« ダイアナ元妃と恋人の像 | トップページ | 高松塚古墳・保存問題 »

2005年8月30日 (火)

ドラマ『広島・昭和20年8月6日』を見た

8/29日、タイトルのドラマを見た。つまらない恋愛ドラマに終わった。
堅苦しい反戦映画を期待した訳ではないが、余りにものんびりしたテンポ、生活感のないドラマ作り、三人の女優の時代考証のできていない人物像、と不満だらけだ。
昭和20年代、女性で登場人物のような化粧の女は何処にもいなかった。特に化粧は60年後の現在を映して全く不自然だ。当時ドラマの女性たちのように眉を剃り、釣り上げた化粧など誰一人してはいない。昔、時代劇で(勿論着物の下は腰巻きの時代)女優の後ろ姿にパンティの痕が映り、激怒した監督の話を聞いたことがあるが、そこまですることもないとは言え、60年後の平成の昆虫の触覚を写したような眉化粧では時代錯誤を起こしてしまう。

もう一つ決定的なミスがある。三女が軍事教官の虐めにあっている朝鮮人学友を助け、手を繋いで広島の町を逃げ回るエピソードがあるが、途中サイドカーに乗って追い掛ける軍事教官が大声で叫ぶシーン、『逃げれんぞ』。
昭和20年当時、こんなデタラメな日本語を使う日本人は一人もいない。必ず正しい日本語、『逃げられんぞ』と云った。化粧と云い時代考証と云い、CGを使うのもいいが、綺麗だけのCGではすべてが嘘くさくなって一層生活感が薄れる。ちっとも汚れていない建物、綺麗な石の橋では生活の匂いが全くなく、ドラマが益々作り物じみて生きて来ない。途中頻繁に挟まれるコマーシャルにドラマほどの綺麗さが見られないせいで、こちらの方に生活感が強く見られた。

演技ではひ弱な末弟が光った。黙って三人の姉を観察し、少年兵を志願して軍隊に入る前にそれぞれ一人、一人の姉について言い残す辺り、自分自身が軍事教練で上手く行かず、教官からしごかれた後、独り産業奨励館(現原爆ドーム)の階段手摺りを滑り降りるシーン、拾ってきた子犬に死ぬことの恐怖を語りかけるシーンなどを含め、女優三人を完全に食っていた。姉の口から15歳の弟の命を奪うことになるかも知れない戦争について喋らせるが、弟の15歳という年齢、現在の数え方では13歳と数カ月乃至は14歳、脚本家はこのことを知った上での台詞なのだろうか?疑問が残る。
三人の女優が浮いて見えたのはその弟が入営の日、駅での別れのシーン、婦人会の大勢の見送りの中、三人の女たちは手も振らず、旗も振らず、三人三様の勝手な話を始め、二女に至ってはあの時代あの群集(横に並んだ三人の姉妹の後ろで大人しく並んだだけ)の前で反戦まがいの演説を打つ、あの時代、とても考えられない話。長女はそれを止(や)めさせようとするが事件にはならないで終わる。

長女に思いを寄せる男性の戦地からの手紙、『戦場は地獄のようです』当時軍事郵便でこんな表現が可能であった話など聞いたことはない。軍当局の厳しい検閲があって抹消され、このような泣き言が書かれた封書が内地に届くことはなかったと記憶している。

プロローグで修学旅行らしき学生の前で話をしていた老人はその末弟の60年後の姿。チャップリンがヒットラーをモデルに『独裁者』を作ったのは今から65年前。最後のシーンで平和を訴えた名場面があったが、末弟役西田敏之がチャップリンよろしく学生たちの前で原爆を呪うが何かよそよそしい。

TBSテレビ放送50周年を記念して作ったというが、現在のように人を好きになることも難しい時代のことを、三姉妹の恋愛もので纏めてしまって感動のないつまらない作品になってしまった。最後に流れる歌、“涙そうそう”は余計なもの。

附(8/30):1974年 第一回広島平和音楽祭で 美空ひばり が歌った。

《一本の鉛筆》 松山 善三作詞 左藤 勝作曲

  あなたに 聞いてもらいたい
  あなたに 読んでもらいたい
  あなたに 歌ってもらいたい
  あなたに 信じてもらいたい

  一本の鉛筆が あれば
  私はあなたへの 愛を書く
  一本の鉛筆が あれば
  戦争はいやだと 私は書く

  あなたに 愛をおくりたい
  あなたに 夢をおくりたい
  あなたに 春をおくりたい
  あなたに 世界をおくりたい

  一枚のザラ紙が あれば
  私は子供が 欲しいと書く
  一枚のザラ紙が あれば
  あなたをかえしてと 私は書く

  一本の鉛筆が あれば
  八月六日の 朝と書く
  一本の鉛筆が あれば
  人間のいのちと 私は書く

数千とある歌の中でも私の最も大事に聞く歌である。2時間30分のつまらないドラマよりも、たった4分足らずの歌詞の中に溢れるほどの人間愛を感じる。

参照「1945(昭和20)年 8月」05/08/16

|

« ダイアナ元妃と恋人の像 | トップページ | 高松塚古墳・保存問題 »

コメント

こんにちわ。 X子です。

ドラマ「広島」をご覧になったのですね。
時代考証の違和感や、当時の人達の思いがあまり反映されてなかったようですね。
当時の日本は軍国主義で、思想も弾圧されていたから、心でNOと思っていても、YESとしか答えられない状況だったのでしょうね。戦争反対なんて言ったらそれこそ憲兵につれていかれ死刑になった方もいるのでしょうね。

わたくしはこのドラマは見ませんでした。
最近のドラマはとかく、"感動”させれば何でもありの風潮があって、戦争を題材にしたものまで恋愛ドラマにしてしまうのが好きになれないのです。
それより以前に、NHKスペシャルのドキュメントを見てしまっていたので、その後でドラマを見てもなぁという気持ちでした。
戦争を風化させえてはいけないと口で言うのは簡単だけど、実際どうやって後世に伝えていくか?それには、わたくしのようなおバカな人間にダイレクトで伝えられるドラマや映画、本が最適なんですが、伝え方が間違っていたら話しにならないでしょうね。。。(;´д`)
戦争を知らない人間が作ったドラマは、日本を知らない外国人が、日本を題材にして作った滑稽な映画みたいになっていきそうで心配だなぁ。

紹介されていた、美空ひばりさんの歌は感銘をうけました。平和や幸福や愛についての断固した思いが伝わる良い詩ですね。
詩というのは短いのに人の心を動かします。
8月6日に戦争について何か書こうと思っていたのですが、わたくしのくだらない駄文よりも一篇の詩の方が良いと思い、著者には申し訳ないのですが、サイトに転載してしまいました。
詩つながりということで、またまたトラックバックさせていただきますね。(´v`)

投稿: X子 | 2005年8月30日 (火) 17時04分

製作者=戦争を知らない世代が
感動させるを第一義に作るけらいがあります。
私も戦争を知りませんが
この作品を観て思ったことは
昭和20年8月でも盛大な結婚式あり
良い生地で仕立てたモンペあり
リッチやなあ。
父母曰く『あの時代犬は食料になってる』との事
当作品に限らず
『かっこいい特攻隊』を伝えるTVドラマ
多々めちゃくちゃです。
時代考証は幕末等はともあれ
せめて昭和以降は正確にしてほしいと思います。
私がその時代を観たわけではないのですが
体験者の言うこととの乖離激しいです。

投稿: x-lay | 2005年9月18日 (日) 00時25分

コメントありがとうございました。
現代史をしっかりと教えない現在の教育の中で育った人間の集団、このドラマの制作者たち、歴史認識に乏しく、戦争を知らずにこのような下らない作品を仕立て上げ、何故わざわざ昭和20年8月6日を取り上げたのか。

恐らく制作者の頭の中には当初から恋愛ドラマを作ることだけが関心事だったとしか思えない。時代は何時で、場所は何処であってもよかったのでしょう。たまたま周りが終戦(事実は敗戦なのだが何故かそう呼ぶ)行事が並んでいたからそれにあやかっただけのことなのでしょう。時代考証などどうでもいいことだったとしか思えません。

1950年代は反戦映画で満ち溢れていました。良い作品の真似事で終わったものも多く作られましたが、小粒でも静かに戦争を考えさせる印象に残る映画に1952年の『原爆の子』(モノクローム)がありました。原爆を体験して生き残った子供達が書いた‘綴り方’が元になった作品です。当時未だ若かった宇野重吉(古人)滝沢修(古人)当時から老婆役の北林谷栄、奈良岡朋子、など民芸の人たちが総出演しているものです。

何れにしても映画やドラマを作る人たちは時代をよく把握して欲しいものです。

投稿: 小言こうべい | 2005年9月18日 (日) 11時50分

はじめまして。
コメントありがとうございました。
どうも反戦もの、あるいは24時間チャリティドラマにしてもそうですが、大体、偽善と悲惨イメージばかりを全面に出しているものが多いように感じていました。
「原爆の子」今度観てみようと思います。
静かに考えさせる番組って本当に少ないですね。。

他のエントリも拝見しましたが、的確なご指摘と冷静な視点で書かれていて、考え方にとても惹かれるものがありました。
また、昭和1ケタ台のお生まれとの事で、さすが現実的に物事を把握されていて、また、最近のいろんな事象に関しても関心を持っておられて、ビックリしてしまいました。

また覗かせていただきます。
よろしくお願いいたしますo(_ _)oペコッ♪

投稿: プチセレブ | 2005年9月29日 (木) 23時07分

 はじめまして、私もひばりさんを尊敬するひとりです!
あの素晴らしい歌声や俳優としての才能には脱帽ですね、女王ひばりはこれからも人々を魅了し続けることでしょう~、私もブログでひばりさんについてふれました、よかったら遊びにいらして下さいね~、ではまた! 

投稿: ルーシー | 2006年5月30日 (火) 18時25分

分かりますよ。戦争ドラマかしょうもない恋愛ドラマか、良く分からないですよね。
私は恋愛ドラマ大嫌いです。戦争の惨禍を伝えられていないですよね。
麒麟とやらの田村某もうざかったし。
戦争を軽く考えてますね。

投稿: たんたん | 2009年3月12日 (木) 19時25分


初めまして。突然失礼します。
私は中学二年生の時にこのドラマを観ました。私は戦争を知りません。ただ、私はこのドラマを見てから日本の近現代史をもっと学ばなければならないと強く思いました。このドラマで描かれている当時の日本を私は知りませんし、このドラマに当時の日本とはかけ離れた描写があったことも当然知りませんでした。けれど、戦争を知らない世代に間違った知識を植え付ける作品、と言うよりも戦争を知らない世代が戦争を考えるきっかけをくれるドラマだったのではないかと、私は思っています。拙い乱文を失礼しました。

投稿: まくら | 2009年7月25日 (土) 17時34分

私は、本で読んでからこの作品は良い‼
と思って探して見たらこの動画があったので見て見ましたが、少し画像が乱れ途中で途切れたり…
作品自体は、良いのですが後は、画像の乱れと途中で途切れるという所を直してもらいたいです。

投稿: メロン | 2013年9月14日 (土) 08時05分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: ドラマ『広島・昭和20年8月6日』を見た:

» No.028 雪崩のとき [snook.]
雪崩のとき ------ 石垣りん 人は その時が来たのだ、という 雪崩のおこるのは 雪崩の季節がきたため と。 武装を捨てた頃の あの永世の誓いや心の平静 世 [続きを読む]

受信: 2005年8月30日 (火) 16時36分

» 左翼にはリアリティが無いですね。。 [斬りまくり★プチセレブ日記No.9(裏)]
蛆虫日記で知り、面白かったので勝手にリンクした「朝日歌壇鑑賞会」を見てたんだけど。別に大月さんの思想がどんなものか、私はよく知らないので、賛成でも反対でも何でもないけど。この鑑賞会の管理人である、事務局長ってやっぱり大月さんなのか?  大月隆寛氏=つく...... [続きを読む]

受信: 2005年9月28日 (水) 23時06分

« ダイアナ元妃と恋人の像 | トップページ | 高松塚古墳・保存問題 »