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2006年3月22日 (水)

スリング(ベビー・スリング)

“スリング”のタイトルで直ぐに理解でき、具体的なものの形がイメージできるお母さんがどれだけいるだろうか。仮名文字(アメリカ生まれだから仕方ない 、sling 吊革、吊紐)だから尚更だが、日本語で云えば“赤ちゃん抱っこ紐”(紐といっても縄のようじゃない)だ。広げればハンモック状態の幅まで広がる布製で、赤ちゃんをくるんで母親が肩に掛けて抱きかかえることのできる育児用の用具だ。

日本には昔から赤ちゃんを背負うことのできる『ねんねこ』(ねんねこ半纏はその上に羽織る打掛け)という便利な育児用の必需品があった。多くの女性は母になれば赤ん坊がやっと首が座るようになるとねんねこで赤ちゃんを背中に背負って面倒を見た。後に改良されて首がぐらつくのを防ぐ首当てもついた。両手が空くから日常の主婦の殆どの家事仕事をすることは可能であった。赤ん坊は母の背中で安心して眠ることも、泣くこともできた。しかし、近代医学はこの育児の仕方に難癖をつけた。赤ちゃんの股関節脱臼が起こることを指摘した。母親の背中を跨ぐように縛られる姿勢に無理があると。その頃アメリカでも赤ん坊を背中に背負う習慣はあったが、こちらはその仕事は概ね男性の仕事であったようで、固い椅子状に作られた台を背中に背負い、そこに赤ん坊を背中合わせに座らせて縛り付け、父親が進む方向の反対方向の後ろに進む動きになっていた。以前は街なかで足をぶらぶらさせた赤ちゃんを背中に歩く男性をよく見かけたことがあった。

恐らくは“スリング”はその開発の流れの上で来たものだと想像できる。母親や父親の背中から降りた赤ちゃんは次は母(父)の懐に抱かれる格好になった。簡単なものは幾つか目にしたことがある。昔ながらの背中に背負ったのと殆ど変わらない形を多少抱き易くしただけのものが殆どで、現在も使用されている。スリングは従来のデザインから寒い季節でも赤ちゃんの足元までカバーできるようにすっぽりと布にくるんで保護することができるように工夫されている。アメリカから日本に渡ってきたのはそれほど遠くなく、2、3年前のことらしい。

20日の民放で静岡在住のある女性起業家を取り上げた。ある主婦が、結婚を機に職場を離れ、専業主婦の生活を始めた。赤ちゃんの出産、育児が手薬煉ひいて待っていた。最近毎日新聞でも続けさまに投稿された、時間がない、自分の時間が欲しい、赤ん坊が煩わしいなどと同情を欲しがる主婦がいたが、同じような悩みを抱えていたこの主婦はその解決を求めて解決策を模索した。子育て雑誌は次々に読み漁った。助産師や子育ての経験者を訪ね、意見を聞き廻った。そんな中である人の一言で一気に苦しさからの解放を味わうことができた。その人は『赤ん坊の顔を見てればいいんだよ』って云ってくれた。どうすればいいかを考えていたある日、アメリカの雑誌に載っていた“スリング”に出会った。丁度二人目の子を身籠っていた。上の子の要求をどうやって面倒みればいいのか、案じていた時でタイミングが良かった。

使ってみていろいろと改善点が見えてきた。取り寄せたものは生地が厚くて通気性が悪かった。赤ちゃんの肌に良くないものを避け、肌に優しいコットンに執着した。袋状にしてその中に赤ちゃんが入ることで窮屈になるのを防ぐための工夫も対策を取った。サンプルを20回以上作って試して現在のものに落ち着いた。昔は機能性だけを求めたが、今は母親が身に纏うことを前提に色柄も豊富になり、おしゃれを求める現代の主婦感覚にも合う品揃いであるという。

“スリング”の最大の利点は赤ちゃんと母親が顔を見、目と目が合うことだ。そしてスリングの中にいるままで授乳することも出来、赤ちゃんはお母さんの心臓の鼓動を聞いて眠ることができることだ。一日中でもだっこすることが可能だ。これなら二人目が産めるかも、と続いて出産した体験者もいた。私は一緒の時には子どもがまだ腕に抱ける幼い頃は外出時には殆ど腕に抱いて歩いた。抱っこ紐の昔風の日本式のものはあったが男が纏うにはやはり照れくさかったし、自分の腕に抱いて理解出来なくても語りかけたかった。妻はもっぱらねんねこ愛好家だった。

子育てに忙殺されているお母さんたち、このスリングは良いものだと思うよ(誤解のないように、私は商品の宣伝マンじゃない)。他人や施設に預けることばかりを考えないで、どうしたら手元に置いて育てられるかを考えて欲しい。
この起業家の興した会社は『北極しろくま堂』と云い、2号店を昨年11月3日、東京自由ヶ丘に出した。単なる商品を売るだけではなく、子育てに悩む若いお母さんたちが気軽に立ち寄ることができて、悩みやその他の育児相談もいろいろ話し合えるコミュニティーとしての役割を持たせている。
問題になっている低学年の落ち着かない子どもたち、椅子に座って先生の話しも聴けない子、お喋りを止めない子、すぐにキレる子たち、情緒不安定はその殆どは母親の愛情不足から来る。愛情とは可愛がることだけじゃない。厳しく叱る、言い聞かせる、人の話を聞く、自分の意見が言えること、他人には他人の考えがあること、女の子には優しくすること、特に他人と自分との関係は兄妹の多い家庭では自我は自然に身につくことだが、一人っ子はただ可愛がられて不自由を知らない。自立心が乏しい、親には必要であれば時には叩くことだって愛情であることなのに猫のように可愛がるだけ、所謂甘えさせるだけの猫可愛がりというものだ。このように育てられた子が小学校に上がってきて学級崩壊の引き金になる。親が子育ての責任を果たしていないから。

過去の遺物、或いは過去の神話のように云われる『躾けは3歳までに』は厳然として今も生きている古人の知恵であることを知るべきだ。

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