児童虐待 四
昭和一桁の責任についてもう少し触れてみよう。
敗戦(1945年8月)を切っ掛けにして復員或いは引き上げて来た人たちで急激な人口増加が起こり、失業者問題、食糧難など問題が山積。地下組織であった共産党の復権とともに労働者の目醒め、一気に噴出した民主化の流れなどあらゆるものが存在する混沌の世の中になったことは説明した。
一方1946(昭・21)年5月3日から極東国際軍事(通称・東京)裁判が開廷し、11カ国の判事(国際法学者はインドのパール博士ただ一人)A級戦犯28人(政府・軍部首脳、途中3名は死亡)による戦争責任が審理され、1948(昭・23)年11月12日全員に有罪の刑を宣告、翌月12月23日巣鴨プリズン(東京・池袋)に於いて七名の絞首刑が執行された。五名の少数意見の中の一人パール判事は、『勝てば官軍、負ければ賊軍』というならば、最早そこには正義も、法律も、真理もない、力による暴力の優劣だけが存在する社会があるだけ、と述べて無罪を主張。日本は裁判の結果を受諾することで国際的に戦争責任の問題を決着させる道を選んだ。GHQの徹底した言論統制下にあった当時、日本がこの裁判について語ることは不可能であった。現在第二次大戦の日本の立場を侵略と見たくない根拠の多くは、このパール判事の報告書に依っている。この頃米ソ冷戦が激化の兆しを見せ始め、第二次A級戦犯として100名にのぼる容疑者の起訴が予定されていたが有耶無耶のうちに終結を見たが、この中には後の第56・57代(昭和32・2・25〜35・7・19)総理大臣となった岸信介もいた。その前には情け深い日本人は禁固7年で巣鴨から出所していた重光葵(まもる)を鳩山内閣(昭・29)の外務大臣に、終身刑から出所した賀屋興宣を池田内閣(昭・38)の法務大臣に採用し、A級戦犯の法相が誕生した。
反面国内的には左翼思想を中心に戦前の教育の否定(国家思想、天皇制など価値観の否定)が活発化し、今に残る国歌斉唱、国旗掲揚を嫌う教育現場として続いている。敗戦後60年、無策に放置して来た国の施策は靖国問題(逆に現在右傾化にある)も含め、検討されなければならない時に来ている。
閑話休題
以上甚だしい駆け足で見て来たが、進歩的と称する学者、言論人、マスメディアはこぞって民主主義を賛美し、大きなうねりとなって各地でストライキ、デモ行進が発生したが、最大の波が1960(昭・35)年6月15日の安保闘争であった。昭和一桁世代の35歳〜26歳の頃である。この時東京大学文学部の学生、樺(かんば)美智子が警官隊かデモ隊か不明だが(デモ側は警官隊という)圧殺された。これを基点として日本は大きく右傾化する。潮のような民主化の高波は一気に沈静化し、先頭に立って国民を煽っていた新聞論調も一転して議会制民主主義を説いた。戦時中の大政翼賛の政策に乗って国民を欺いたあの調子で。これで日本に民主主義が根付くと思い、走り続けていた国民は方向を見失って空しい挫折を味わう。何もかもが空しく、どうにか見い出そうとしていた価値基準は音を立てて崩れた。
どうして子どもの教育ができるか、親自身が方向を見失って。この頃生まれていた子どもの世代が所謂第一次ベビーブームの団塊の世代なんだ。価値基準を失った親からは何も教えられず、良いも悪いも判断出来ない人間に育って行く。これが現在の若者たちの祖父母の世代に当る。この価値基準を失った親からは何も教えられず、良いも悪いも躾けられない人間が育って行く。そしてこれが現在価値基準を持たない父母となっている世代。自分の子どもが働きもせず、親の収入で食べていても注意一つできず、家に帰って来ないでも叱れず、横文字で云えば済むかのようなフリーター、だのニートだの、何てことはない、昔風に云えば浮浪人、ルンペンを養ってやるようなものだ。
随分遠回りして来たようだが、親子の断絶が生む病巣が、60年かけて作られて来た。殺人狂が主人公のような戦争映画(どう理由づけしようが正義の戦争なんてあり得ない)、ゲーム、漫画、ちょっとしたことで親も子も暴力に走る要因はそこら中に存在している。
“手前たちゃ、人間じゃねエ!俺が叩き斬ってやる!。”こう云って人を斬る人間は人間じゃないのか?今は亡き時代劇の俳優萬屋金之助が毎週、番組の終わりに口にする台詞。人間だからこそ悪をする、人を騙す、殺す。
黴の生えた性善説では説明出来ない時代になっている、現代に生きる人間の人間哲学の体系づくりを目指す哲学者は世界にいないのだろうか。 ・・・・ ひとまず終わる
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コメント
コメントありがとうございます!児童虐待という問題は多方面から取り組んでいかなければならない問題ですよね。僕は医学の視点からニュースに取り組んでいくブログ・メルマガを展開しています。今後ともよろしくお願いします☆
投稿: Issey | 2005年7月 9日 (土) 17時23分