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2006年1月23日 (月)

「出産無料化」

少子化対策として猪口邦子・少子化担当相が出産費用全額を国が負担する「出産無料化」制度導入を考えていると、発言した。今まで置かれなかった担当職を任されて、「少子化対策は世直し運動です」と意気込むのはいいが、本当に出産費用を只にしたら“ああ、有り難い、有り難い”と女性の出産率が上がると思し召していらっしゃるのだろうか。

話は飛ぶが矢祭町(福島県東白川郡矢祭町)は大流行りの町村合併にはっきりと拒否を決議し、「市町村合併をしない矢祭町宣言」をした。国の目的を、小規模自治体をなくし、交付金や補助金を削減し、国の財政再建に役立てようとする意図を見たからだ。矢祭町は自らの進路の決定は自己責任のもと意志決定する能力を十分に持っているからだとしている。従って地方自治の本旨を踏まえ町議会は国が押し付ける市町村合併には賛意できず、いかなる市町村とも合併しないことを宣言する、とした。

具体的な理由を6項目上げている
 ① 矢祭町は合併を前提とした町づくりはしてきていない
 ② 規模の拡大は望まず、大領土主義は町民の幸福にはつながらない
 ③ 地理的に辺境にある矢祭町は、合併により地域間格差のマイナスをもろに受け、更に過疎化が進む
 ④ 40年前の「昭和の大合併」時、血の雨が降る諍いがあった傷は今も癒えていない
 ⑤ 町独自の歴史・文化・伝統を守る
この後の6項目目に注目したいが、
 ⑥ 矢祭町は、常に爪に火をともす思いで行財政の効率化に努力してきたが、更に自主財源確保は勿論のこと、地方交付税についても、憲法で保障された地方自治の発展のための財政保障制度であり、その堅持に努める。以上宣言する。これは平成13年10月31日のことだ。

矢祭町の根本良一町長は使い切れない金は貰っても不要、と自らの給料は大幅に減らすと同時に、町の財源を見直し全面的な節約に取組んだ。清掃業者を止め自分達職員で建物からトイレまで掃き清め、住民の便利性を考えて日曜祭日から正月を含む年間無休の町役場にした。それでも足りないところは職員の出勤時、退社時に家庭巡回でフォローする。郵便業務まで代行する。この町も少子化に取組み、2005年4月1日より施行の条例で祝金・健全育成奨励金として3子誕生には100万円、4子には150万円、5子には200万円が家庭に贈られる。20年を勤め上げた町長が引退を発表するや、町長室は住民に占拠され、辞めないで欲しいと涙を流しての訴えで、町長の出る道も開けない。町長が留任を決意するまで役場は住民に占拠された状態であった。

覚えている人もあるだろう、2002年の住基ネット(住民基本台帳ネットワーク・システム)で日本中が揺れた時、全国に魁けて不参加を表明した町だ。住基ネットの実施は個人情報保護法案とセットで実施するもので、法案成立の見込みがない中では住民の個人情報が守れないとしての不参加だった。町長の確固とした信念は多くの住民に慕われ、町民の一人一人の胸に刻み込まれている。

国も出産無料化だけで少子化に歯止めが懸かるなどとは思ってもいないだろうが、世直し運動にまで高めたいのなら、他人に預ける保育所や育児施設ではなく、母親が身近で乳飲み子が育てられる環境づくりを検討するべきだろう。ベビー用品メーカーのコンビが昨年8月(1〜14日)に妊婦が会員になっているインターネットサイトで行ったアンケート(853人)によると、妻の出産後に男性が育児休暇を取る予定なのはわずかに3%、取るつもりがないと答えたのが44%、取った前例がないと答えたのが17%。逆に妊娠中の女性がいる会社でも過去に休暇を取った人がいる、が40%に過ぎず、取った前例がないは19%にのぼっている。このように現実には企業は未だに男社会、3%が2年や3年で10%20%と上昇することなど考えられない。掛け声に終わらないためにも少子化を止める必要があるのなら(私には所謂日本の適性人口が解らない)もっと可能性のある施策を考える必要があるだろう。

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