団塊会社員と退職金
敗戦後の第一次ベビーブームで産声を上げた団塊世代の大量退職が社会問題として連日マスコミを賑わしている。2007年から2、3年間に起こる問題として300万人とも280万人とも目される数の凄さである。労働市場における労働力の減少、技能継承の問題、企業経営、貯蓄や消費、金融資本への影響、財政、税収の問題点などを抱える一方で、世界でも例を見ない80兆円、50兆円とも16兆円(随分幅があるが)とも目論まれる退職金を当てにした、観光業界、建築業界、金融業界などが手薬煉ひいて待ち構えている。80兆円という金額はお隣の韓国の年間の国内総生産(GDP)に匹敵する桁外れの規模だ。
毎日新聞(4/9)から
団塊会社員に「退職金 だれのもの?」との質問を行って、その回答を纏めた記事が載った。男性熟年世代の熟年離婚の恐怖が囁かれ、その果ての自殺(大抵は男性)等の暗い面が取り上げられる中、追い討ちを掛けるような男性にとってまことに憐憫を催す内容の記事だ。
NPO法人日本ファイナンシャル・プランナーズが取ったアンケートの集計になっている。昨年11,12月に首都圏、近畿圏、中京圏など都市圏を中心に56〜59の会社員470人(男性387人、女性83人)からの調査回答である。この総員数470人が300万とも280万人ともいわれる会社員の意見として類推可能と見て良いのか分からないが(0・016〜0・017%)「受け取る退職金は誰のものか」尋ねたところ、
男性の7割が 「自分と妻のもの」
女性の5割以上が 「自分のもの」
と考えていることがわかった。
男性が「自分のもの」と回答したのは11・6%
女性が「自分と夫のもの」と答えのは24・1%、「自分のもの」が55・4%
で、退職金に対する考え方の違いが浮き彫りになった。
退職金の使い道について、全体の70・2%が「生活費」。
定年後の生活資金(複数回答可)は 公的年金 98・2%
貯蓄 67・4%
退職金 67・0%
となっている。また「定年後一緒に暮らす相手」についての質問では
男性が「妻」と答えたのが91・2%
女性は「夫」と答えたのは61・4%
「特に暮らしたい人はいない」男 3・4%
女 13・3%
となっており、妻の頭の中には退職後の離婚がちらほら見え隠れする。職場を離れた後、妻との定年後の生活を望む男性に対し、退職金は自分のものと考える女性、4割の、夫とは暮らしたくない女性の中から、あわよくばプラス慰謝料を貰って離婚を望む女性が出るのだろうか。現実問題熟年離婚はすでに社会問題として取り沙汰されているが、お互いに別れては見たけれど、やはり伴侶のいなくなった生活には寂しさが付きまとう。家庭のために、子どものために頑張って家庭を作り上げて来たが、世の中の趨勢に押されて自由への憧れを獲得してみたけれど、一人になった空虚さに耐えられなくなって、現在、そのような熟年男女が女を求め、男を求めて再び壊した家庭を取り戻そうとしている。熟年結婚と呼ばれる爺さん婆さんたちの相手捜しだ。
団塊の世代と呼ばれるベビーブームで生まれた世代、戦後日本の興隆の礎を築いた世代だ。我が身を削って会社人間に成り切り、家庭を顧みず、寝食を忘れて働いて来た。その結果が妻からの離婚話だ。自殺する人間が出ても不思議はない。この現実を100パーセント男が悪い、と言い切る学者がいる。女が家庭を守り、子育てをし、夫の働きやすい家庭環境を支え、自由な時間も持てない妻が守ったと。男の側から云えば、骨身を削って仕事をし、家庭を築き、妻を守り、子どもを守ることが離婚届を突き付けられるような空しいことだったのだろうか。
団塊世代に欠けていたのは次代を担う子どもの教育に疎かったことだ。勿論わが子のことになるが。現在世間の問題児になっているニートを始め、切れる子、暴力を振るう子、人を殺すことに罪悪感を失った子、優しい心根のない子、他人の痛みの解らない子、ルールの守れない子、自分勝手な子、責任感の無い子、社会とのかかわりの出来ない子、我侭勝手な子たちを拵えた親の親たちが団塊の世代の人間だ。会社に忠実で仕事ができれば出来るほど家庭を顧みず、わが子の躾をして来なかったツケが世代を越えた現在の世相を生んだ最大の原因になっている。その結果は未熟な民主主義を振りかざして平等・公平も理解出来ないで労働争議を起こし、責任を無視した人間性や自由を声高に叫ぶことが多くなって行った。団塊の世代の子が結婚する年齢に近づく頃に不謹慎な言葉がもてはやされ、流行っていた。「家付き カー付き ばばあ抜き」は家庭崩壊の始まりとなった。働き始めた女性は子どもを他人に預け、昔なら家族が見守ることが可能だった子育てが、他人の手に委ねることが当たり前のことになって行った。親の躾が行き届かない子が増え始めた。このことが後に社会の崩壊に繋がることに警鐘を鳴らす学者も知識人もいなかった。今でもここまで遡った問題提起をする人もいない。しかし、この子たちが育って先に列記したような社会問題となっている子の親になっているのは事実だ。
団塊の世代が退職後何かをしようとするのならば、し忘れた子への躾、孫の教育をし直すことだ。ここまで遡らなければまともな日本には立ち直れない。恐らくは団塊の世代が生を終える時がきても、まだまともな日本にはなっていないだろうが、やらねばならない団塊世代の親としての責任だとおもう。
| 固定リンク
この記事へのコメントは終了しました。
コメント