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2005年5月24日 (火)

酒とタバコ その二

これから論じようとすることは、タバコに発癌物質が含まれていようといまいと取り上げたいことはそれではない。タバコは酒と同じ本人の趣味嗜好の問題であり、マナーさえ守ればそれで良い。結果がニコチン中毒になろうとどうなろうと本人の責任である。それが自由というものだから一欠片(ひとかけら)の同情もしない。かく云う私も喫煙者であったが、何となく吸わなくなってから十五年になる。最初の一本を咥えたのが二十一歳の時、いきなり肺まで深く吸い込んでむせ返ったが、一、二度の吸引で落ち着きそれ以来両切りのピースを習慣とした。

三ヶ月ほどの喫煙で何気なく中止、半年休んだ後再び今度は半年の喫煙、また一年休んで次は一年の喫煙、次は二年休んで一年の喫煙、で三十一歳の始めまで休む。三十一歳からは吸い続け、六十一歳まで連続して吸い続けた。一日に60本を吸い続けるほどの年もあった。(睡眠時間を除いての60本は捨てる1本を火種にしないと消化し切れないほどの頻度になった)それから又何となく休んだまま、十五年の間1本たりとも口に咥えたことはない。
長いものには捲かれることを嫌い、上司と争い辞職までした父の生き方(後に会社役員は父を迎えに来たが、悪くない自分が謝らねばならぬなら、戻る意志はない、と言い切った)を、子供心に見事と思い、加えて敗戦を境にした価値基準の喪失は、私の幼い心に頑固な性格を形作らせて行った。“へそ曲がり”と罵られれば、それだけじゃない、“けつ曲がり”、“つむじ曲がり”を付け加えさせた。

頑固者にとってタバコを休むことはいたく簡単なことだった。買い置きのタバコを耳から煙りが出るほどに吸い尽し、次の日からはぴたりと休んでいる。口寂しくもない、代わりにガムや菓子なども必要としないでいる。頑固者の特技なのだろう。敢えて禁煙と云わないのはいつ何時又吸う気になるかも知れないからだ。皮肉屋で口の悪いバーナード・ショウは云った。『禁煙など簡単なものだ、自分は何十回もやっているよ。』---続く。


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