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2005年10月 2日 (日)

「・・中絶すれば犯罪が減る」

十月一日毎日新聞夕刊に衝撃的な記事が載った。
「黒人の胎児 中絶すれば犯罪が減る」。アメリカ共和党保守派の有力者、ウィリアム・ベネット元教育長官の発言である。
さすが人種差別大国の大馬鹿アメリカ白人だ。私もいい加減偏見でものを見る人間だが、彼の発言は自分の国が黒人の奴隷労働力によって成立して来た歴史を全く理解していない。よくもこんな馬鹿が教育長官に就いていたものだ。現在のアメリカが国家として成り立つ以前、1600年初頭の頃、イギリスの植民地であった当時すでに黒人はこの地に住んでおり、現在云うアフロ・アメリカンの祖先に当る人たちだ。

当時のアメリカにはこれら黒人と、もともと住んでいた先住民(古くはインディアンと呼んでいた)がいたが、新大陸を求めて入って来た白人たちは、両者を奴隷化することを狙っていた。所謂西部開拓の歴史に伴って今は亡き西部劇映画のヒーロー、ジョン・ウエインを筆頭にインディアンへの迫害は凄まじく、殺人を繰り返して当時の歴史を正当化して観客に提供し続けた。裕福な白人たちは徹底的に抵抗する先住民の奴隷化を諦め、入植者でも比較的貧しいクラスの白人を年季契約の奉行人として利用することと同時に、アフリカから黒人を輸入することに対策を変更する。奴隷制度の始まりである。

1700年の後半には広範囲でタバコの栽培が始まり、必然的に労働力が求められるようになって行った。当時のイギリスには奴隷売買を認める法律が存在していた。根底には黒人は白人と同じ人間だという考えはなく、19世紀の始め(1807年)になるまで奴隷貿易は続いた。

1776年アメリカはイギリスから独立(アメリカ合衆国)する。当時黒人が白人と同じだという認識を持つ白人は北部に住む人たちの少数意見であった。奴隷制度の廃止運動(1831年雑誌『解放者』を発行したギャリソンに始まる)を南北戦争(1861〜65年)が解放に導いたことになるが、この約90年間アメリカの憲法は奴隷制度を認めていたのだ。因にこの時解放された黒人の数は400万人といわれる。

丁度この頃イギリスで産業革命が興り、1774年イギリスは産業革命の技術的独占をはかり『機械輸出禁止令』を作って他国への機械の輸出や技術者の渡航を禁止していた。(1825年一部解除、1843年廃止)
機械による綿布の大量生産が可能になり、イギリスでは安価な原料が必要となった。アメリカ南部ではそれまでのタバコから綿花への栽培が広がり、それに伴った大量の無賃労働力の黒人奴隷が必要だった。広範囲な土地でのタバコ、綿花、麻、砂糖黍の農業大国の基盤は彼ら賃金を支払う必要のない黒人奴隷の労働力が支えていたのだ。奴隷解放の問題は人権問題として多く語られるが、経済的な問題でもあった。

奴隷解放後はアメリカの黒人差別問題は解決されたか?実際にはその後のアメリカの歴史は人種隔離政策を生んだり、黒人の側からは市民権確立運動や、1960年、黒人差別撤廃運動が行われ、1964年の公民権法の制定の成功を収めている。

しかし、今に残るKKK(クー・クラックス・クラン)は南北戦争後、南部で結成された人種差別を基調とする秘密犯罪者組織で、その当時には主に南部で数千人の黒人を殺害していた。現在でも存在しており政治的にはアメリカ保守の隠れた伝統とも云われている。

このような自国の歴史認識もないバカ政治家の発言「犯罪を減らしたいのなら、この国の黒人の胎児すべてを中絶すればいい。非道徳だが、犯罪率は低下するだろう」はヒットラーのゲルマン至上主義となんら変わらない白人の思い上がり(黒人蔑視)であって、政治の暗部を隠す戯言に過ぎない。

政治を離れても、現在アメリカ国歌が繰り返し奏されるオリンピック、水泳以外でアメリカを探せばその殆どが黒人による栄誉を讃えるものだ。手に余る犯罪(ドラッグ大国、銃社会など多様に亘る)に悩まされているとは言え、他国の石油狙いに国費を費やし、世情が危ういからとて黒人女性の腹の中まで犯そうとは蛇蝎に等しい。白人は皆善人とは到底言えないだろう、

【附】中絶については自ブログ内「中絶胎児は一般ゴミか」(8/9)に詳しい。トラックバック、コメントも併せて目を通して欲しい。

参照「中絶胎児は一般ゴミか」05/08/09

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