では家を継ぐ長男以外は都会へ出て働いていたが、不況のあおりで帰郷しても、邪魔者扱いで都会へ舞い戻り、浮浪者となる以外に道はなかった(彼らのことを指して ルンペン と言う言葉がはやった)。そして日本は、軍部主導で2年後に始まり(満州事変)、以後、長い長い侵略戦争の戦端を開く準備に追われていた時代だった。
当時とくらべると、現在は余ほど恵まれている。ニートやフリーターと言われる穀潰しに近い連中が、楽に生きて行かれる世の中なのだ。就職先の企業も当時とは比べられないほど多くの数が揃っている。にも拘わらず、どうして「みんなが売れるわけじゃない」「学生にも格差」と言わねばならないのだろう。当然のことだが企業は優秀な人材を求めている。大学を出たからとてみなが優秀とは限らない。今の教育、順位をつけないらしいが、企業は明確に順位で採用して行く。ただし、その基準には各社特色があり、必ずしも学歴だけではない採用基準をもつところもあるだろう。企業イメージにあうオリンピックレベルの、眉目秀麗なモデルに、もありだ。
今、最も注目されるのは、男か女かについてのことになる。就職で性差別を受けるのは女だけではない。つい最近のことだ。人材派遣会社の事務職の求人に応募したら、男性であることを理由に採用を断られたとして、大阪府内の専門学校生(29歳)が大手派遣会社5社を相手取り、大阪簡易裁判所などに一社当たり15〜5万円の賠償を求めて提訴していることがわかった。大半の社が請求を認めたり、和解に応じた。性別を理由にした就職差別を巡る男性の訴訟は極めて異例である。
訴えによると、男性は今年2〜3月にインターネットで派遣5社の求人募集を見て「特許事務所の英文書類ファイリング」「商社の事務職」などの求人に応募した。募集要項に性別の条件はなかったが、派遣会社から「派遣先が女性を希望している」「女性向けの仕事」などと断わりのメールが届いた。彼が「性差別ではないのか」と抗議したところ、各社とも口頭や文書で謝罪したという。しかし、企業によっては「社員教育が徹底していなかった」などとするケースもあり、同法違反や精神的苦痛を理由に3月に提訴した。
これに対し、一社が請求を受け入れる答弁書を提出、請求額の15万円を支払った。他の4社のうち3社は「同法は男性を保護するものではない」として争う姿勢を見せる一方、「会社側にも不手際があった」として和解に応じている。解決金額は8千円〜3万円。残る一社も和解に応じるとみられている。
これに対して厚生労働省雇用均等政策課の話は。「男性差別の存在は把握しているが、訴訟は聞いたことがない。本来、男女に関係なく性別を理由とした採用、募集はあってはならない」と言っている。
最早弱いのは女だけじゃない世の中になったようだ。これも当然の現象といえるだろう。
従来あった働く人間を受け入れる企業の数は、産業の発達とともにある程度は増えるものだが、無制限ではない。採算の取れない会社が増えることがないのが資本主義の鉄則だ。ところが働くことを望む人間は古くは、多くの職場が男性で占められていたが、女性の仕事への欲求が高まり、近年では特に均等法が設けられ、雪崩をうってその数を増やし続けている。そこで何が起こるか。
簡単なことだ、一つの職場に二倍の数の仕事を求める人間が発生したことになる。10人で済む仕事に20人は要らない。男であれ、女であれ、従来の5人を馘にするか退職がなければ新しく採用することは不可能だ。そこには競争が生まれる、優秀な人間が優先的に採用される、生産効率が望まれる、企業の継続を考慮した採用が優先する。続いて男か女かの問題が付いてくる。 — 未完 —
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コメント
こうべいさん、こんばんは。
また来てしまいました。
昨日はコメントありがとうございました。
さて、今日は『男だから・女だから』と言うことで来たのではありません。
ちょっとした嘆きみたいなものなんですが
よろしければお付き合いください。
私は現在ビアホールで働いているのですが
仲間のほとんどは学生です。
ちょうど大学4年生で就職活動真っ最中。
今は早い時期から活動出来るとあって
確かに既に内定をもらっている子もいます。
昔の上司みたいなんですが、私は仕事が終わった後にいつもバイトの子と寄り道をしてます。
お酒を通じて相手を知るってやつですね。
仕事中は込み入った話が出来ないので
帰りがけに20~30分程度ですが色んな話をしたり聞いたりするんです。
まぁ、たいていはその日にあった事が多いんですけどね。
そんなある日、一緒に飲んだ男の子が言いました。
>実はずいぶん前に内定をもらったんだけど蹴ったんです。
ホントに自分がやりたい仕事なのか分からなくなって・・・。
じゃ、なんでその会社を受けたの?
働いてもいないのに何故そんな事が分かるの?
私には彼の言ってる事が理解出来ませんでした。
>じゃあ、何で大学に行ったの?どうしてその学部を選んだの?
彼曰く、両親が大卒だったから何の疑問も持たずに大学に進学したのだとか。
学部も『ただ何となく』だそうです。
私が就職活動をしていたのはちょうどバブルの後期でした。
確かに活動らしい活動をする事もなく『自分のやりたい仕事』が楽に見付かりました。
でも、私は高校生の頃にはすでに『接客の道に進みたい』と考えていました。
接客で目指すのなら『ホテルのフロント』と考えていました。
その為に高校卒業後は英語を学び(専門学校ですけどね)ホテルに就職したんです。
学生時代から接客に携わり、両親も飲食店を営んでいるので当然の事といえば当然でしたけど。
でも、彼だけに限らず『自分が何をしたいのか分からない』とか『自分にこの仕事は向いてない。きっと何か他にあるはず』と考える若者の多いこと。
『自分探し』なんて格好のいい言葉ですが、結局ただ何となく好きなことだけして生きてきてしまった結果でしょう。
親も子供の可能性を見つけてあげられなかったのでしょう。
>いい大学に行って、いい会社に入りなさい。
私の母親は『英語を覚えたいならなるべく早い方が上手くなれる』と言ってくれました。
だから専門学校でもホテル科ではなく英会話科に進んだんです。
妹には『お前は動物が好きだからそっちの勉強をしてみたら?』と言い、彼女はその通りトリマー(犬の美容師)として頑張ってます。
こう書いているとやっぱり母親の影響って大きいんだなぁと思います。
結局『親の責任』という所に行ってしまいますね(笑)
やっぱり『子供に無関心な親』に育てられると、何事にも無関心になってしまうんですかね。
今の就職活動のそのほとんどはインターネットから始まるそうです。
エントリーシートと言うのを送ると選ばれた人がネットで連絡をもらい、1次審査・2時審査と進んでいくそうです。
そうやって難関を進んで内定を受けても『根拠のない思い込み』で入社する前に辞退してしまう。
自分の可能性がどうこう言ってる割には会社に入ると他人とのコミュニケーションが取れない。
そうすると『やっぱりこの会社は自分には合わない』とでも言うんでしょうかね。
そうそう、順位を付けない教育の賜物なんでしょうかね。
私の世代は同期の人間には絶対に負けたくないって常に思ってました。
でも今の子は『みんなで仲良く~仕事もそこそこやってればいいや~』的な考えが多い気がします。
一体日本は何処へ向かって行くのでしょうか・・・。
投稿: えのっち | 2006年5月22日 (月) 01時48分
えのっちさん のお話には、思い当たることが多いにあります。
私の長男は えのっちさん よりも少し年長の40歳近い年齢ですが、会社でのコミュニケーションや、或いは人間関係で、相当苦しんだようです。
おっしゃるように、真っ先に言えるのは、若い人たちとの会話が成り立たないことのようです。というよりも、言葉を知らず、表現力に乏しく、そのせいで逆に言えば、聞き取る力がないというのでしょうか、人の話を理解する能力がないようです。
自分のせまく少ない人生経験の中でしか、物事を把握しようとせず、人の意見に耳貸すゆとりがないようです。
教育のせいと言ってしまえばそれまでですが、成人しても、自分自身を顧みることをしたことがないようです。
自分に合う仕事、あった仕事、そんなもの、ある筈がないことも理解できないようです。なぜなら、自分自身が何者かを見いだせてこそ、その自分に合う、或いは合った仕事を探すことのスタート台に立てるのだからです。
その意味では、自分自身を見定められなかったならば、一生賭けても合う仕事を求めることは不可能でしょう。
今の若者に欠けているのは、与えてくれる情報だけで済ませ、自分自身で思索する力の不足だと思います。何事も与えられて不自由せず、敷かれたレールの上をただ滑るだけ。自分の力で走ってもいないのです。
以前、ブログにも書きましたが、「硝子のジョニー」を歌った歌手、アイ・ジョージ、己の歌手の能力に辿り着くまでに、港の船荷運びから土方(ヨイトマケの歌に唄われている体を張る日雇い労働)などなど、60種類以上の職を転々としたのです。
当然勤め先の会社は迷惑したでしょうが、このように自己完成のために突っ走った男もいるんです。
えのっちさん のように、早くから自分の進む道をしっかりと見定めて、それにチャレンジできたことは、本当に幸せなことだと思います。それにはご両親の暖かい目、その親の姿を常に見、感じ、えのっちさん が、しっかりと人間形成をして来られたからでしょう。
それに息子の言葉を借りれば 新入社員に欠けているのは、いつの世でも必要な「常識」のようです。学校教育の欠落したところでしょうが、自由は教えたようですが、義務と責任は何も教えないようだ。と言います。
ニートもフリーターもその副産物でしょう、自由は責任が取れるから自由である、ということさえ教えられて来なかったようです。親からも、教師からも本当の自由を教えられなかった人たちで今の日本は溢れています。
偉大な哲学者の出現(性善説では救えません)が待たれます。
男にとっての 親 はやはり母です。万葉の世界ではありませんが、たらちねであり、ふところであり、大河なのです。
息子とも、何度か交わしたこともある内容のものになりました。人の上に立つ立場になると、いっそう人間を見つめ直す試練に立たされるようです。多少の体験を交え、指導するのが親だと考えています。
投稿: 小言こうべい | 2006年5月22日 (月) 17時19分
すっかり遅くなりました。
ありがとうございます。
私のつたない文章を理解して頂けて嬉しかったです。
そうです、本当にこうべいさんのおっしゃる通りなんです。
こんな若い人たちばかりがどんどん社会に出てくるのかと思うと・・・憂鬱ですね。
私たちは先輩として何処から彼らを教えていけばいいのかと思ってしまいます。
4月に入社の学生社員(会社が学費を払う代わりに働く)が居ます。
彼は教えてもただただ返事をするばかりで全く仕事を覚えない。
ある子が『メモを取って覚えなさい』と言ったら
『自分は感覚で覚えるタイプなんです』
と訳の分からない事を言われて絶句したそうです。
そして彼はカタカナが書けません。
『ン』と『ソ』や『シ』と『ツ』を何度も教えてやっと最近書けるようになってきました。
仕事どうこう以前の問題です。
仕事を覚える事も出来なければ、自分で知ろうともしないのです。うんざりします。
しかし、私たちを悩ませるのは彼だけではありません。
店の責任者である支配人(38歳♂)
高卒でアルバイトから社員になり今の立場らしいのですが、人を動かす能力が著しく低い。
スタッフを信じる事が出来ず、かと言って自分が先頭に立って仕事をする訳でもなく(店に出ると逆に私たちのリズムを崩す)、プライドばかり高く、お客様よりも身内(自分の上司)が優先。褒めるより褒められたい。などなど。
上司の行動や言動については私のブログを読んで頂けば分かると思います。
何なんでしょうね。
ウチの店だけこんな人ばかり居るんでしょうか。
レストラン業界は確かに一般的な会社とは体質が違うとは思いますけど、結局仕事が出来る出来ないは関係なく、上の顔色を見ながら機嫌を取る人間が偉くなるって言う事でしょうかね。
サービス業なのにお客さんを大事にしないなんて私には全く理解出来ません。
お客様は神様です。そんな言葉はもはや死語なんでしょうか・・・。
あぁ~結局また私の愚痴になってしまいました。
ごめんなさい。
投稿: えのっち | 2006年5月30日 (火) 03時25分