臓器移植
このところ移植に関係のある内容で少し書いたので、少し話をまとめてみようと思う。
「日本は金にあかせて世界の臓器を買い漁っている」。約3年前、スペインで開かれた世界保険機関(WHO)の臓器移植に関する委員会で、日本は名指しで批判された。この時点で日本政府は実態を把握しておらず、反論もできなかった。
急遽今年に入って1〜3月、移植専門医がいる全国の医療施設を対象に、厚労省の研究班が急遽組織されて全国規模の調査を行った。それによると、全国の施設で調べたところ、海外で移植を受けた外来患者数を調査した。
対象施設は心臓17、肝臓123、腎臓154で回答率はそれぞれ100%、98%、90%だった。ただし、死亡した患者や他の施設に通う患者もいるため、実際の患者数はもっと多いとみられている。現在渡航移植患者は上の報告時よりも69人増えて522人に上っている。97年の臓器移植法施行後もアジアへの渡航を中心に増加傾向にあり、「国内の脳死移植体制が不十分なため(患者は)多額の医療費と生命のリスクをかけて他国民からの臓器提供を求めて渡航する」という。
【心臓】17施設で103人、05年度は最多の15人が渡航移植を受けた。現行法では15歳未満の提供は禁止されているため(自民・公明両党の有志議員は臓器移植法改正案を検討、12歳以上に引き下げることを提起している)子どもが心臓移植を求めて渡航する例が増えていた。とともに、法施行後も成人の渡航例が増加傾向にあることも判明した。それに提供者の多くが死刑囚だという中国の実態もあるが、欧米や日本にある移植患者の登録制度や選択基準が中国にはない。費用は米国の約6000万円に比べれば約1300万円と格段に安い。
【肝臓】123施設で221人、主な渡航先は豪州、米国、中国など。心臓でも触れたが中国での移植は、日本移植学会が倫理指針で禁止する臓器売買にあたるとの指摘や、死刑囚からの提供も問題化している。それに感染症対策や術後のケアや治療のデータも不十分だという。
【腎臓】154施設で198人、渡航先で最も多いのは中国で、フィリピン、米国と続いている。どの臓器もそうだが、インターネットで情報を入手し、個人で渡航する例も多いという。「不正確な情報を頼りに海外を目ざすケースも出ている。費用は米国が約1800万円、中国は約600万円。
しかし、国際的な非難を受けた中国は先月、不適正な臓器移植を禁じる管理規定を発表した。日本では法施行後8年を経過した現在も、国内移植は増えているとは言いがたい実態がある。また、二つの改正案を国会に再提出している。脳死を一律に人の死とし、本人が拒否しない限り家族の同意で提供可能となる案と、一律に人の死とせず、上に書いたように、提供可能年令を15歳から12歳に引き下げる案だ。いずれも提供者増を目指しているが、審議入りの見通しは立っていない。
97年に施行され臓器移植法は、付則で施行後3年をめどに見直すとされた。しかし、すでに8年半が経過している。脳死からの臓器提供は44件に留とどまっている。厚生労働省臓器移植対策室は「死生観なども絡む法律の性質上、政府提案は難しい」と見直しが遅れた背景を話している。
患者や関係団体からは「やっと提出された」改正案だが、議員の間では、脳死を人の死とすることへの反対意見も根強い。改正の行方は不透明のままだ。
海外で移植手術を受けた人が言う「まだ体温の残る他人の臓器をいただくことになるという現実と向き合った上で、まだ生きたいと思った」「渡航するだけでも命がけ。言葉の壁もあり、周りで何が起きているか分からず、不安だった。できれば国内で受けたかった」と言う。
国内だろうと海外だろうと、何千万円の高額の大金を用意できる人は、何処でも好きなところでやればいい。例えば我が身に置き換えて考えた場合、とても整えられる金額ではない。そんな人を手術が受けられる人はどう見るのだろう。借金してでも受けられればいいが、その借金は子に、孫に、引き継ぐ可能性の方が高い。議員に限らない、まだ暖かみの残る肉親を、切り刻まれることに耐えられる日本人はそう多くはいないだろう。私のような魂の存在を信じない人間でも、一昨年亡くなった温もりの残る弟にメスを入れようとした人間がいたならば、逆にその人間を刺し殺しもしたであろう。
‘どうぞ役に立てて下さい’と、死後の臓器を提供する人も日本人の中にもいるようだが、私は登録するつもりはない。死後の世界や天国を信じてもいないが、もしも、先で待つ母や父がいる世界があるとするならば、目を無くして母を捜し出せないこことでは困るし、母が生んでくれた完全な姿を見て欲しい。「ああ、◯◯ちゃん、お久しぶり、どこも怪我はないようだね」と言って欲しい。献血ぐらいは幾度も経験しているが、今になってはかすり傷もつけたくない。
身体髪膚これを父母に受く、あえて毀傷せざるは孝の始めなり (孝経)
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