« 誕生日 | トップページ | 火垂るの墓 »

2005年11月 1日 (火)

サプライズ

サプライズ、サプライズと毎日のように目に耳に飛び込んで来た結果、小泉小屋の脇役が決まった。候補の四人をごちゃ混ぜにして、浅垣康三なる化け物を拵えて見せるマスコミ、これで才覚があるとでも思ったのか。単に面白くすれば良いと云うものではないだろう。不細工なマドンナが何人も顔を列ねて騒いだが、組閣人事もイエス、イエスの顔ぶれで埋まった。

気分を変えて別の話題に移ろう、今日(11/1)昼間のテレビで久し振りに良い番組にお目に掛かった。ある自動車部品を取り扱う国内でも手広く活躍している企業の話だ。今では海外にも支点を持つ規模にまで発展させたユニークな社長の話だ。

サラリーマンに見切りをつけ、40年前28歳で会社をやめて自分で小さいながら会社を持った。暫くは泣かず飛ばずで先が案じられた。そこで社長の考え付いたのが常人では考え付かないトイレの掃除だった。早朝六時頃には会社に出かけ、社員が出社する前に磨き上げていた。時として早朝出勤の社員が出て来て鉢合わせすることもあったが、お互いに朝の挨拶を交わすこともあったが、社員が手伝う動きはなかったらしい。

サプライズはこの社長の掃除に携わる姿勢だ。普通トイレの掃除にはゴム手袋を填めるがこの人は素手だ。テレビで見せたのは総べて男子トイレだったが、小も大も素手で行う。それも汚れの溜る内部にまで身を屈めての叮嚀さだ。わたしも自宅のトイレは素手で同じようにしているが、前にもブログに書いた軍隊上がりの先輩が、敗戦直後に中学に戻り、再編入の折り軍隊式の便所掃除を教えてくれたからだ。縄をタワシ状に丸めて準備し、外に持ち出したオマルに水を掛け、拵えたタワシでごしごしとやるものだった。お陰で自宅のトイレは便器は勿論だが、今でも素手でやる掃除は床も壁も含めて誰が来ても心配ない。

横道に逸れたが、遂にある日社員で参加するものが出た。トイレが匂うのは便器そのものは勿論だが、床に、壁に染み付いた汚れが発散させるものだ。それを綺麗にすることが大事なのだ、と話して聞かせる。倣う社員は社長の言に従ううちに参加者はもう一人増える。社員が汚さないように気をつけるようになる。自分の所のトイレで済まなくなった社長は取り引きがある会社へ出向いて黙ってトイレの掃除を始めた。契約が取れなくてもせっせとトイレを掃除した。そのうちに徐々にその無償の行為が認められるようになっていた。少しづつ取引先が増えて行った。人の口を介して社長のことは広まって行った。増えた社員も一斉に自社のみならず、お得意先のトイレの掃除を率先して行うようになっていた。

話を聞き付けた広島県警の暴走族対策で頭を悩ませていた刑事が社長に協力を頼んだ。100人からなる一団を束ねていた頭から二人を連れてトイレ掃除をやらせることになった。“始め「ウザイ」と思ったが警察に連れられて来てその目の前でやらざるを得なかった。”トイレ掃除が、綺麗になった結果を見て彼等の心を動かして行った。やっぱり汚されるのはいやだ、綺麗に使って欲しい、が継続することを身に着けさせて行った。勿論彼等も便器を片手は素手でがっしりと掴み、片手で隅からすみまで舐めるように掃除する。100人からの暴れん棒を束ねていた男だ、話す顔は輝いていた。私の偏見もぐらつく一瞬だった。

また雑草の生えるままになっていた校内暴力で有名だった某高校に七年ぶりに学園祭が蘇った。やはりこの社長の行為を聞き付けた校長が学校に招き、生徒にトイレの掃除の手ほどきをしたのが更正の切っ掛けになったのだそうだ。やはり彼等も彼女らも素手でしっかっりと便器に取り付く。思わぬ波及効果も現れ、破られ放しだった天井、壁、廊下のあちこち、ガラスなどツギだらけだが清潔になっている。誰彼なく率先してトイレ掃除に取り組むようになったと、女性校長の社長への表敬時の嬉しそうな顔。

社長は各地を廻って公演を頼まれるようになっているが、街の人やボランティアの協力で東京は新宿歌舞伎町の美化運動にも顔を出す。どぶの中に顔を埋め、流れて来る汚物まじりの下水の掃除までをやっている。何の名声も名誉も求めていないこの社長の哲学、隗より始めよ はやがてこの番組のタイトルになっていたように“トイレ掃除でニッポンが変わる”の希望を持ちたい。こちらが本当のサプライズになる。

|

« 誕生日 | トップページ | 火垂るの墓 »

コメント

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: サプライズ:

« 誕生日 | トップページ | 火垂るの墓 »